「Jerry's Mash」のアナログ人で悪いか! ~夕刊 ハード・パンチBLUES~

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「マシュメガネ対談」 チャーリー・ワッツとローリング・ストーンズを語ろう!(第一回)名盤「NASTY MUSIC」編

2021-08-29 14:54:06 | 編集長と副編集長の対談「マシュメガネ対談」

《ハウリンメガネ》
言葉を失うとはこういうことを言うんですね……
{ 編集長「MASH」}
記事にも書いたが、君からの知らせで呆然としたんだ。
《ハウリンメガネ》
朝、ニュースを確認した時、目を疑いましたよ。
まだ目が覚めてないのかとすら思いました。
次回のツアーに参加しないって情報は知っていたので
調子悪いのかな?とは思ってたんですが……
{ 編集長 }
俺は積極的に情報を取る人間じゃぁ無いから
ツアーをやることすら知らなかったよ。
《ハウリンメガネ》
私、14年の来日公演を観た時の記憶が蘇りましたよ……
ストーンズは「あの一回」しか観てないから……
確か二日目だったかな?
二階席で遠かったけど、カッコよかったなぁ……
{ 編集長 }
俺は海外も国内も腐るほど見たけれど
ストーンズはいつもストーンズだったよ!
《ハウリンメガネ》
ご家族に看取られたそうですから、
それだけは幸いだったというか、ホッとしましたが……
{ 編集長 }
色々考えさせられるよ。
他のメンバーはもうツアーの準備で忙しかったんだろうね。
《ハウリンメガネ》
追悼というのもおこがましいですが、
今回から年末までは「チャーリーとストーンズ」に焦点を当てる
そんな対談にするということで、
今回はストーンズの隠れた最高傑作との評もある
「ナスティ・ミュージック」のお話ですね。

