帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔二百六十一〕歌は風俗

2011-12-24 00:02:17 | 古典

  



                                          帯とけの枕草子〔二百六十一〕歌は風俗



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言枕草子〔二百六十一〕うたはふぞく


 文の清げな姿

 歌は、風俗歌、中でも「杉立てる門」。神楽歌もおもしろい。今様歌は長くて癖がある。


 原文

 うたは、ふぞく。中にも、すぎたてるかど。かぐらうたもおかし。いまやううたは、ながうてくせづいたり。


 心におかしきところ

 歌は風俗、中でも「好きたてる門」。神楽歌もおもしろい。今様歌は長くて癖がある。



 風俗歌の「心におかしきところ」を聞きましょう。

 『梁塵秘抄』 巻第二(日本古典文学全集 小学館)に収められてある歌より。

 こいしくは とうとうおはせ わがやどは やまとなる みわのやまもと すぎたてるかど

 (恋しくば、はやくはやくいらっしゃい、わが宿は、大和なる三輪の山もと、杉立っている門……乞いし求めくるならば、はやくはやく感極まらせて、わがや門は大いなる和らぎの途、三和の山ばのふもと、好きはじめている門よ)。


 「おはせ…いらっしゃい…追わせ…老わせ…負わせ…極まらせ…感極まらせ」「やど…宿…や門…女」「やまと…大和…大いなる和らぎ…山ばの途中」「みわ…三輪…三和…三度の和合」「すぎたてる…杉が立っている…好きたてる…好きになり始めている…好きが高まっている」「かど…と…門…おんな」。

 ついでに、もう一首、

 わが恋は おととひみえず きのふこず けふおとづれなくば あすのつれづれ いかにせん

 (わが恋は、一昨日見えず、昨日も来ず、君、今日訪れなければ、明日のつれづれなる間、如何すればいいの……わが恋よ、あゝ、お門、訪い見えず、きの夫来ず、京おとずれなくては、明くる日のつれづれ、どうすりゃいいのさ)。


 「恋…こひ…乞い…願い望む…求む」「は…特に取り立てていう意を表す…感嘆・詠嘆の意を表す」「お…男…おとこ」「と…門…女」「み…身…見…覯…まぐあい」「き…木…男木」「けふ…今日…京…山の頂上…山ばの極み」「つれづれ…徒然…心満たされず、することもない」。


 風俗歌も、「およそ歌は、心深く姿清げに心におかしきところあるを優れたりというべし」という藤原公任に学び、歌の言葉は「浮言綺語の戯れには似たれども、ことの深き旨も顕れる」という藤原俊成に学べば、このように聞こえる。
 歌が「おかし」という清少納言に同感できるでしょう


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)

 
 原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。