永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(16)

2008年04月12日 | Weblog
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【夕顔】の巻 (2)
 
 旧暦では7.8.9月が秋です。真中の8月を中秋といい、今日では9月中頃でしょうか。
 源氏は夕顔に惹かれていき、左大臣邸の葵の上へも出向かず、六條御息所へも途絶えがちでした。
作者の弁
 身の固い御息所がなかなか靡かなかったのを、やっと手に入れた源氏でしたのに、こんなにすぐ冷淡になるとは…ねぇ
 
 源氏は8月15日の夜、夕顔の家に泊まります。朝から、隣近所の下々の騒々しい、下品な話し声や、物音に、「あな耳かしがまし」――ああ、やかましい!―― 
こんな世間ははじめてなのです。

 夕顔の様子は「薄色のなよよかなるを重ねて、はなやかならぬ姿、いとらうたげにあえかなる心地して、そこと取り立ててすぐれたる事もなけれど、ほそやかにたをたをとして、物うち言いたるけはひ、あな心苦しと、ただいとらうたく見ゆ」
 ――薄紫のやわらかな上着をきて、はなやかではなく、まことに愛らしくきゃしゃで、取り立てて立派なところはないけれど、ほっそりとなよなよとしていて、ちょっと何か言うときのなんと痛々しいことか、ただただ可愛らしい――

 翌日16日、源氏は夕顔を伴って、某の院に出かけます。
人気の無い離れ家にいて、語らっているうちに、夕顔は何か恐ろしがっています。源氏も秘密の外泊に、ふと父帝や六條御息所の顔を思い浮かべ不吉な予感がします。

 寝入ったとき、枕の上に美しい女があらわれて、
「己がいとめでたしと見奉るをば、尋ね思ほさで、かくことなる事なき人を率ておはして時めかし給ふこそ、いとめざましくつらけれ」
 ――わたしが大層立派だとお慕いしているのに、お訪ねくださらないで、こんな取り柄もない女を連れていらっしゃってご寵愛になるとは、ひどいこと、恨めしい――
 (源氏には六條御息所の生霊かと)
源氏も夕顔も恐ろしく、物怪(もののけ)の心地して右往左往しているうちに、
夕顔は「ただ冷えに冷え入りて、息は疾く絶え果てにけり」
 ――夕顔の体は、冷えに冷えてあっという間に息も絶え、死んでしまいました。――
ではまた。