粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

永遠のエラ

2012-02-20 10:00:58 | 音楽

僕自身、ふだん余りジャズは聴かないが、そんな中でも大好きなアーチストがいる。黒人の女性ヴォーカルのエラ・フィツジェラルド(1917~1996)だ。ビリー・ホリデーと双璧をなすトップヴォーカリストだ。ビリー・ホリデーがどこまでも暗さが消えないのに対して、エラはその歌声はいつも明るい。たとえは適当ではないかも知れないが、日本でいえばビリーが暗の中島みゆきに対して、エラは明の松任谷由実に相当するだろう。

巨漢ともいえるその体型から発するエネルギッシュで軽妙な歌唱は聴く者をわくわくさせ、陽気にさせる。特にスキャットといわれる楽器の音に似せて擬音を繰り返す歌唱法は、エラの十八番といってよい。彼女のスキャットはちょうどサックス奏者がアドリブで乗りに乗って体全体をくねくねさせる姿を彷彿させる。

映像はかなり悪いが、動画で「Stompin' at the Savoyを見聞きするとそれが遺憾なく発揮されている。エラはどこまでも明るく陽気だ。自分は何か気が乗らないでぐずぐずしているときに、彼女の曲を聴くと急に心がHighになれる。

ただ彼女自身の私生活は決して明るいものではなかった。離婚した母親の元で育つものの14歳で失い、ホームレスの時期もあった。結婚は2回したが、すぐに離婚している。3度目は結婚詐欺が発覚して実現しなかった。しかし多くのアーチストの仲間に恵まれて、ジャズ人生は栄光に包まれていたといってよい。特にルイ・アームストロングは生涯の盟友とされている。

そんなエラの珍しい動画を見つけた。なんとートルズの「Hey Jude」を歌っているのである。これがあのビートルズの名曲かと思われるほどに、エラは完全にジャズ風に歌いこなしている。まさに「これがジャズなのよ」といわんばかりだ。エラはまさにジャズ人生を全うしたといえる。そしてこれからも我々の心に響き続けるだろう。