「Jerry's Mash」のアナログ人で悪いか! ~夕刊 ハード・パンチBLUES~

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特別寄稿!《エディ・ヴァン・ヘイレンへの追悼文》 Text By ハウリンメガネ

2020-10-16 10:40:38 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

まさかの訃報であった。

確かに「舌癌を患っている」ということは
以前からニュースになっていたが、
最近では息子のウルフギャング氏が表に出て、
ヴァン・ヘイレンの活動について
コメントしていたこともあり、そろそろ動くのかな?
と思っていた矢先の訃報であった。

エドワード・ヴァン・ヘイレン。
ロックギタリストがその名前を出すとき、
何故か誰もが口に笑みを浮かばせてしまうギタリスト。

筆者も熱心なファンとは言えないが
ハードロック好きとしてやはり一通りアルバムは聴いているし、
楽器屋で誰かが試奏する「パナマ」が聴こえてきたら
ニヤリとなってしまうくらいには好きだ。

そもそも筆者と同世代(1984!年生まれ)の方なら
ヴァン・ヘイレン的な音に親しみがないわけない。
90年代J-POPシーンで使われていたハードロック的な
ギターサウンドの基準になったのは
エディのブラウンサウンドに他ならないからだ。

エディが1stアルバムですでに完成させていた
あのコード感と太さとキレを併せ持ったアレに、
当時のヒットメーカーはみんなヤラれたのである
(特にビーイングはハードロック好きのコンポーザーが多かったせいかモロ)。

一般的にはどうしても
テクニック先行で話されがちなエディだが、
ファンならご承知の通り、彼の場合
キャッチーなメロディが満載のロックが好きなだけで、
速弾き競争やテクニック勝負なんかどうでもよかったのだ
(じゃなきゃ「ジャンプ」なんて書くか?)。

速弾きやタッピングはあくまでいち要素でしかなく、
あの手のプレイは
「みんな盛り上がるしちょっと一発、派手なプレイでも入れとくか!」
とでも思って演っていたに違いないのだ。

この人の上手さが出るのはソロやリード以上に、
歌のバッキングと要所要所にキメてくるオブリガート!
(「パナマ」のサビ前とか聴けば分かるでしょ?)
リズムプレイの多彩さでは右に出るものはいないし、
リズムのフックの効かせ方なんか抜群に上手い.

(あとこの人はフェイザーとフランジャーの使い方がとにかく上手い。
モジュレーションをかけることでバッキングのリズムを強化しているのだ。
この辺り、レゲエの人に通じるものを感じるのだけど、
多分この人は天然でやってそうだなぁ)

もう一つ、
ギタリストとして忘れちゃいけない彼の功績は
「ギター」への探究心だ。

既製品では自分のしたいプレイができないと判断するやいなや
自分でギターをノミで削り、ハムバッキングピックアップを
ストラトボディに組み込む。

ライブでストラップが抜けやすいと思えば
丸カンネジとロックフックを組み合わせる。

若き日のフロイドローズ氏が持ってきた
プロトタイプのロック式ブリッジをいち早く試す。

ステージで目立つ派手な見た目が欲しいから
ギターを自分でペイントする……

結果、彼の手から生まれたフランケンストラトが
ギター業界の新たなスタンダードを生み出したのは間違いない。
その意味では彼はレス・ポール氏の後継者でもあったわけだ。

エディは自分の手による改造に飽き足らず、
メーカーとの共同開発にも熱心で、
ミュージックマンと開発したシグネチャーモデルは
現在もAXISとして販売され、
ピーヴィーと開発した5150アンプは
その後のアメリカンハイゲインアンプの王道となった。

(そんなエディの「マーシャルを昇圧して使った」という
彼の発言が世界中のマーシャルをぶっ壊す原因となったのは
さすがに弁護できないが、みんなあの音に
憧れたからやっちゃったわけだ)

