小学生攻略法

このブログも10年目。久しぶりに担任復帰です。

子どもが本当に解く「必要性」を感じられる問題を

2016-02-11 20:54:06 | 授業中の攻略法
5年生の算数「割合」
今日は「こみぐあい」を求める学習です。

定員120人で96人乗っている小型飛行機Aと
定員540人で459人乗っている大型飛行機Bでは
どちらがこんでいるか。

お決まりの問題です。
この問題に対して子どもたちの中には、あっさりと
「Aは96÷120=0.8で
Bは459÷540=0.85だから
Bがこんでいる」
とする子が、結構な数いました。

これで正解です。
なぜいきなりこの子たちはこれができるのか。
1つは、前時の学習を生かしているから。
前時には、
「バスケットのシュート成績」ということで「10本中8本入った選手の成績は?」のような問題を考えています。
そこで、「8÷10」を経験しているので、今回も同様に当てはめているのでしょう。
もう1つは、この前時に限らず、これまでの学習で「単位量」の学習を中心に、こういった場面で割り算を適用することの有効性を肌で覚えているんだと思います。
だから、そういった経緯で今回も一応の立式を答えを導いているこの子たちは、この時点で一定の評価はできると思います。
もちろん、ここではこれで満足ではありませんが。

問題はこの式の中身ということになるのは言うまでもありませんが、それはさておき、この子たちにとっては、
「どちらがこんでいるか」
というそもそもの問題は、もう解けているわけで、もうこの問題に対する意欲とか緊迫感とかドキドキ感はなくなっているのは間違いないでしょう。

しかし、この子たちだって、感覚でこう解いただけで、その中身については理解できていません。
だから、こう問い直します。

「じゃあ、出てきた「0.8」とか「0.85」っていうこの数字って、何?」

この瞬間、数秒ですが、シーンとなります。
この静けさも、授業ではたまらないものです。
そしておもむろに口を開きだします。
「…こみぐあいです」
「何ていうか… 平均?」
「違う違う、昨日のシュートの話みたいに、乗客1人あたりの、こみぐあい… あれ?」
こんな感じで、ここに、とてもほどよい「?」が教室中に広がりました。

そこで思いました。
だったら、そもそもの問題は、これの方がよかったんだぁ
「こみぐあいを調べるのに、太郎君は 96÷120=0.8 としました。
すると花子さんが「太郎くん、その0.8って何?」とたずねました。
太郎君は答えに困ってしまいした。
太郎君は何と説明すればよいでしょうか」
こんな感じ、どうでしょう?

もうストレートに、0.8にポイントを絞る問いです。
もちろん、最初の問題でも、こみぐあいを求める中で、0.8の意味を考えはするのですが、それでは少し焦点がぼける恐れがあります。
割り算で答えを導いて満足している子は、そこから先の追究をさぼる可能性があります。
理解の遅い子は、話題があちこち飛んでる感じに聞こえて、混乱するかもしれません。

だから、問題を焦点化します。
子どもたちの反応から、この0.8を考える問題は、おもしろい展開になりそうです。
こみぐあいはあっさり立式した子たちも、この問題には苦戦します。
そして、0.8の意味を解明したいと食いついてきます。
ここに、子どもたちにとっての、問題を解く「必要性」が生まれてきます。
これこそ、いい授業になる大前提となるものです。

解く必要性のある問題に食いついてきた子たちには、その後何を要求しても面白くなります。
自分の考えを伝えたがります。
自然と、算数で重要な数直線や表を駆使して何とか説明しようとする子が出てくるでしょう。
友達の考えを聴きたがります。
友達と話し合いたがります。
簡単に先生の口から答えを聴きたくない、と言います。

そして授業が活性化します。
協働的で、能動的な学習を生む要素がそこにはあります。

教科書の指導書には載っていない展開例です。
だから、自分で発想するしかありません。
大事なことは、どの子たちに対してもこれがうまくいくというわけではないということ。
どんな問題がその子たちにとって解く必要性を感じるかは、もちろんその子たちの実態によります。
だから、それを注意深く見極める目が先生には必要です。
授業の前に見極めて準備をすることができればいいですが、授業の途中で見極めることだってあるでしょう。
今回の私もそうでした。
そういうときに、しらけてしまっている子どもたちを放っておいて相変わらず予定通りの授業を進めるのではなく、柔軟に展開を変えていける力も必要です。

だから授業は難しいし、だから授業は面白い。

改めてそう思えます。