eつれづれ管理者(66kV特高変電所、技術者)

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節電50%は逆立ちしても無理です。

2012年09月09日 | eつれづれ
原発ゼロを目指すのなら50%節電を国家目標とすべき
今夏の電力危機は乗り切ることができたようだが、これは五輪開催により電力需要がピークシフトしたという特殊事情によるところが大きい。
「原発ゼロ」という世論がこのまま変わらないのであれば、現在の10%程度の節電では不十分で、50%節電くらいの国家目標を掲げる必要がある。
■「原発ゼロでも大丈夫」なわけではない
電気事業連合会が8月20日に発表した7月の販売電力量(速報)は、電力10社のうち、東北電力を除く9電力が昨年7月を下回り、6.3%減になった。このうち、家庭向け中心の「電灯」は12.4%減。なかでも電力不足の恐れがあった関西電力は16.9%の減少となった。節電目標のない東京電力でも14.5%の減少で、全国の家庭で節電が広がっていることがわかった。
ただ、勘違いしていけないのは「原発はゼロでも大丈夫」ということにはならないことだ。あくまでも家庭や会社で節電がきちんと徹底されたからこそ、原発がほとんど稼働していない状況でも真夏のピークを乗り切ることができたのである。実際、関西電力では大飯原発3、4号機の再稼働がなければ電力使用率95%超えの日がかなりあり、やはり危険水域だったことに変わりはない。
■原発停止で急増する“社会的費用”
原発停止に伴って発生した費用の問題は電力会社の経営を圧迫しており、このまま行けば来年には債務超過に陥るところが続出する。火力発電所を動かすための化石燃料の輸入が増え、その増分だけで1日100億円程度に達しているので、年間では3兆円を超える“社会的費用”となっている。当然値上げをしなくてはならないが、東京電力の10%値上げ申請に対する世論の風当たりは強く、結局8.46%というところに落ち着いた。
その他にも7月からは再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)が発足しているので、電力会社は従来の発電方法による電力よりも5倍以上高い42円/キロワット時などの値段で購入を義務付けられている。値上げが通らない状況では、この制度も電力会社の経営圧迫要因になる。
また、二酸化炭素(CO2)が発生しない原発を停止し、火力発電所を動かしているのだから、CO2増加とそれによる地球温暖化問題という費用も考えなくてはならない。
日本は京都議定書で1990年比6%の温室効果ガスの排出削減を義務づけられているが削減どころか増加傾向にあった。3.11以降、原子炉を止めることによってこれが大きくくるって来ており、古い合意である京都議定書を守るだけでも3000億~4000億円以上の排出権を買い取る必要が出てくるだろう。
■電力使用率が95%になると「警戒水域」
「主な電力会社の今夏の電力使用率の推移」を見てもらおう。今夏は、東京電力も関西電力も、最大で90%程度の電力使用率にとどまった。一番苦しかったのは九州電力で、最大で95%まで上昇した。「95%なら大丈夫じゃないか」と思われるかもしれないが95%というのは電力の運用上、非常に厳しい数字だ。電力使用率95%という状況では、何らかのトラブルで火力発電所が一つダウンすれば、ブラックアウト(停電)が起きてしまう。
現実に中部電力では最新鋭の上越火力発電所の蒸気タービンが異常振動を起こし8月1日から停止している。中部電力の総発電量は1100万キロワットくらいなので上越1号機の1系列が停止になっただけで5%ダウンとなる。私が折に触れて言っているように、90%を超えるとかなり要注意、95%になると「警戒水域」というのがまさにいまの中部電力管内の状況なのである。原発依存度が高い九州電力に関しては95%を超えて綱渡りだったが結果的にいままでのところブラックアウトは起きていない。
■電力不足を免れた今夏の“特殊事情”
