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【帚木】の巻 (3)
ある日、源氏は左大臣邸に赴きます。葵の上の両親である左大臣も婦人の大宮(おおみや)も娘に寄りつかない婿を心配していました。子供はまだ生まれていません。
葵の上の人柄は、「人のけはひもけざやかにけ高く、乱れたるところ交じらず、……あまりうるはしき御有様の、とけ難くはづかしげに思ひしづまり給へるを…」
葵の上は際だって気高く、端麗なご様子でうち解けがたく、こちらが気恥ずかしく思われるほどで。源氏はこの気位の高い妻を好きになれないようです。
夜になって、女房たちが「今宵、中神、内裏よりは塞がりて侍りけり」と騒ぎ出します。
今夜は天一神で宮中からこの方向は塞がりです。
源氏は、「さかし、例は忌み給ふ方なりけり。…何処にか違えむ、いとなやましきに」
そうだ、内裏ではこんな場合は外出せずに忌み慎むのが例であった。どこかに方違えをしなければ。ああ気分が悪いのに
大騒ぎのうちに、中川にある紀伊守(きのかみ)の家が選ばれます。
作者の言葉でしょうか、「忍び忍びの御方違えどころは、あまたありむべけれど…」
内密のお泊まりどころは沢山あるでしょうが
物語にはこのような書き方で、源氏の表にあらわれない女性関係が暗に示されます。源氏に限らず、この時代の男性は、正式に手続きを踏んだ妻が何人いても、遊び心でとか、女房たちとは自由でした。当然の時代なのでいちいち書かれないのです。
この紀伊守の家で、源氏の好奇心が一人の女性に執拗に向かっていきます。
★物忌み=陰陽道で、天一神(なかがみ)、太白神(たいはくじん)の、ふたがりを犯すのを避けるため、また暦に記された凶日や、悪い夢を見たり、けがれに触れたりしたときに、それらを避けるため、その日の過ぎるまで身を清めて家にこもること。
★方違へ=陰陽道で外出する際、天一神(なかがみ)、太白神(たいはくじん)などのいる方角を避けること。行く方角がこれに当たると災いを受けると信じ、前夜、吉方(えほう)の家に泊まり、そこから方角を変えて目的地に行く。(古語辞典より)
★○○守=国司の長官であるが、在京の職。○○介=国司の次官で地方に赴任。
ではまた。
【帚木】の巻 (3)
ある日、源氏は左大臣邸に赴きます。葵の上の両親である左大臣も婦人の大宮(おおみや)も娘に寄りつかない婿を心配していました。子供はまだ生まれていません。
葵の上の人柄は、「人のけはひもけざやかにけ高く、乱れたるところ交じらず、……あまりうるはしき御有様の、とけ難くはづかしげに思ひしづまり給へるを…」
葵の上は際だって気高く、端麗なご様子でうち解けがたく、こちらが気恥ずかしく思われるほどで。源氏はこの気位の高い妻を好きになれないようです。
夜になって、女房たちが「今宵、中神、内裏よりは塞がりて侍りけり」と騒ぎ出します。
今夜は天一神で宮中からこの方向は塞がりです。
源氏は、「さかし、例は忌み給ふ方なりけり。…何処にか違えむ、いとなやましきに」
そうだ、内裏ではこんな場合は外出せずに忌み慎むのが例であった。どこかに方違えをしなければ。ああ気分が悪いのに
大騒ぎのうちに、中川にある紀伊守(きのかみ)の家が選ばれます。
作者の言葉でしょうか、「忍び忍びの御方違えどころは、あまたありむべけれど…」
内密のお泊まりどころは沢山あるでしょうが
物語にはこのような書き方で、源氏の表にあらわれない女性関係が暗に示されます。源氏に限らず、この時代の男性は、正式に手続きを踏んだ妻が何人いても、遊び心でとか、女房たちとは自由でした。当然の時代なのでいちいち書かれないのです。
この紀伊守の家で、源氏の好奇心が一人の女性に執拗に向かっていきます。
★物忌み=陰陽道で、天一神(なかがみ)、太白神(たいはくじん)の、ふたがりを犯すのを避けるため、また暦に記された凶日や、悪い夢を見たり、けがれに触れたりしたときに、それらを避けるため、その日の過ぎるまで身を清めて家にこもること。
★方違へ=陰陽道で外出する際、天一神(なかがみ)、太白神(たいはくじん)などのいる方角を避けること。行く方角がこれに当たると災いを受けると信じ、前夜、吉方(えほう)の家に泊まり、そこから方角を変えて目的地に行く。(古語辞典より)
★○○守=国司の長官であるが、在京の職。○○介=国司の次官で地方に赴任。
ではまた。