黒猫 とのべい の冒険

身近な出来事や感じたことを登載してみました。

再訪

2013年07月04日 16時09分56秒 | ファンタジー

 薄い雲間からこぼれ落ちる日差しを受けながら、北海道南岸の陸地と海との狭いすき間を縫って、どこまでも続く細い道を数年ぶりに走った。往復約四百キロメートルの日帰り旅だ。時間があったら、道路脇の真っ赤な看板のレストランを覗いたり、狭い砂浜の流木に腰掛けて歌を歌ったりしたかった。
 適当な地点で、その道から逸れて内陸に入り込むと、日射しはいちだんと強くなり、気温も上昇し、鬱蒼とした山地の奥から多くの息づかいが聞こえてくる。彼らの先鋒隊を務める小さな鳥やカラスたちが親しそうに近づいてきて、何しに来たのか、ゆっくりしていけるのかとうるさく尋ねる。今回は龍探しする余裕はぜんぜんないよ、と答えると、ちょっと口をつぐんで、すぐまたおしゃべりし始める。
 急いだものでもないさ、この土地はふたたび昔の面影を取り戻そうとしている、以前より木々や雑草の緑が濃くなったと思わないか? 龍や、とのは永遠にここに住んでいるんだ。(2013.7.4)

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