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衝撃のラスト『縞模様のパジャマの少年』

2010年11月20日 14時54分40秒 | Weblog

        
 この映画には、衝撃を受けた。ドイツ・ナチスが行なったユダヤ人大量虐殺、いわゆるホロコーストから65年が過ぎているのに、この映画のラストシーンの衝撃は生々しい。どうして?と、叫び声を上げたくなるほどなのだ。それが、ナチスの大量虐殺を子供の視点から捉えた『縞模様のパジャマの少年』(2008年イギリス・アメリカ制作)である。純真な8歳の少年ブルーノから見た、このおぞましい残虐な事件。しかし、ブルーノは、何故、鉄格子の向こうにユダヤ人の少年シュムエルがいて、「38451」とナンバーを付られた縦じまのパジャマ(収容所の囚人服)をきているのかを理解していない。ましてや、自分の父親がこのユダヤ人強制収容所の所長であることも知らない。父は、ドイツの軍人で、お国のために立派なことをしているものとして、尊敬をしているのである。
 知らないということは、なんと残酷で罪なことだろう。好奇心に満ちた無邪気な8歳の少年にとって、ユダヤ人は未知の存在であり、ようやく見つけた友だちが置かれている絶望的な状況など知る由もない。けれど、大人の無知は無責任であり、取り返しのつかない過ちを招く。イノセントな子どもの視点でホロコーストの真実と戦争の狂気が引き起こす普遍的な悲劇を見事に描き出したのは、『ブラス!』『リトル・ヴォイス』のマーク・ハーマン監督。ジョン・ボインの同名ベストセラー小説を自ら脚色し、製作総指揮も務めている。エイサ・バターフィールドとジャック・スキャンロンの子役二人をはじめ、俳優陣が揃って素晴らしい。
 第二次大戦下のドイツ。ナチス将校の父の昇進に伴いベルリンを離れ、人里離れた大きな屋敷へ越してきた8歳のブルーノは、寝室の窓から遠くに見える“農場”で働く人々が昼間でも縞模様のパジャマを着ていることを不思議に思っていた。裏庭へ出ることさえ禁じられ、遊び相手もなく退屈しきっていたが、ある日こっそり抜け出すと“農場”にたどり着く。フェンスの向こうにはパジャマ姿の同い年の少年シュムエルがいた。何故、パジャマ姿のかも知らないブルーノは、ユダヤ人シュムエルと友情を育んでいく。シュムエル少年がお腹をすかしていることを知ると、家からサンドイッチなどを持ち出し、内緒でシュムエルに渡すのである。ある時、シュムエルが元気がない。なぜかとの理由を聞くと、父がいなくなったのだという。ブルーノは、シュムエル少年にひどいことをした罪滅ぼしに、探検家の気分も手伝って、鉄格子の中に入り、シュムエル少年の父を探索することを約束する。シュムエル少年は、鉄格子の中で目立たないようにと、自分と同じ縞模様のパジャマ上下を用意することを約束するのだった。その日は、ブルーノが別の住居に引っ越す真っ只中の日だった。ブルーノは、約束の縞模様のパジャマに着替えて、鉄格子の下にトンネルを掘って入り込み、シュムエルの父を一緒に探索するのだった。そんな中、大きな号令の声が鳴り響く。大勢のユダヤ人が行進を始め、ある場所に次々と入っていく。2人の少年は、この大集団の中に紛れ込んでしまい、一緒の場所に入れられてしまう。そう、ここはユダヤ人を大量殺害するための毒ガス部屋だったのである。この収容所では、定期的に大量のユダヤ人を毒ガス殺し、焼却することを任務にしていたのである。重い扉の向こうでは、大きな悲鳴があったが、やがて静まり返り、シーンがフェイドアウトしていくのである。
 この作品で、非常に気になったシーンがいくつもあった。
その一つが、ブルーノ少年が、遠くの農場と思っている設備の巨大な煙突から、定期的に黒煙が上がり、非常な悪臭が漂うことを、両親や召使い等に聞いても、全く答えてくれないこと。父親は、「古着を燃やしているんだ」と嘘まで言う始末なのだ。
 そして、夫人もこの黒煙の嫌なにおいについて、運転手のコトラー中尉に聞くと、「やつら(ユダヤ人)は、燃やしても嫌なにおいがしますね」と平然と言うシーン。全く人間としての扱いをしていない。犬や猫の位置づけなのである。しかし、このコトラー中尉の父親は、文学を教えていた大学教授で、このナチスのやり方に反目し、国を捨てスイスに移住してしまったのである。このことが、後に左遷にされる原因になってしまう。
そして、亭主の行なっている残虐な仕事を知った婦人は、2人の子供を連れて、親類の家に出て行くことにした。まさに、その引越しする荷造りの最中に、ブルーノ少年はいなくなったのである。鉄格子のそばに、ブルーノの脱いだ服があり、ブルーノ少年の身に起こったことを知るや、号泣して崩れる夫人であった。また、父親も、ユダヤ人と一緒に自分の子供が、毒ガス殺されたことを知り、呆然と立ち尽くすのである。
 ユダヤ人大量虐殺が行なわれている強制収容所。そんなことをお互いに知らず、友情を育んでいたブルーノ、シュムエルの2少年。毒殺されることも知らず、部屋でお互いに手を硬く握り合うシーンが、鮮烈であり、大きな衝撃を受けるシーンとなったのである。


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