アグリコ日記

岩手の山里で自給自足的な暮らしをしています。

自販機は地球にも人間にも優しくない

2008-06-12 20:36:42 | 思い
 最近気づいたのだが、自動販売機というのは案外と電気を食うらしい。飲料自販機で2,600kwh、タバコ自販機で年間750kwh(どちらも2002年度平均。東北電力及び日本自動販売機工業会による)の電力を消費するそうだ。当時の一般家庭消費電力量は年平均3,565kwhなので、家庭消費の21%の割合になる。
 こんなに消費するなら、排出するCO2は・・・ということになるが、ここでは今までとの絡みでタバコの自販機について述べてみる。地球温暖化という点ではもちろん飲料自販機の方が遥かに上(タバコ自販機の3.5倍)なのだが、以前の記事で言及したように、タバコにはそれ独自の、栽培や製造工程、燃焼に関わる環境破壊の側面がある。

 1995年におけるタバコ自動販売機の普及台数は49万8800台「タバコ問題の基本的な視点と今後の法制的課題」より転載)だから、全国の電力消費量は合計374,100,000kwhになる(一般家庭約10万5000戸相当分)。私の住む奥州市の世帯数は43,075(平成20年4月30日現在。人口は128,979人)だから、その2.4倍。つまり電力消費量から言えば、人口31万人相当の町がひとつ、この全国に散らばったタバコ自販機によって形成されている計算となる。発電所で1kwhの発電に555gのCO2が発生するとすると、ここで排出されるCO2は20万7625トン。なんだか途方もない数字だ。
 また更にタバコ自販機には、目下日本で深刻化しつつある社会問題の原因となっている面があることを見逃せない。すなわち、青少年の喫煙だ。
 喫煙によって補導された未成年のタバコ購入先を見てみると、平成13年の総務庁調査結果では、自動販売機が7割(中学生・高校生含む)を占めている。また喫煙場所については、自分の家・友人の家・公園や路上などが圧倒的に多い。つまりほとんどの子どもたちが自販機経由でタバコを入手して、自分の家や友人の家、公園や路上などで喫っているということだ。一方親たちは(特に喫煙する親ではそうなのだが)、そのような子どもの実態にまったく気づかずにいるというのが現状(同じく「青少年とタバコ等に関する調査研究報告書」より)のようだ。
 
 「平成16年度財政制度等審議会たばこ事業等分科会」によれば、2003年度に喫煙によって補導された少年は54万2214人。およそ1分間に1人の頻度で補導されている。このうち中学・高校生だけで見ると約31万4,000人で、これは四国4県と佐賀県を併せた5つの県の全ての中学校・高校の全生徒数に匹敵するそうだ。しかもその数は年々急増しているという。まさにこれは由々しき社会問題だ。
 喫煙などの不良行為は少年犯罪と顕著な相関関係があるという。つまり喫煙という不良行為をあえて行うことによって、少年の規範意識の低下を招き、これが犯罪行為へとつながる。事実刑法犯を犯した中学生は、その半数以上に喫煙経験があるそうだ。成人を含めたわが国の全ての刑法犯検挙人員の約4割が14歳から19歳までの未成年者であり、ひったくりなどのいわゆる街頭犯罪では、7割が少年によるものだという。本当に、この分野で日本は今や危機的状況にあると思う。
 彼ら喫煙で補導された少年の7割が、自動販売機でタバコを買っている(2001年度総務庁「青少年とタバコ等に関する調査研究報告書」による)。すなわち自販機は明らかに未成年の喫煙を助長し、少年犯罪の一因となっている。
 昨今、温暖化防止や青少年の非行防止の観点から、タバコ自販機の撤廃を主張する声が多くなってきた。しかしこれに関してもやはり、日本たばこ産業は反対している。なんでも自販機による売上は年間1兆5286億円。タバコの総販売金額の約40%に当たるのだそうだ。自販機を撤去すれば売り上げが落ちるのではないか。だから断固反対!とのこと。
 個人的には、あきれて声が出なくなるのだが、所詮タバコで利を稼いできた人の集まりというのは、これほどのものなのだろう。いずれかつての阿片商人のように社会的に消滅してしまうものだとは思うけれど、それまで早いか遅いか、どれだけの時間がかかるとしても、その間に人間が健康を蝕まれ、地球上の全生物が汚染されていくことを思うと哀しくなる。またはタバコ産業は、死の商人や今も暗躍する麻薬密売業者のように生き残り続けるのだろうか。もうしそうなら、それが人間の根源悪として、受け容れるしかない。