近年ではMXR(ダンロップ)とのコラボエフェクター
(あのストライプ柄!)やフェンダー配下に立ち上げた
自身のEVHブランドでのギターやアンプの販売に力を入れており、
賛否両論はあったが筆者は肯定派である。

だってあのレッドストライプが嫌いなロックファンっているか?
クラプトンのヘッドのタバコ焦げや
マイケル・シェンカーの白黒Vのように
ギタリストだったら一回は真似してみたくなる
あのレッドストライプ。
あれをステージで笑顔で振り回すエディは
まさに新時代のギターヒーローだったのだ。

またそんな彼のプレイをブーストしたのが
兄貴のアレックス(dr)

マイケル・アンソニー(b, cho)
の強力なリズム隊
(マイケルのコーラスが彼らのキャッチーさに
強く作用しているのも特筆すべきところだろう)

エディがリズムとリードを縦横無尽に駆け巡っているのに
一切音の薄くなる瞬間がないのは
彼らのコンビネーションが常にエディと一心同体
であろうとしたからだ。
そしてやはり、ダイアモンド・デイヴ(vo)!

いや、サミー・ヘイガー(vo, g)期もいいのだけど、
筆者はやはりデイヴがいるヴァン・ヘイレンが好きだ。
あの4人の立ち姿が好きだ。
あのメンバーの中で笑顔でプレイしているエディが好きだ。
だからやっぱり今聴きたくなるのは
オリジナルメンバーのアルバムだ。

1stは当然いい。
当時の彼らの若々しさが詰め込まれているし、
この時点で既にエディのプレイはキレにキレている。
ある意味キンクスの原曲より有名になってしまった
「ユー・リアリー・ガット・ミー」は
やっぱり今でも必聴に値するだろう
(この人達、他にも「プリティ・ウーマン」やら
「アイスクリームマン」とか結構カバー曲が多い。
この辺、彼らがちゃんとアメリカンポップスの系譜
に連なってるなぁと思えて筆者は嬉しい)。

「1984」もやはり必聴と言っていいだろう。
なにせ「ジャンプ」も「パナマ」もこのアルバムだ。
エディが弾くシンセの音は確かに時代を感じさせるところもあるが、
今でもこのシンセの音って結構使われてる。
結局シンセポップという意味でも
ヴァン・ヘイレンが残した足跡は大きいわけだ。

でもなぜか今聴いてるのは
「戒厳令(Fair Warning、1981年作)」だ。
一曲目の「ミーン・ストリート」のイントロから
「シンセ?」と思わせるエディのタップ&スラップが炸裂。
一番好きなのはやはり「アンチェインド」。
サビのフランジャーの使い方も、
デイヴのワイルドな歌とコーラスのアメリカっぷりも
全く色褪せない名曲。

でも実はその後の
「プッシュ・カムズ・トゥ・シャヴ」がとても好きだ。
R&B的な曲でエディのカッティングも
鍵盤的なギタープレイもヴァイオリントーンでのソロも
すべてパーフェクト。

こういうプレイを聴くと彼の友人である
ルカサー的なギタリストになる道もあったように思うが、
そこでセッションマンにならず、バンドにこだわったのが
やっぱりエディらしいところなんだろうし、
そんなエディとバンドが噛み合った、
ヴァン・ヘイレンらしいアルバムが、この
「戒厳令」なんじゃないかと今聴きながら思っている。

確かに今、
エディのプレイを熱心に練習するかと訊かれれば
「いや、まぁ」とはいうさ。
でも未だに酔ってアンプを歪ませてると
「パナマ」ってどんなだっけ?
とか「ユー・リアリー・ガット・ミー」を
ちょっと弾いてしまうわけだ。

永遠のギターヒーロー、エドワード・ヴァン・ヘイレン
今夜は久々にタッピングのひとつやふたつ練習してみようか……

グッド・ナイト、エディ。
あんたのこと、好きだったよ。
どうか安らかに。

《ハウリンメガネ筆》



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