ふくろう日記・別室

日々の備忘録です。

「帝国」という時代

2013-06-22 02:21:24 | Haiku



履歴書に残す帝国酸素かな   (摂津幸彦)


攝津幸彦(せっつ ゆきひこ)は、1947年1月28日生まれで1996年10月13日に49歳の若さで病死なさったようだ。
この生年から考えると、彼は戦後生まれで「帝国」とは無縁の人生を送っていると思われる。

1930年 - 帝國酸素株式会社 設立。
1981年 - テイサン株式会社に社名変更
1998年 - 日本エア・リキード株式会社に社名変更

この「帝国酸素」に在籍していたのは、おそらくお父上か、その世代の方と思われる。
戦前には創業当時は多くの会社の名前に「帝国」が付けられていた。
戦後大分時を経てから徐々に社名は変更されていった。
その幾つかの例として……。


●帝国人造絹絲株式会社 → 帝人株式会社 →  ロゴマークをテイジンからTEIJINに変更。

●帝國蓄音機商会 →  テイチク

●帝国興信社 → 帝国興信所 → 帝国データーバンク (ここだけは帝国を外さないのね。笑。)


「帝国」という言葉の存在は、歴史を語るものだ。それもかなりの重さで。
「大日本帝国」……なんて恥ずかしい名前だ。

お父上あるいはその世代の方の書かれた履歴書であろうか?
あるいは、自らの履歴書に、お父上のかつて所属していた会社と、その最終身分を書いたのかもしれない。
「書く」ではなく「残す」のである。時の流れとともに「帝国」を脱いだ時代へと移行してゆく時代に……。


国家よりワタクシ大事さくらんぼ   (摂津幸彦)