 以上、このところ調べる必要があったのでつい「タバコによる環境汚染」について長々と述べてしまったが、これによって別に世の喫煙者を非難するつもりはなかった。ただタバコと地球環境との相関関係を自分なりに書きとめておきたかっただけだとも言える。今もタバコの吸殻を田んぼの畦道にこんもりと山にしている農業者を見かけるが、それによってどれだけの環境破壊が起こされているか、それが雨に流されることによってどれだけの生物が苦しみ、死んでいくか、百姓である私はほとんど日常的に、そのことを目にしてきてしまった。それが発端となって、農薬嫌い、タバコ嫌いの向きが強まったとも言える。しかしほとんどの農業者は、そんなことにまったく気づかずに毎日を過ごしているのが実情だろうと思う。
 喫煙による最大の被害者は喫煙者自身なので、私の主張も畢竟、彼らのためになればと思う気持ちが一等強い。しかしいかんせん、現実ではかえって恨まれたり憎まれたりしていることの方が多い。でも彼らは私たち同様、タバコ産業による紛れもない被害者なのだ。事の真実を知れば、世界中の喫煙者はタバコ産業を糾弾し告訴するのじゃなかろうかと思う。それだけ多くの人たちが、力関係によって屈服服従操作されてきたことは事実だろうと思う。
 タバコに限らず自動販売機には環境負荷の面が大きい。ましてやタバコ自販機には、加えて青少年の非行や健康被害の面が多い。それほどのマイナス点を知りながら、なぜ今もって、日本たばこ産業は自販機の撤廃もタバコの生産縮小もしないのか。次代の地球を思うと哀しいほどである。世界における私たちの宝はただひとつ、子どもたちだけしかない。
 私たちの子どもに、人類の子孫たちに幸せを贈りたいという気持ちと行動が、本質的に今の自分の幸せを呼ぶ原動力になるのだと思う。お陰で私自身も随分以前より幸せになったよう気がするし、そういえばかの宮沢賢治も、「世界全体が幸せにならないうちは個人の幸福はあり得ない」と言っていた。この場合の「世界」とは、もちろん「自分を含めた他の生きもの全般」を含めてのことであろう。
 時として科学は、人間にも地球にも優しくない時がある。どんなに良かれと思ってしたことでも、人間の思考には必ずしも「完璧」という言葉はあり得ないのだ。やってみて初めて大損害を認識することだってある。地球温暖化の問題、タバコの問題(これについては「人災」だという説もある)も、これに含まれるのだろう。私たちは過ちを犯しやすい反面、それと気づいた時には一転して方向転換する能力も兼ね備えている(これが過ち多い人間ならではの特殊性だと言えよう)。ここに私たちの希望があり、幸せを掴む可能性がある。
 私はこの世界のたくさんのものを愛しているのだが、同時にたくさんのものを憎んでいる。そのひとつが、この「タバコ」問題なのである。

 


【写真は、トラガ。触れたり刺激したりすると、このように鮮やかな後翅を見せて威嚇するみたいなのだが、普段は地味な存在だ。地球温暖化で真っ先に消えていくのは、このような名もなく目立たない虫や植物たちなのかもしれない。】



