永子の窓

趣味の世界

枕草子を読んできて(42)(43)

2018年03月25日 | 枕草子を読んできて
二九   心ときめきするもの   (42) 2018.3.25

 心ときめきするもの 雀の子。ちご遊ばする所の前わたりたる。唐鏡のすこし暗き、見たる。よき男の、車とどめて、物の案内せさせたる。よき薫物たきて一人臥したる。頭洗ひ化粧じて、香にしみたる衣着たる。ことに見る人なき所にても、心のうちは、なほをかし。待つ人などある夜、雨のあし、風の吹きゆるがすも、ふとぞおどろかるる。
◆◆心がどきどきするもの 雀の子。乳飲み子を遊ばせている所を通るの。舶来の鏡のすこし曇っているのを見ておゐるとき。身分の高い男が、牛車を家の前に止めて、従者に何かの取り次ぎを頼ませているの。上質の薫香をたいて一人横になっているの。頭を洗い、化粧をして、香に染みている着物を着ているの。その場合、見ている人がいないような所でも、自分自身ではほんとうに快い。来るのを待っている男がある夜、格子や蔀に雨音がしたり、風が吹いてがたがたさせる音にも、はっとすることだ。◆◆

                              

三十   過ぎにし方恋しきもの   (43) 2018.3.25

 過ぎにし方恋しきもの 雛遊びの調度。をりかうし。二藍、葡萄染などのさいでの押しへされて、草子の中にありけるを見つけたる。あはれなりし人の文、雨などの降りてつれづれなる日、さがし出でたる。枯れたる葵。去年の蝙蝠。月の明かき夜。
◆◆過ぎ去ったものが恋しいもの 人形遊びの道具。ヲリカウシ。二藍、葡萄染などの切れ端が、押しつぶされて、綴じ本の中にあったのを見つけたの。しみじみと心に染みた手紙を、雨などが降って、一人やるせない日に、探し出したの。枯れている葵。去年使った蝙蝠扇。月の明るい夜。◆◆


■雛遊び(ひひなあそび)=「ひひな」は紙などで小さく作ったおもちゃの人形のこと。女の子の遊び道具。季節にかかわらない。

■をりかうし=意味不審。誤写か。

■二藍(ふたあい)=青みのある赤。呉藍(紅)と青藍とで染めた色。青みのある紫色。

■葡萄染(えびぞめ)=浅い紫色。

■蝙蝠(かはぼり)=川守の意という。開いた形がコウモリに似る夏用の扇。


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