今日の毎日夕刊に興味深い記事があった。<議論が巻き起こっているのは台北郊外の私立淡江(たんこう)大学。17日から投票が始まる学生会選挙で、中国浙江省出身のマスメディア学科4年、蔡博芸(さいはくげい)さん(22)が会長に立候補した。台湾紙によると、中国人が学生会長選に立候補するのは初めて>。 賛否両論が渦巻いていることではなく、私が注目したのは次の下りである。
<蔡さんは「学生の権利を守ろうと立候補しただけなのに、こんな騒ぎになるなんて」と困惑する。蔡さんは高校3年のとき、初めて訪れた台湾旅行で人々の温かさにひかれ、11年に同大日本語学科に入学。3年生で本来志望だったマスメディア学科に転科した。大学の友人らと社会問題に取り組むグループを結成。今春の中台サービス貿易協定に反対する学生運動にも参加した。昨秋には学費値上げに反対し、大学側に公聴会開催などを求めた。「台湾で自己の権利とは何かを学んだ。台湾社会が教えてくれた」と話す>。
この部分である。即ち「学生の権利を守ろうとしただけ」「大学の友人らと社会問題に取り組むグループを結成。今春の中台サービス貿易協定に反対する学生運動にも参加した。昨秋には学費値上げに反対し、大学側に公聴会開催などを求めた」という内容から、彼女はおよそ中国本土の治世下では経験できない権利意識に触れ、政治的活動さえ参画していたという点に私は注目した。
台湾の学生や教員が問いたいのは、この立候補した学生が台湾で味わった権利意識と様々な自由を卒業後どう活かすのか、ではなかろうか。本土から出た多くの留学生が歩むように、何年間かはその国で働き口を探し、自由な生活を享受するのかも知れない。然し、この女学生が台湾国籍を取得することは残した家族・親族への弾圧を考慮すれば不可能に近いからいずれは帰国せざるをえまい。だが本土に帰ればこれらの体験を語ることも広げることも禁じられている統治体制だから、何の役にも立てられない。・・・・そんなことはどうでもいいじゃないか、彼女が学生会の会長を務める資質さえあれば、という議論も当然あろう。その場合、本土に帰った場合、彼女の秘かな青春エピソードがひとつ増えるだけ、である。
「中国共産党の陰謀だ」と息巻いている連中が本気で阻止したいなら、一歩進めて、立候補キャンペーンの中で例えば「帰国後にあなたが台湾で経験し、学んだ個人の権利と自由をどう活かしますか?その観点から会長になることは貴女にとりどういう意味をもちますか?何の意味も関係もないなら会長になる目的は? 単なる経験のひとつ?」などと尋ねると好いだろう。そうすれば、炙り出される応答ぶりを通じ、大陸に居る人々に向かって絶好のアッピールになるかもしれない。・・そして、このことは、日本に来ている大量の中国留学生にも共通する潜在的問いかけであることを忘れまい。
<蔡さんは「学生の権利を守ろうと立候補しただけなのに、こんな騒ぎになるなんて」と困惑する。蔡さんは高校3年のとき、初めて訪れた台湾旅行で人々の温かさにひかれ、11年に同大日本語学科に入学。3年生で本来志望だったマスメディア学科に転科した。大学の友人らと社会問題に取り組むグループを結成。今春の中台サービス貿易協定に反対する学生運動にも参加した。昨秋には学費値上げに反対し、大学側に公聴会開催などを求めた。「台湾で自己の権利とは何かを学んだ。台湾社会が教えてくれた」と話す>。
この部分である。即ち「学生の権利を守ろうとしただけ」「大学の友人らと社会問題に取り組むグループを結成。今春の中台サービス貿易協定に反対する学生運動にも参加した。昨秋には学費値上げに反対し、大学側に公聴会開催などを求めた」という内容から、彼女はおよそ中国本土の治世下では経験できない権利意識に触れ、政治的活動さえ参画していたという点に私は注目した。
台湾の学生や教員が問いたいのは、この立候補した学生が台湾で味わった権利意識と様々な自由を卒業後どう活かすのか、ではなかろうか。本土から出た多くの留学生が歩むように、何年間かはその国で働き口を探し、自由な生活を享受するのかも知れない。然し、この女学生が台湾国籍を取得することは残した家族・親族への弾圧を考慮すれば不可能に近いからいずれは帰国せざるをえまい。だが本土に帰ればこれらの体験を語ることも広げることも禁じられている統治体制だから、何の役にも立てられない。・・・・そんなことはどうでもいいじゃないか、彼女が学生会の会長を務める資質さえあれば、という議論も当然あろう。その場合、本土に帰った場合、彼女の秘かな青春エピソードがひとつ増えるだけ、である。
「中国共産党の陰謀だ」と息巻いている連中が本気で阻止したいなら、一歩進めて、立候補キャンペーンの中で例えば「帰国後にあなたが台湾で経験し、学んだ個人の権利と自由をどう活かしますか?その観点から会長になることは貴女にとりどういう意味をもちますか?何の意味も関係もないなら会長になる目的は? 単なる経験のひとつ?」などと尋ねると好いだろう。そうすれば、炙り出される応答ぶりを通じ、大陸に居る人々に向かって絶好のアッピールになるかもしれない。・・そして、このことは、日本に来ている大量の中国留学生にも共通する潜在的問いかけであることを忘れまい。