黒猫 とのべい の冒険

身近な出来事や感じたことを登載してみました。

鎌田實氏のエッセーを読んで

2012年03月06日 11時49分44秒 | ファンタジー
「医師鎌田實さんの連載「さあこれからだ」(毎日新聞H24.2)を読んで思ったこと」

<鎌田實>
 長野県 諏訪中央病院名誉院長 63歳 著書「がんばらない」等
 チェルノブィリの事故で被爆した患者の治療にも当たった。

 この記事には、がんと闘う女優の樹木希林さん、ジャーナリストの鳥越俊太郎さん、緩和ケア病棟の87歳のおばあちゃんの話などが載っている。彼らは、がんと闘うナチュラルキラー細胞(笑ったり、泣いたりすることで増えるといわれている。)を活性化させ、前向きにがんと闘い、また自分の命より大事なもの、子供達のことなどに心をはせているという方々なのだ。
 鎌田医師は、人を幸せにするふたつのホルモンを紹介する。
 ひとつは、セロトニンで、これは比較的有名。好きなものを食べたり、楽しいものを見たり、自分が幸せと感じたとき分泌される。神経の活動を活発にして、うつの治療薬にも使われる。
 もうひとつは、聞き慣れないオキシトシンというホルモンで、人の幸せを思い、慈しんだり祈ったりすることによって分泌される。驚いたことに、そのホルモンは、他者の幸せを思いやる人自身のストレスを解消し、感染症を予防し、生きる力を強化してくれるというのだ。
 ここからは、私の所感。人の幸せを願うことによって自分も元気になる、という理屈はわかるような気がするけれども、そのような行いは高邁な精神の持ち主でなければできない芸当なのでは?
 ところで、落語家の桂文珍さんのこんな話を雑誌で読んだ。阪神淡路大震災のとき文珍さんの家も潰れたのだが、寄席があってキャンセルするわけにいかない、うつうつとしたまま高座に上がって話し出すと、観客が自分の話に笑ってくれている。その様子を見てそれまで苦しんでいた自分が逆に癒されるのを感じたというのだ。これは人の喜びが自分の癒しにつながる、人のためにしたことによって自分が元気になる、まさに例のホルモンの働きだ。
 アメリカで活躍するトランペッターの大野俊三さん(元サッカー選手と同姓同名)をご存じだろうか。以前、ビートたけしのテレビ番組でも紹介されたが、彼は二度の大災厄に遭っている。一度は、交通事故で上唇の裂傷を負い、トランペットをもう吹けないと宣告された。しかし二年間のリハビリと新たな技術の習得によって再起した。二度目は末期の扁桃がんにかかったこと。大手術後、口を開けることさえできない苦難を乗り越えて、翌年には現役復帰し、仲間とともにカーネギーホールの舞台に立ち、さらに新たな境地を開いた。
 こういう話を聞くと、人は、どんな大きな困難に遭っても、自分の心を奮い立たせれば、乗り越えられない障害なんてないことや、阪神や東北の大震災などの未曾有の困難に遭った人々が、大変な状況下にある自分をさておいて、人のために力を尽くそうとするようなとき、自分自身が励まされ、いっそう大きな力を発揮できるようになる実例が、身近に起きていることに気づく。そして、これらのことは特定の人たちが占有する奇跡なのでなく、生体に元々備わっているホルモンの絶大な働きが引き起こすひとつの現象だと考えられるという。
 生体とはそんなふうに化学物質によってコントロールされる精密機械のようなものなのだ。なのに、その化学物質が、人の感情の揺れ動き、あるいは他者へ関わっていこうとする意志といった不可解な働きをきっかけにして生成されるというのは、不思議としか言いようがない。もっとも、その感情や意志というもの自体、外界からの刺激を受けて生体中に滲み出すなんとかホルモンによって制御された反応と言っていいのだろう。
 ものの本にただし書きがあった。困難に遭遇したとき、順当なプロセスを無視して、ホルモン剤を打てばいいという刹那的な行動にはくれぐれも走らないようにと。一時的な効き目はかえって生体の正常な反応を阻害し、他者の心に共感することが不得意な人間を作り出しかねないという。自省。(H24.3.6)

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