グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

果形から作物の生育状態を知る。

2020-01-17 14:14:56 | Weblog
果形から作物の生育状態を知る。

終盤にはいった今季のハウス施設栽培。ハウスキュウリ農家さんか
ら生育状態判断についてのご質問いただきましたので、当ブログの
関連回を再掲載してみました。

 ↓

『キュウリの果形から、作物の生育状態を知る』

キュウリは曲がっているのがあたりまえ、いえ曲がっているほうが
良い
・・・とさえ、思われている消費者さんもおられます。
しかし、この考え方は、キュウリという植物の生育から見た場合
には疑問符がつく考え方だといえるでしょう。

キュウリの定植から収穫終わりまでの生育全体を見た場合に、キュ
ウリ果実の曲がりの発生が多くなるときは、キュウリの樹が疲れて
きたとき に多くなる
ことが統計上報告されています。

具体的には たとえば

 ● 葉が繁りすぎて、光が充分に葉にあたらないとき
 あるいは、
 ● 病気や虫などの影響で葉の機能が落ちたとき、
 ● 天候が悪いとき、
 ● 一度にたくさんの果実をならしすぎたあと、
 ● 肥料や水が不足して、樹にストレスがかかったとき

 
といった状況で果実の曲がりが多くなることが判明しています。

せっかく読んでいただけているのですから、土壌栄養学的に特化
して曲がり果が起きるときの土の状態を説明
しますと、

 ● 実の上部が細いもの肩こけ果は石灰欠乏 
 ● 尻が太いものは、下葉が枯れてきたとき
 ● 2本つながりや、実に葉の奇形果は、ホウ素欠乏 
 ● 果実が縦に割れる裂果は、根が弱っているとき、
 ● 食べて苦い苦味果は、 乾燥が影響 している

ということがわかっています。このようにキュウリ果実は

 なんらかのストレスが、作物にかかるときに曲がる

のです。

したがって対処法は・・・作物にかかっているストレスを取り
除いてやること。

その方法ですが、土壌栄養学的には 不足しているミネラル類
を補う
ことで対処します。また、全体的には最初に述べた作物
管理の適正化に努めることで、“曲がり”に対処していきます。

すっとまっすぐに育ったキュウリの樹から取れる、素直なキュ
ウリの果実は、 ミネラルのバランスとれているので、とても
おいしい
ですよ。       よろしかったら、ご参考に。
 


晴れ 良品を継続的に出荷できることが、農業経営におけるいち
  ばんの 経営安定策だとおもうんですよね。

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ミネラルにも派閥があって。

2020-01-16 15:00:02 | Weblog
ミネラルにも派閥があって。K

ひつづきミネラルのはなしです。

土壌検査をしてみると、圃場の土のなかに作物の成長に必要なはずの
ミネラルの量は問題なく充分にあるはずなのに、いざ作物を栽培して

みると

 それでも苦土やホウ素・石灰が効きにくい

といった生育をしがちな作物のケースも、よくあります。さらに効き
にくいといった程度ではなく

 苦土欠乏やホウ素欠乏・石灰欠乏がおこる

というケースが実際問題としてある。

土の中にミネラルはあるのに、なぜ効かないのだろう と思うのです
が、こういった現象の原因のひとつとして考えられるのが各ミネラル
のあいだの 拮抗作用 だといわれています。

拮抗作用とは・・・簡単にいうと「ミネラル同士の喧嘩」。

たとえばカリの場合ですが、カリが土の中に多く存在すると、作物へ
のマグネシウム/苦土の吸収を抑えるとされています。そのために土
のなかにマグネシウム/苦土がたくさんあったとしても、作物の生育
の過程でマグネシウム/苦土の欠乏症状がおこるばあいがあるという
わけですね。
また カリは[マグネシウム/苦土と同様に]作物へのカルシウムや
ホウ素の吸収を阻害しやすいことも知られています。

そんなミネラルのあいだの相互関係[要素の相互作用といわれていま
すよ
]を図示したものが こちら 。


 ののののの 要素の相互作用


直線は 拮抗作用。そして点線は、作物に吸収れるのを助けあうとい
う相助作用をあらわしています。
そうなんです、ミネラルはお互いに喧嘩するばかりではなく、協力し
あう場合もあるのですから、おもしろいものですよね[そんな相助効
果は、たとえばリンとマグネシウムの関係で知られています
]。