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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
地震 (南無)
2008-06-14 09:52:40
おーい、無事か。電話繋がらん。
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Unknown (マルビーナです)
2008-06-14 11:18:07
地震 大丈夫ですか?…絶対 連絡下さい!…電話 江刺 水沢 通じないので…お願いします!
返信する
Unknown (マルビーナです)
2008-06-14 11:18:28
地震 大丈夫ですか?…絶対 連絡下さい!…電話 江刺 水沢 通じないので…お願いします!
返信する
マルビーナさんへ (南無)
2008-06-14 12:22:37
直後から何度か電話をかけてたら午前10時半頃彼と運良く電話が繋がりました。彼は建物も含めて無事です。揺れがまだ断続的に続いていると言ってました。
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南無さんへ (マルビーナ)
2008-06-14 14:44:51
…連絡 本当に×2 ありがとう ございました!凄い 安心しました(*^_^*)♪…あたしも 何回も 電話しましたが…連絡とれなくて…心配でした…本当に ありがとう ございましたm(_ _)m。
南無さん 優しい方なんですねo(^-^)o!…これからも 宜しく お願いしますm(_ _)m。
マルビーナより
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ご心配かけまして (agrico)
2008-06-14 19:59:59
大変な地震だったようで(私の記憶する限り、宮城県沖地震以来約30年前ぶりではないだろうか)、県南の一関市や宮城県北でかなりの被害が出ています。幸いに私の住む北上山系は古い造山帯なので被害が少なく、一番近いところでは保育園の窓ガラスが割れて園児や保育士が負傷したという情報が流れていますくらいです(うちから車で数分の所)。
この地震が起きたとき、私はちゃぶ台に坐って本を読もうかと思っていたところでした。猫が2匹居間にいたのですが、突然の揺れに目をまん丸にして走り出したりしてました。
でも私の家は築50年を越す昔ながらの建築工法です。基礎も丸石の上に乗っかってるだけです。これがかえって、地震に強いのですね。揺れはしたけれど、何も壊れないし家の中では何も落ちませんでした(唯一壁際に積んでいた薪が何本か落ちただけでした)。
「うちが潰れるくらいのときは、多分市内が壊滅する時だろうな」などと思いながら、慌てたって仕様がないので、また本を読み始めました。揺れは一時間経っても頻繁に繰り返し、ほぼ10時間以上経った今でも断続的に続いています。
南無さん、早急なご連絡ありがとうございました。かえってのほほんとしていた私がのんき過ぎたかなと反省してしまいました。人のありがたさを感じました。
マルヴィーナもありがとう。知ってのとおり、うちにはテレビも新聞もないので、電話が通じなくてもたいして不便ではないのだけれど、このような時にはありがたみを感じます。人が死ぬ時は、究極的にその人が存在意義を失った時です。その意味では、私もいつ死んでも仕方ないとは思うしそれに従おうとは思ってますが、どうやらまだその時ではないだろうなとは思ってます。多分私は意外と長生きするんじゃないかな。
まだ余震が強かった頃、鳥たちがなにごともないようにさえずりながら飛び回るのを見て、このような変動も、見方からすれば「常態」の一部なのだなと思いました。地球には普遍的に変化する力が内在されていて、それはいつの時代にも必ずなにがしかの形で顕れてきた。だからこれからのどんな変化にも、私たちは従うしかないのだなと思ったりしました。
元々岩手は地震が多いので、被害はそれほどでもないと思います。かえって地元の人間として、被災者に手を差し伸べないとと思ってるくらいです。気にかけてくれた皆さん、ありがとうございました。私たちはみな同じ円盤の上に乗って生きてるようなものなのですね。
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Unknown (allie)
2008-06-15 13:36:27
アグリコさん、よかった
南無さんのコメントで安心しました
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長生きしそうです。 (agrico)
2008-06-15 20:05:29
この辺りは幸いなんの被害もなかったようですが、しかし地球温暖化の影響なのか、このところ世界的に災害続きですね。この方向性で行けば毎年こんなことが当たり前になるかも。
今日になっても時折余震が起こります。春以来雨がほとんどないので土砂災害は起こりにくいと思いますが、これが台風なんかと重なったら大変だったかもしれません。
当のこちらでは、意外とのんびりしたものでしたよ。地震の直後でも農作業をしていた人たちもいました。都会こそ危ないと思います。気をつけていかないとなりませんね。
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