斎藤秀俊の眼

科学技術分野と水難救助、あるいは社会全般に関する様々な事象を一個人の眼で吟味していきます。

上越市柿崎区上下浜の水難について、現地調査結果を公表しました。

2015年04月23日 06時09分25秒 | 長岡技術科学大学の広報
昨年の5月4日に発生した上越市柿崎区上下浜の水難について、カスプ地形による戻り流れによって3人のお子さんが流された可能性が高いことを長岡技術科学大学と水難学会の合同チームが21日の定例記者会見で報告しました。

カスプとは、砂浜にできた凹凸の地形で、陸地から海に向かって凹または凸が伸びているように見えます。


海から長周期波がそこまで遡上してくると、凸部の海水は戻るときに凹部に流れ込み、凹部に沿って海に戻るため、このときに強烈な戻り流れとなります。実測や計算結果より、秒速5mから10mに達する速さで、これに子どもがのってしまえば、陸から30mほど沖合の砕波帯まで数秒でいっきに流されることになります。

これまでカスプ地形に発生する離岸流の研究はいくつか報告されていますが、カスプ地形に発生する戻り流れについては手がつけられておらず、特に水難との関連性については、まったく認識されていませんでした。5月の連休ではまだ海水浴には早く、砂浜で遊ぶことがほとんどですが、こういう時期における波打ち際の危険性として新たに注意喚起の必要な現象といえます。

現場の上空写真です。事故の日とほぼ同じ波が発生しているときに撮影しています。(水工学研究室、犬飼直之助教提供)
黄色の点に人がいるとします。横線は砕波帯の位置、縦線はスケールで、数字は砕波帯からの距離で単位はm。
波が黄色点に到達するまでの7秒間


黄色点の人が戻り流れ(幅3m程度)に落ち込み流されていくとするシミュレーション。


戻り流れが強烈なため、次の波がカスプ凹部の周囲から回り込み、追加の戻り流れが発生。