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ハウリンメガネの『スーパーギタリスト列伝』 (四人目) 「ポール・マッカートニー」 (ポールはジミヘンなのか?)

2022-03-12 15:46:21 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

やってまいりました、
スーパーギタリスト列伝、第4回。
お相手はいつもの如く私、ハウリンメガネ。

チャック・ベリー、ジョン・レノンと続いた当連載ですが、今回のテーマはこの並びで来たからには外せないこの方です。

ダララララララ(ドラムロール)……ダン!
ポール・マッカートニー師匠でございます!

はい!ご異論のある方もおられるかもしれませんが、前回のジョン同様「ギタリスト」として論じられる機会があまりない印象のポール師匠。

勿論この人はギタリスト云々の前にマルチプレイヤーなのでスーパーギタリスト、というよりスーパーインストルメンタリストと呼ぶほうが正しい気もしますが、そもそもビートルズのデビュー直前までメインの担当楽器はギターであり、ビートルズ時代は勿論、ソロ以降もギターを弾く頻度は高く、ここは敢えて「スーパーギタリスト」としてのポール師匠について語ってみようというのが今回の趣旨であります。

(というか、エレキベースだってそもそも「エレクトリック・ベース・ギター」であり、ギターのように横に構えるベースはすべからくベース・"ギター"なのだからギタリストと呼んでもいいでしょう(詭弁)!
ちなみにフェンダーが世界初のエレキベースであるプレシジョンベースを発表するまでベース=アップライト(コントラバス)であり、当時のレコードのパート表記にわざわざ「fender bass」と記されることがあったのは「このレコードではアップライトベースじゃなくてフェンダー・エレクトリック・ベース・ギターを使ってるんだぜ!」というある意味での宣伝(自慢?)なんですな)

閑話休題。
スタジオ盤でのプレイについては色々な媒体で触れられているのでここでは、近年のライブ映像からポールのスーパーギタリストっぷりを考えてみましょう。

というわけで今回のブツ。
「ポール・マッカートニー スペイン マドリード May 30 2004」

はい、例によってブートではございますが、実はこれ、プロショットの流出らしく、ほぼ全編、ポールはもちろん、現マッカートニーバンド全員の手元がいい画質で撮られており、ギタリスト、ベーシストは当然として、バンドマンの勉強に最適な強烈な一本となっております。

まずはポールのピッキングから。
ギターを構える位置こそ低いが、ピッキングはジョンとクリソツ(笑)!
勿論細かい違いはありますが、手首の使い方なんかは凄く似ている。ブリッジ近くに手首を引っ掛けるようにし、センターからちょいとリアに寄るぐらいの位置で弾いているのがポールスタイル

(エレキのときはピックアップもリアをメインにソロでフロントに倒したり。そういう動きがちゃんと写ってるのホントに貴重なんです……)。

そしてコードフォーム。
前回、ジョンの項でも触れたが、ポールもジョン同様に響きを選んでコードフォームに変化を加えており、ちょいちょい「あれっ?」となるコードを使っている
(ジョンと同じフォームもあるので、やはりこの二人は影響しあっていたのだなぁというのがよくわかる)。
そしてポールはバレーフォームをあまり使わず、ローポジションでのフォームのままハイフレットへ横移動させることが多いのだが、ここが肝。
例えばEからGへ移動するとしよう。

バレーコードを使う場合、人差し指でセーハすることになる。

だが、ポールの場合、Gをこのように押さえる。

そう、親指で6弦を押さえているのだ。
これによってフリーになった人差し指で他の音を加えることが可能となる

(例えば1弦2fで7度を足してGM7にするなど)。
これがポールとジョンのコードのカラフルさの肝の一つである。

(ちなみに筆者の手のサイズだと親指で押さえるのは困難なのでミュートになってしまう(苦笑)。身長の低さなんかは早めに諦めがついたが、ここだけは未だに「延びねえかなぁ〜」と指を引っ張ってみたりする(笑)

そして面白いのはギターソロ。
こちらはバッキングと逆であまり横移動を用いない。むしろポジションは固定し、縦移動(弦間の移動)でストレートにペンタトニックを基調にして伸びやかかつグッドメロディなリードを聴かせてくれる!

(ちなみにこの映像で使われたエレキはレスポールのみ(おそらくリンダさんからプレゼントされたという60年製のレフティ)。歪みは強いがコードが崩れないグッドドライヴトーンでバッキングからリードまでゴキゲンなレスポールサウンド。レスポール弾きには勉強になるのでは?)

さて、ここまで読んで
「あれ?今コイツが書いてる特徴、どこかで聞いたことがあるような?」
と思ったあなた、イイ勘してる。

・親指押さえでフリーになった指を使ったカラフルなバッキング
・縦移動のペンタトニックを主体としたグッドメロディなギターソロ
・レフティ

そう!この特徴、
ジミ・ヘンドリックスと同じなのだ!

筆者の勘だが、この共通項、ジミとポールが影響しあったのではなく、元々似たタイプだったのではないかと思う。

勿論生前のジミと交流があり、近年のライブでは必ず「フォクシー・レディ」でジミへのリスペクトを欠かさないポールと、当時からビートルズのカバーをライヴでプレイ(それもアルバム発売日から数日後にポールの目の前で)したジミだから互いに少なからぬ影響を与えあったのは間違いないと思うが、クラプトンやジェフ・ベックが受けたジミヘンショック(当時イギリスデビューしたジミのプレイにノックアウトされた二人は引退すら考えたという)をポールには感じないのだ。

これ、もちろん当時のポールのメインパートがベースだったという要素は多少あったかもしれないが、それ以前に「あっ!僕と同じタイプだ!」という、親近感が強かったからではないか?というのが筆者の想像だ。
つまり……ポール・マッカートニー=イギリスのジミ・ヘンドリックスだったのだ!
(な、なんだってー!)

そう!ポールという天才はギタリストとしても別の天才に匹敵する才能だったというのが今回の結論だ!
(しかもあなた、ポールはこれに加えて作曲も凄けりゃ他の楽器までやれちゃって、齢80近くにして2時間超えのステージをこなすんですから、こりゃやっぱりスーパーギタリストだのスーパーベーシストだのではなくスーパーミュージシャン、超人の類ですな)。

という我ながら行き着いた際に愕然とした結論をもって今回のスーパーギタリスト列伝、お開き!
また次回!

《ハウリンメガネ筆》