黒猫 とのべい の冒険

身近な出来事や感じたことを登載してみました。

猿払村紀行

2013年06月20日 10時36分30秒 | ファンタジー

 この辺は、六月に入って、ようやく暖かくなりましたね。春を飛びこえて、初夏がやってきたという感じです。そのつもりで今週、猿払村を訪れたのですが、地元の人の真似をして、半袖を着る気にはとてもなりませんでした。村内に散らばるモザイクのような風物が、早春の霞の中に茫々としていて、富士(利尻山)が見えるという橋を渡ったときも、あいにく西方の地平線には薄明かりしか点いていませんでした。でも、ハマオニの海は、三十数年前の三月末、京都から長い長い列車の旅をしてたどり着いた、冬の真っ黒なオホーツクの海とはまったく様相が違い、海だと言われなければ気づかないくらい、波音もなく淡い色をしてたたずんでいました。
 猿払は、サルフツと読み、札幌から北方に、三百二十キロメートルほど行った北の海に面したところです。北海道に住む者もなかなか行ってみようかと目を向ける土地ではありません。若き日の仲代達矢が主演した「人間の条件」という映画を全編観た方は、映画の最終章で、彼が中国東北部の旧満州の大平原を彷徨う印象的な場面を覚えていると思います。観客たちも十時間に及ぶ映画との格闘で、へとへとになって倒れそうになった場所、その撮影地が海からの風に吹きさらしになる、宗谷岬から猿払にかけての大丘陵なのです。
 いよいよ本日二十日は、「黒猫との本」の出版の日です。なぜこの日を選んだのか、私にもよくわかりません。はなが我が家にやってきたのが九年前の六月十八日、とのが目を閉じたのが十一年前の七月二十日、結果的にその間の日になりました。二十冊くらい作ってみると、なかなか作品のできばえがよくなったような気がします。皆様方がその本にいつか巡り会われることを願っています。 (2013.6.20)

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