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黒田三郎はのどの奥を癌にやられた
高見順はもうすこし下がって食道だった
言葉のたまり場を灼かれた
火の断崖(きりぎし)だった
いま前の座席でおさなごが目をあける
うるんで半睡
水の精になっている
まだ言葉が回復していない
鬱血のぬるぬるした
夢ののどに
まだ言葉がめざめていない
梅を観ての帰り
一輪の声が言葉のたまり場でぬるんでいる
詩集『続・家』 より。
電車に乗って、私は本を読まない。むろんスマホも持っていない。
私の視線を奪うものは、いつでも小さな子。そしてこの詩を思い出す。
一輪の花が開花を待つように、幼子ののどにはたくさんの言葉が眠っている。
聞き逃さないで。