{ 編集長 }
「ナスティ」は絶対に外せないよね!
72年と73年、まさにピーク時のライブを
3箇所から選りすぐり2枚組として出された
「ロック史に残る大名盤」だよ!
《ハウリンメガネ》
ミック・テイラー在籍期、スチュもボビー(・キーズ)も
元気な頃の72〜73年のライブツアーのブートですもんね。
盤レーベルの記載が一切内容と一致しない!
そんなブートらしすぎるブート(笑)。
{ 編集長 }
昔はレーベルに曲目を記さず出したんだが
何でだか分かる?
《ハウリンメガネ》
えっ、ただ雑なだけじゃぁ・・・
まさか、何か理由があるんですか?
{ 編集長 }
フフフッ・・・
実は「摘発逃れ」を目的としていてね。
レーベルは適当な曲目を入れ
盤は盤で「ナゾのレコード」として輸入され
スリックと紙ジャケは盤とは別に送られるのさ。
現地の業者がそれらを合わせてから
店頭や通販で売ったんだよ。
《ハウリンメガネ》
ええっ、そんな裏が有ったんですか!
{ 編集長 }
昔は海賊盤業界も市場規模が大きく
摘発されるのを恐れていたんだよね。
今はもう市場規模縮小で残念だよ。
《ハウリンメガネ》
音なんですが、
オーディエンス録音じゃないですよね、これ?
やたらと音がいい。
{ 編集長 }
うん。サウンドボードだよね。
バランスは悪いけれど、まあ逆にイイ感じよね。
《ハウリンメガネ》
そしてとにかくプレイが凄い!
裏名盤扱いなのも納得の出来!
ミック、キース、テイラー、ワイマン、チャーリーの
正式メンバーのプレイは勿論、
前述のボビーのサックスもバリバリで。
{ 編集長 }
そうだね。この頃ならではのアレンジ。
特にMテイラーの貢献度と言うか、
彼に依存したと言うか(笑)
そんな彼が「ギターを弾きまくるアレンジ」が
今とは全く違うストーンズであり
独自のバンド感を醸し出している点が興味深いよね。
《ハウリンメガネ》
時期的にも最も脂が乗ってたと評される時期ですよね。
まあ、この人たちの場合どの時期がベストか?
ってのは論が別れがちですが(笑)。
{ 編集長 }
ロニー加入時はフェイセズみたいな感じでしょ?
94年以降になると、ビル脱退後から最近までってコトだけど
ホーンやコーラスの厚みで押し切る。
これまた、別バンドだしね。
《ハウリンメガネ》
ギターについて話が出ましたが
全編通してキースとテイラーのギターがムチャクチャいい音出してる。
ロックバンドでのツインギターの完成形と言ってもいいぐらい。
{ 編集長 }
まあ、好みは有ると思うけれど、
キースのコンディションがクスリやアルコールで
常に不安定だったから、テイラー依存が強いんだよね。
ただココに収録されている音源は
キースの状態も良く、とても良いバランスで聴けるよね!
《ハウリンメガネ》
ま、ギターの話は置いといて(苦笑)
改めてチャーリーのドラムに話を持っていくと……
変わんないですね!この人は(笑)!
どの時期でもやっぱりストーンズの錨!
他のメンツがエネルギッシュに突っ走ってる時にも
ちゃんとキープして「お前らちゃんと帰ってこいよ?」
と言ってるような(笑)。
どこかにクールさをちゃんと残してる。
{ 編集長 }
良く聴いてごらん
キープと思わせて、合わせているんだよ。
俺を始め、
「ストーンズってチャーリーなんだよ!」
って言う人は、
「彼がキースに合わせて叩ける唯一の人物」
だからなんだよ!
《ハウリンメガネ》
なるほど、ストーンズの裏番長ですよね。
キースの不眠セッションに最後まで付き合ったり、
増長したミックを殴り倒して説教したり。
{ 編集長 }
チャーリーはデビュー時より
他のメンバーよりも精神的に大人だったんだよ。
ただ、ミックに「俺のドラマーは居るかい?」と呼び出され
パンチを喰らわした80年代半ばって、結構精神も病んでたらしいんだ。
クスリにも初めて手を出したらしいからな・・・。
《ハウリンメガネ》
ええっ、そうだったんですか?
ただ一貫して英国紳士らしい立ち振る舞いでしたよね?
だけど怒らせると一番おっかない感じですが(笑)。
{ 編集長 }
イギリスへの愛着もあったようだしね。
《ハウリンメガネ》
一般的に云われがちなチャーリーの評価って
「ヘタウマ」だと思うんですよ。
でもこの盤を通して聴くと
「ヘタ?どこが?」としか言えない。
{ 編集長 }
あのさぁ、俺はいつも思うんだけれど
そういう奴が言うには
「サイモン・フィリップス」や「コージー・パウエル」
は上手いわけよ(笑)
で、チャーリーやリンゴは「ヘタウマ」って具合で語られてさあ。
もうヤッテられないよ(苦笑)!
《ハウリンメガネ》
例えばこの盤では長尺でプレイされてる
