永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(24)

2008年04月19日 | Weblog
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【若紫】の巻 (6)

 さて、京に帰った源氏は、左大臣が、婿である自分を大事にしてくれるのを、さすがに気の毒にも思い、気が進まないながら、左大臣宅へ参ります。
葵の上の様子
「女君、例のはひ隠れて、とみにも出で給はぬを、大臣切に聞え給ひて、かろうじて渡り給へり」「世には心も解けず」
――葵の上は、例によって奥に引っ込んで直ぐには源氏の前に出てこず、左大臣に促されてしぶしぶいらっしゃる――夫婦らしくなく、うち解けない――
 
 源氏は「堪え難うわずらひ侍りしをも、いかがとだにと、はせ給はぬこそ、めづらしからぬことなれど、なほうらめしう」
――堪えがたいほどの、ひどい病気をしたのにも、いかがですか、とさえ見舞ってくださらないのは、そんなことだろうと思うものの、なんとひどいこと――

 葵の上は「とはぬは、つらきものにやあらむ」
――訪ねぬのは、無情なのでしょうか。ではあなたはどうなのですか――

 こんな状態で夫婦仲のことで、思い悩まれることが多いいのでした。思いはまた
「いかに構へて、ただ心やすく迎え取りて、明け暮れのなぐさめに見む」
――若紫を、どういう風に計画を立てて、やっかいでなく迎えて、明け暮れあの方の(藤壺)の代りとして側に置こうか――

 あくまでも「藤壺の形代(かたしろ)として」と思う源氏です。

 源氏は「ゆかりいと睦まじきにいかでか、と深う覚ゆ。」
――藤壺とのご縁のある方なら、なお親しみを感じるにつけ、何とかして手に入れたいものだ――

源氏と尼君の文のやりとりを歌からみてみます。
源氏「面影は身をもはなれず山ざくらこころのかぎりとめて来しかど」
――私の心は全部そちらに残して来ましたが、若紫の面影は心を離れぬばかりか、わが身からも離れません――

尼君「あらしふく尾上の桜散らぬ間を心とめけるほどのはかなさ」
――あなたの愛情は、ほんの一時的でたわいないものです――

源氏「あさか山あさくも人をおもはぬになど山の井のかけはなるらむ」
――私はこれほど深く思うのに、どうして相手にしてくださらないのでしょう――

尼君「汲みそめてくやしと聞きし山の井の浅きながらや影を見るべき」
――汲みそめて後悔すると聞いた浅い山の井のように、ご交際の浅さを知りながら、ご所望に従う訳には参りません――
 
その頃、内裏の藤壺女御はお身体の具合が悪いというので、里下がりされていました。
では、また。