実は今夏の電力危機を乗り切ることができたのは節電が進んだということもさることながら、ロンドン五輪が開かれていたことによる影響が非常に大きかった。ロンドンと日本は9時間の時差があるので、テレビの生中継は夜に行われた。夏の電力ピークは日中だが、時差のおかげで人々の活動時間帯が夜に移り、自然にピークシフトが実現することとなった。
ロンドン五輪は甲子園の高校野球にも影響を与えた。ロンドン五輪(7月25日~8月12日)と高校野球(8月8日~8月23日)の開催期間が重なったため、人々の関心がロンドン五輪に注がれている間は高校野球の盛り上がりが欠けた。
例年なら高校野球は開会式からずっと盛り上がり退職者を中心に多くの人が日中にエアコンを効かせた自宅でテレビにかじりつく。そのため、高校野球の盛り上がりが最高潮に達する最終日の午後2~3時あたりを中心に、夏の電力ピークが訪れる。昨年私は高校野球を秋に持っていくか午前中またはナイターでやるようにYouTubeで訴えた。
例年通りに高校野球が始めから盛り上がり、人々がこぞって決勝戦をテレビ観戦していれば、電力は足りなくなっていた恐れがある。ロンドン五輪が盛り上がったおかげで、高校野球が忘れられ、幸いにも電力不足を免れることができた。その意味で、今年は極めて特殊な夏だったと言える。
以上のことからもわかるように、たまたま今夏を乗り切れたからといって「今年程度の節電を続ければ原発はゼロでも大丈夫」と考えるのは早計である。
また、今稼動している火力発電所には長い間閉鎖されていた老朽化した施設が多い。それらがいつトラブルを起こすかもわからない。今後も原発をほとんど動かさないという状況が続くのであれば、さらなる節電が必要だ。
■原発がない分、「30%使う量を減らす」という発想が必要
今夏の節電目標は北海道電力が7%、北陸電力と中部電力がそれぞれ4%、関西電力が10%、四国電力が7%、中国電力が3%、九州電力が10%となっていた(東北電力と東京電力は節電目標なし)。本来これでは不十分で、国策でもっと徹底してやっていくべきだ。
「原発ゼロが国民の総意」というのが民主党政権の(ゆがんだ)置き土産である、というのなら、同時に(国民にもその代償を払ってもらうためにも)50%の節電目標を設定するくらいのことをしなければならない。
50%という大きな節電目標を掲げるのは50%を目指せば実際には30%の節電を達成できるだろうという私の計算である。30%の節電が実現すれば、2010年時点の原発比率(26%)に匹敵する。もしこのまま原発ゼロという方向に進んでいくのであれば国家目標で50%の節電を決定し、国民全員がそれに向けて死にものぐるいでやる。太陽と風任せで運用が不安定な再生可能エネルギーには安易に頼れないのだから、原発がなくなる分は節電で補うしかない。
また再生可能エネルギーはコストが高い。しかし国民は安易な値上げは認めない。それなら、電力の使用量を思い切って下げるしかない。その下げるためのあらゆる犠牲を覚悟しなければ「原発ゼロは国民の総意」と言ってみても始まらない。
これは「原発の代替は再生可能エネルギー」と安易に考えるのではなく「原発がないということは30%使う量を減らす」という発想である。CO2や化石燃料代といった費用も減らしていくためには、30%以上の節電を実現するしかないのだ。
■醜いバブルの終焉が透けて見える
再生可能エネルギーの問題点は本稿でも最近述べたのでそちらを参照してもらいたいが、今夏程度の節電で満足していては「原発ゼロ」は実現しない。
今年の少なくとも3倍の節電努力をするためには超省電型の家電機器の開発や断熱型のスマートハウスなどの開発が必要となる。
いま世を挙げて太陽光パネルなど「再生可能エネルギー買い取り制度」を狙った建設ブームとなっている。何年かあとに期待したほどの稼働率にならず採算割れした設備が放棄される醜いバブルの終焉を私は透視する。不安定な発電施設に浮かれるよりも工業国日本は省エネ技術で再び世界をリードする、という夢を見たい。


針金電気ヤが以前より言っている通り、今の生活、利便性を捨て皆、ビンボーだった昭和30年代の生活をやる覚悟があるかどうか...節電50%の暮らしは電製品みなゴミ処分の様だ。それより今冬も厳しい節電要請がくるだろう...何時までも原発再稼働反対と言えるのか見物だが、そのうち又、ウマイ口実を考え容認するだろうミエミエだ。