静 夜 思

挙頭望西峰 傾杯忘憂酒

北海道の旅  <# 1> 道東: 知床半島 羅臼

2014-09-07 15:20:20 | 旅行
 JR釧路駅前から阿寒交通の路線バスで知床半島・羅臼まで3時間半、166 Km。釧路空港に着いた13時、温度計は21度を示していたが、乾いた風は初秋を思わせ爽やかだ。
 釧路市街を出る辺りで、或る交差点の歩行者用陸橋が、階段の昇りから出口まで屋根と壁でスッポリ覆われているのに気が付いた。防寒の為と思い当たり、冬の厳しさを想像しようとするが、ピンとこない。だが、見かける民家の殆どに暖炉の煙突が備わり、玄関と全ての窓が出窓造りの二重ガラスで囲われるのを目の当たりにし、ようやくイメージが湧いてきた。 建築基準法でいう<北海道仕様>だろう。
 
釧路郊外から中標津までのおよそ1時間半というもの、牧草地以外にはコーン畑しか見えない。ヨーロッパ中部(独・仏・英)や米国中部で目にするのと同じ風景が続き、しかも山の姿が視界に入らぬのには驚いた。広さと平さの点では欧米の平原に及ばないが、道路は定規で引いたような一直線。人工物が稀で、空がやたら広い景観は道東でしか味わえまい。実に心地よい解放感である。ああ、来てよかったと思う。

 カモメの大きな鳴き声で目覚めた翌朝、港へ散歩に。日の出を合図に漁船が帰ってくる。日曜ゆえセリは立たない静かな市場をぶらつき、波止に上がって突端まで行くと国後島が薄いブルーに浮かぶ。宿の主人が親切にもヴィジターセンターまで軽トラで片道送ってくれる。センターの裏に間歇泉があるというので覗きに行ったが、あいにく吹き上がりを見られなかった。センター内で知床半島の大自然の豊かさを訴えるフィルム(環境省製作)がよくできているので「DVDになっていたら買いたいが・・・」と尋ねるも、無いとのこと。英文字幕つきなのでDVDで販売したら観光客誘致にもひとやく買うだろうに、と残念だ。
 
 午後はホエールウオッチング。定員50 がほぼ埋まりそうな盛況だ。出航後およそ1時間余り、国後を指呼の距離で遊覧。海面より国後の島影ばかり見やっているのは私ひとりのようだ。・・・何故か、言葉にならない感情が沸々と湧き起こる。 <軍事力が全て>という国際政治の現実。。。
 イルカは見飽きて知床岬の傍まで出た頃、マッコウ鯨発見!の船長アナウンスに乗客は活気づく。潮吹きのあとT字型の尾びれが海面を踊る。歓声を上げカメラを振りかざした乗客は興奮さめやらず、みな大満足。船長以下従業員も安堵の顔つきで意気揚々と港に戻る。右手に見上げる知床連山のあちこちで、8月末なのに残雪が見えた。

 羅臼3日目の朝、宿から2. 5 Km にある国後望郷展望台へ、山道を167 m 登る。高台に小さな建物がポツンとあり、初老の係員ひとり。カモメと蝉の声しか聞こえない。シーンとした空間を私以外には、大型バイクでツーリング中の青年が訪れたのみ。展望室に備え付けの望遠鏡を覗いたが、気温が高いためモヤが濃く、国後は霞んだまま。すぐ上に大きなパラボラレーダーを載せた防衛省の施設がある。羅臼に限らず、道東は海辺も藪の中もレーダー施設を沢山見かける。  今も北の守りは続いているのを体感した。 ≪ つづく ≫
コメント
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