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永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(234)

2008年11月27日 | Weblog
11/27  234回

【玉鬘(たまかづら)】の巻】 その(13)

右近は、
「いでや、(……)われいかで尋ね聞こえむ、と聞こえ出づるを、聞こし召し置きて、われいかで尋ね聞こえむ、と思ふを、聞き出で奉りたらば、たなむ、宣はする」
――いえいえ、(私などはものの数でもありませんが、源氏の殿がお側近くお召使いになりますそのついでに)あの姫君はどうなされましたやらと、お噂申し上げますのをお聞き留めなさって、自分はどうにかして捜し出したいと思うので、居場所が分かったら知らせるようにと仰っておられますので、先ず殿に。――

乳母は、「源氏の殿はたいそうご立派でいらっしゃって、申し分のない女君が大勢いらっしゃるということです。先ずは実の御父君の内大臣にこそ、お知らせ申し上げてくださいませ」と言いますのを、右近は押しとどめて、夕顔の亡くなられた当時の事情を話はじめて、

「世に忘れ難く悲しきことになむ思して、かの御かはりに見奉れむ、子もすくなきがさうざうしきに、わが子を尋ね出でたると人には知らせてと、そのかみより宣ふなり。(……)」
――殿は、まことに忘れる事もお出来になれないほど悲しまれて、あの方の身代りにお子の姫君をお世話申そう、子供も少なくて淋しい身でもあり、自分の実子を探し出したと人には思わせるようにして、とあの頃から申されておりました。(あなたのご主人が少貮になられて、殿にお暇ごいにお出でになったとき、ちらっとお見かけはしましたが、きっと姫君は五条の宿にお留置きになられたと思っておりました。)――

「あないみじや、田舎人にておはしまさましよ」
――おお大変、姫君はもう少しで、田舎人におなりになるところでしたー―

 などと一日中昔話や、念仏を申して過ごします。そのところからは参詣の人々を見下ろせて、前を流れるのは初瀬川といいます。右近から拝見します姫君は、「たいそう上品で、ご容貌もお美しく、田舎びた雑なところなど一つもありませんのを、このようにお世話くださった乳母に感謝でいっぱいです。母君の夕顔は、ただひどく無邪気で、おっとりとして、なよなよと柔和でいらっしゃいましたが、玉鬘は気高く、ご態度もこちらが恥ずかしいほど、奥ゆかしく教養も十分あおりになります。」この日も暮れ方から御堂に上って、次の日も一日中勤行にお過ごしになりました。

◆さうざうしい=さびさびしい=何となく物足りない。心さびしい。

ではまた。



源氏物語を読んできて(長谷寺境内)

2008年11月27日 | Weblog
◆写真:本堂から見た境内
 
 「本堂」は高い位置に建てられているので、舞台から登廊や多くの堂宇を見ることができる。左の写真は舞台から見た境内であり、その景観は壮大である。写真中央やや左の見える大きな木は天狗杉である