と、いうことで今回は、お互いのあいだに好き嫌いが存在するために
土の中にたくさんあったとしても、特定のミネラルが作物に吸収され
にくい
こともある[逆に土のなかに少ない場合でもなぜか良く効くこ
ともある
]という・・・

 人間とおなじように、ミネラルにも派閥がある

みたいな、そんな おはなしでした[カリや塩素が多くなってしまう
原因については ​こちら​]。



晴れ そして連想されませんでしたか、 旧約聖書のアダムのはなし を。
  そう「アダムは、神によってその息吹と土から創造された」という
  あの一節です。・・・ひとに派閥があるのは、土のミネラルの作用
  なのかも/笑。

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ミネラルは大切。

2020-01-14 16:48:34 | Weblog
ミネラルは大切。K

厳寒期をむかえたハウス栽培でめだってくるのが、微量要素の欠乏症
状・・・ということで、そんな要素欠乏がおこる原因をおさらいして
みることにしました。よろしかったら、ご参考に。

 ↓

『ミネラルは大切。』

こういった表現を 読まれたことはないですか。

野菜が健康に育つには、土も健康で
 なくてはならない。植物が健康に 育つためにはミネラルも必要だ


確かにそうだと思います。ミネラルは大切なのです。

それでは ミネラルとはなにものなのでしょう・・・・
じつは ミネラルとは 無機物である鉱物を指す言葉 なのです。

したがって ミネラルを補給したければカリ鉱石リン鉱石、あるいは
マグネシウムカルシウムなどを圃場に入れればよい。

そのいろいろの種類のなかから、自分の圃場につくろうとしている作
物の必要とする種類と必要とする量を[過度にいれすぎないように]
あたえていけばよいわけです。

実際に施用する場合は、カリ鉱石・りン鉱石・マグネシウムやカルシ
ウム、そのほかいろいろな種類のミネラルが配合され、しかも成分調
整されているものを、作物の生育状態を見たり・土壌分析をしたりし
たうえで、圃場に適量いれていくことになります。たとえば

  苦土欠が出る場合などは マグネシウムを増やす
  ホウ素欠乏が出る場合は ホウ素をふやす
  石灰欠乏が出やすい場合は カルシウムを増やす

といった対策をとっていくことになります。つづく。


晴れ 「状態をみていれるものをかえていくのが農業」の回は
   こちら

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温暖化で増えるといえば、意外な虫の害。

2020-01-09 12:06:39 | Weblog
温暖化で増えるといえば、意外な虫の害。
イチゴ栽培において28度前後の温度が高い時期に、株のクラウン部
に発病するのが、 ↓ イチゴの炭疽病[たんそびょう]です。

        

まずイチゴ葉の外縁が黄化・褐変し、そのあと外葉が枯死する株がみ
られ、最終的に上記の写真のような株そのものの褐変から枯死に至る
というふうに病状がすすみます。

とはいったものの長年にわたってイチゴ栽培を手がけておられる農家
さんたちにとっては、さして恐ろしい病気といったものではなく、
季節がすすんで次第に高温期が過ぎたり、病斑を確認する初期の段階
での適切な薬剤散布をおこなったり、かん水の量を少なくして加湿を
避けることなどによる適切な処置で防げる病気のはずなのですが・・・
本作にかぎっては 宮崎のイチゴ農家さんにとって勝手が違いました。

いつものように 適切な炭そ苗対策をおこなっても効果がないのです。
新芽がのびず、展開した葉の葉柄が赤味を帯びてきて、葉の縁が黄化
や褐変し、症状が重くなると、株や根までもがが枯死してしまう。

これは大変ということになり、県外のイチゴのにたような事例を調べ
てその原因がわかったのは、11月もおわるころになってのこと。。

じつはこの症状は虫の害。ハエの仲間であるチバクロバネキノコバエ
[チビクロバネキノコバエとも]の幼虫による食害だったのです。イチ
ゴに寄生するこのハエの幼虫は透明といってもよい体色をしており、
大きさも最終的な段階でも四ミリほど。成虫は透明ではなく頭が黒で
身体は褐色ではあるものの体長が約2ミリ前後しかないのですから、
これではなかなか見つけられなかったのも いまとなってはよくわ
かります。

