神鳴り(アメジストネックレス)

難聴ゆえに家居の好きな主婦です。過去、心臓弁膜症、大腸がんの手術を受けました。趣味は短歌です

明日は葬儀

2018年01月14日 16時16分33秒 | 日記
明日朝が明くればあとは焼かるるを待つばかりなるははそはの母

干からびし海老の体になりはててホテルベッドで亡くなりし母

亡くなりし母の最期の言の葉は「酸素吸入すれば楽だが」

七十年ちかく私を慈しみゐしひと死にて一言もなし

おととひはまだ音立ててものを食(は)みゐし母が亡くなり無音

死ぬことは静かになるの謂ひなればいたく静かに母の亡骸

生きてゐし頃の面影ありながらもはや動かぬこの眉まつげ

生き返ることは望めず望まぬが静かになりし母に祈りを

杖を突き黄泉路よろよろ歩を運ぶ母よ迷ふな真直ぐに進め

足元のおぼつかなきに大阪に高速バスで来たまひし母

ははそはの母の愛してやまざりし娘でありし己と思ふ

自慢にもならぬ娘のわたくしを自慢してゐし母ありがたき

「昔はね坂本龍馬直系の人から見染められたこともあつたの」とか

子のわれのよきことばかり覚えゐて人に自慢をする母なりき

子を思ふ気持ちは老いて呆(ほう)けても解(ほど)けぬ綱のやうに強くて

これからはこんなに私の応援をする人ゐぬと思へば涙

最期まで叱り続けて逝かしめし母に感謝は死後やつと湧く

脳梗塞起こしし七十八歳ゆ九十二歳まで十四年間の過酷は

栄光の座より転落して死にき言語障害起こして母は

それならと文を綴れば誤字脱字かつての母から考えられぬ

お嬢様育ちの母はそれでもまだ人懐こくて人を信じて

絹糸の製糸工場いとなめる家の長女でありしわが母

糸を摂る女工さんらにお嬢さんお嬢さんとぞ言はれきし母

嫁入りのときの打掛自前にて整えもらひき終戦前に

近隣になきほど衣装もたされて嫁ぎ越し母の苦労それから

収入をすべて己の小遣ひにする夫とは知らず嫁ぎて

その代わりその後才覚発揮して生け花界で頭角表す

絶頂でありにしころに転落はありぬ脳の梗塞

聞き取れぬ発音、発話で聞く人は迷惑顔を隠そうともせず

恥かしき、悔しき思ひをし続けて母は死にたり九十二歳で

長寿とは長生き寿ぐ言葉なりされど寿ぐことばかりでなく

脳梗塞起こしし時に即死してゐればその後の不名誉なきに

よく生きて生き切つたとぞ褒めやらむ馬鹿にされても蔑まれても

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