「ミッドナイト・ランブラー」。
途中で緩急がガンガン切り替わりますよね。
チャーリーのドラムに一分のズレもないんですよ。
これがどんなに難しいことか!
{ 編集長 }
あの曲自体を叩ける奴なんて、そうはいないぜ!
しかも、キース相手にだよ(笑)。
《ハウリンメガネ》
全編そうですけど、多少タイムがズレても
すぐ全員でリズムを揃えるからズレがズレじゃなくて
味に聴こえるんですよね。
{ 編集長 }
いや、だからズレてるのは上モノなんだよ(笑)。
キースのギターが走ったり、
テイラーのリードギターが走ったりって(笑)。
逆にビルとチャーリーはソコに追い着こうとする・・・
そこで一瞬ズレるのさ。
《ハウリンメガネ》
なるほど。
バンドの息はぴったりタイトに合ってるのに
サウンドはルーズに聴こえるっていう、ストーンズのマジック。
やっぱりこれってリズム隊、特にチャーリーの力だと思うんですよ。
{ 編集長 }
俺が「ストーンズを唯一無二」だと思うのはソコさ。
《ハウリンメガネ》
本人の
「私はジャズドラマーだ。ジャズドラマーが世界一のロックバンドにいるだけだ」
って発言は有名ですけど、その「ジャズドラマー」の内実も
バディ・リッチのようにソロもバンバン叩くタイプじゃなくて、
カウント・ベイシー・オーケストラのジョー・ジョーンズみたいに
バンドをスウィングさせることに注力する
そんなジャズドラマーってことだと思ってて。
{ 編集長 }
そうだよね。
歌物もインストも彼は上モノをシッカリと引き立てるドラマーだよ。
《ハウリンメガネ》
チャーリーのハイハット抜き奏法は有名ですけど、
あれ、ハイハットを使う8ビートを
スイングさせる為にやってたんじゃないかな。
マネすると分かるんですけど、あれ、やるとモタるんですよね。
あれをモタりじゃなくてスウィングさせる為の間だって解釈すると
やっぱりチャーリーのスウィング感こそがストーンズサウンドの核。
ロックの8ビートを絶妙にスウィングさせることで
ストーンズ独特のビートが生まれてたんじゃないかなぁ。
「ラブ・イン・ヴェイン」でのドラムもブルースベースの人だと
もっとベタッとすると思うんですよ。絶妙に軽いんですよね。
スウィングしてるんですよ。
{ 編集長 }
そうだね。ただ、俺はチャーリの音!
一音一音をシッカリとグルーヴさせる感じが
とにかく別格だと思うよ。
君の言うハット・プレイもそうだが、
シンバル音はすぐにチャーリーと分かる!
そんなコダワリの音だし、フィルも絶妙で
独自のドラミングでも有るよね。
《ハウリンメガネ》
ボンゾやキース・ムーンみたいな
「ロックドラマー的な派手さ」があるわけではないし、
ジェフ・ポーカロやスティーヴ・ガッドみたいに
グルーヴマスター的な評価がされてるわけでもない。
だけど、チャーリーのドラムはやっぱり一級品なんですよ。
ストーンズってバンドをストーンズならしめてたのは
いつもピシッと背筋を立てて叩いてたあのドラム。
ミックやキースがフロントで、チャーリーだけはいつも崩れず
後ろでビシッとした佇まい!
コレもストーンズのパブリックイメージじゃないですか。
あれがカッコいいんですよね。
荒くれ者の中に一人英国紳士っていうバランス(笑)。
{ 編集長 }
俺もドラムを叩くが
ドカドカ叩いたり、早く叩くのは簡単なんだよね。
逆に「フィーリング」や「音を醸し出せるドラマー」ってなると
コレはもうロックドラマーじゃぁ物足りないよ。ジャズの領域さ。
《ハウリンメガネ》
しかし……これでストーンズという「バンド」はなくなった……
チャーリーって人は「ストーンズの核の部分」を担ってた人ですから。
{ 編集長 }
その通りだね。
《ハウリンメガネ》
きっとミックもキースもロニーも分かってるんですよね。
でもそれでもストーンズは止まれない。
大事なものが欠落してもやり続けるしかない…
コレ…無茶苦茶ブルースな話ですよ……
{ 編集長 }
うん。「キースは死ぬまでステージに立つ」と言ってたけれど
さすがのキースも、今回だけは喰らっていると思うよ。
《ハウリンメガネ》
最後までストーンズであり続けたチャーリー……
今はとにかく安らかに眠って下さいとしか言えませんね……
{ 編集長 }
ただ、音が残っているからね。
本盤は勿論、色々な盤を聴きゃ、すぐに俺たちは逢えるわけさ。
あの生き生きしたチャーリーにさ。
これってホント有り難いことなんだよ。次回はそんな音について語ろう。

来月の第2回へ続く・・・・



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