ちなみにこのハエの生活史は ❝未熟な有機物に誘引された親が産卵、
卵から成虫になるまでの時間が25度Cの気温条件で2週間ほど❞と
いいますから、今作のような気温の高い気象条件であれば 順調に世
代交代しながらその生育数を増やし、結果的にイチゴの地下部や地際
部をも食害・加害していった ということなのでしょう。

さてそこで、このハエに対する防除方法です。

ハウスイチゴ栽培においては、交配にミツバチを使っているケースが
多いので、なるべく薬剤に頼らない方法をとるということになれば

 ● ハウスの開口部[入口や換気部分]に1ミリ目あいのネット展張
 ● 圃場の周辺にある雑草の処理や作物の残さの片づけ
 ● 圃場の周りにある場合には、たい肥舎などの消毒

などといった対策に加えて、なんといっても

 ● 未熟な有機物を圃場に大量に使わないこと

これが 大切なポイントとなります。


晴れ 炭疽病とおもって対策を実施して効果がなかったはず
  だなと、原因が分かってしまった現在ならおもえるの
  ですけれど・・・まさか原因が虫だったとは。。という
  ことで 農業はプロファイリング の回は ​こちら​。
 
 51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「本当は危ない有機野菜」​​​​





いつのまにやら害虫に。

2020-01-08 16:07:37 | Weblog
いつのまにやら害虫に。
過去分ですが、次回分参考として。よろしかったら。



『いつのまにやら害虫に。』

芽だったころのホウレンソウの葉が、縮れたり、こぶ状の小突起ができ
たり
といった症状になり、ひどいときには芯どまりになって成長しない
・・そんな経験はありませんか。

じつはこれ、新芽部に寄生する体長約0.6mm前後の小さな虫、ホウレン
ソウケナガコナダニ
の仕業であることが多いんですよ。 こちら 。

この虫がホウレンソウの芯の部分に寄生し食害することにより、商品価
値を低下させ、特に春作と秋作では収量低下の大きな原因となります。
またこの虫が土壌中にもっとたくさんいるときは発芽することさえまま
ならない場合もある
ということなので、注意が必要です。

問題になりはじめたのは2005年以降。

2008年には、2度にわたって日本農業新聞が、このホウレンソウケ
ナガコナダニの被害が全国に広がっていることをトップ記事で報じて
話題になりました。記事の内容はつぎのようになります。

2008年6月13日分トップ記事。↓

ホウレンソウを食害するホウレンソウケナガコナダニによる被害が、全
 国39都道府県に広がっていることが12日、本紙の調査で分かった。
 環境保全型農業の拡大とともに、同ダニの餌になる未熟堆肥(たいひ)
 や有機質肥料の利用が進んだことが要因。関係者は「国を挙げて試験
 研究に取り組んでもらいたい」と訴える。


と、いうことでした。

つまり・・・これは環境保全型農業、いわゆる有機栽培における〔生の
有機物使用の〕弊害
が出た顕著な例のひとつ
なのです。

本来土壌中に生息する有機物分解者であったはずのホウレンソウケナガ
コダニが、環境の変化によって害虫とされてしまった

 ホラーですね。

そして、どれだけたくさんの未熟有機物が全国の耕地で施用されているの
かと、心配
させられる話でもあります〔土壌に保持できなくなった分は
水に乗って環境中に放出されるわけですからヒトにとってもホラーです
〕。

ということですから・・

有機物の耕地への施用に関する、質と量そして回数の規制がない現状とし
ては、「ホウレンソウケナガコダニの被害がでるほ場では、未熟有機物の
使用を控えてもらえませんか
」と、いまのところは農業者の良心におねが
いするしか方法がないわけです。 


       

ということで、本年2016年8月18日の農業新聞↑にも載っている
被害の実態の記事をお知らせして、人為的に生態が変えられてしまった
ダニのはなしはおしまいです。



晴れ 『現代農業』誌の推奨された農法、「土ごと発酵」が盛んになって
  から確実に被害が増えた気が
しますね、この虫の被害は。
  「土の状態を見て入れるものをかえるのが農法」の回は こちら 。
 
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