落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

活きる

2004年12月22日 | movie
『活きる』
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1994年のカンヌで審査員特別賞と主演男優賞を受賞した傑作だそーですが、なぜか日本では2002年まで公開されなかったし、ぐりも劇場では観ませんでした。
一言で云えばこれば『裏・覇王別姫』とも云える物語です。描かれた時代背景は『覇王別姫』とかなり重なっているし、無力なまま時代に翻弄され辛酸を嘗めつくす登場人物の姿を描くと云う題材もよく似ている。音楽もそっくりだし、主人公夫婦役の葛優(グー・ヨウ)と鞏俐(コン・リー)は『覇王別姫』にもメインキャストで出演している。撮影された時期も1年くらいしか違わない筈です。
ただし『覇王別姫』が京劇スターを主人公に彼らの愛憎を軸として混乱の中国を描いたのに反し、『活きる』の方はごくごく平々凡々とした一般庶民の家族愛をそのポジションに置いたと云う点で、物語をとらえる視線がやや異なっている。喩えて云うなら同じ踊りなんだけど踊り手が違う、解釈に違いはないんだけど表現が違う、と云う感じ。
ぐりはどっちかと云えば『活きる』の方が好みです。映画的には派手ではないかもしれないけど、決して地味なだけではない、しっかりとした強さのある映画だと思う。

なんだかんだ云っても鞏俐は大女優だし張藝謀(チャン・イーモウ)は大作家に違いない、そんなことをしみじみ感じさせられましたね。テーマのせいかなんとなくもっとカタイ映画のようなイメージがあったけど、意外に硬軟のバランスがとれた面白い作品です。物語そのものは重いのだが、随所に織りこまれたコミカルな演出が上手くそれを和らげている。
葛優は『覇王別姫』の時も良い役者だと思ったけど、こんな風に個性的な容貌と技巧を併せ持つ俳優は珍しい気がする。強いて云えば鞏俐とじゃ夫婦に見えないってとこが難と云えば難かもしれない。鞏俐は本人の体格が良過ぎるので、張豊毅(チャン・フォンイー)とか姜文(チアン・ウェン)みたいな貫禄のある男優の方がお似合いなんじゃないかなぁ。
その葛優、主演映画『わが家の犬は世界一』が来年GWに日本で公開されるらしい。コメディです。葛優ヅラかぶってます。これは絶対観なければー。

春の日は過ぎゆく

2004年12月18日 | movie
『春の日は過ぎゆく』
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劇場に二度観に行って二度とも号泣させられた(そしてDVDも買った)『八月のクリスマス』のホ・ジノ監督の作品。
『八クリ』とよく似てとてもとても静かで穏やかな、まるで心をそっと優しく温かく撫でさするようなラブストーリーです。登場人物の年齢が『八クリ』より上がっているせいもありいささか全体の雰囲気が落ち着き過ぎているような気もしなくもないし、観る人によっては地味と云うか退屈に感じるかもしれないけど、これはこれで作品の個性とも云える。
主人公サンウは無口でおとなしい録音技師と云う設定だし、たぶん作品を観る一般の観客も「録音技師って静かな職業だなぁ」と云うイメージを持つと思うんだけど、ぐりの個人的経験から云うと録音部さんは気が荒くて男クサイ、ちょっとコワイ人が多いです(笑)。圧倒的に男性が多いし、完全に体力仕事だし。
そういう先入観もあってサンウがちょっと優しすぎて頼りなく感じるところもなくはない。でもひたすら誠実な彼をあくまで拒否し他の男性との恋を選ぶウンスの気持ちの方がすぐにはなかなかつかめず、それが監督が訴えたかった「恋の苦しみ」の表現なのかなと思いました。
『八クリ』と同じくやはり映像がとても綺麗。昔の日本映画みたいな(小津とか溝口とかそういうの)、しっとりと大人な恋愛映画です。

ウンス役のイ・ヨンエは声が素晴しい。鈴を転がすような美声とはまさに彼女のような声を指すのではないでしょうか。聞いてるだけで泣きたくなってくるくらい、愛らしい声の女優さんです。
サンウ役のユ・ジテは韓国ではめちゃめちゃ人気あるみたいですが、なるほどプロポーションは良いですよ。かっこいいよ。でもひと目見て「はっ!!」と驚くようなあからさまなかっこよさではなくて、一見普通の良い人っぽいんだけどよくよく見るとなかなか男前、ってとこが役者らしくてええやないですか。
『八クリ』のハン・ソッキュと云いユ・ジテと云い、ホ・ジノさんは癒し系男優がお好みなのでしょーか。

藍色夏恋

2004年12月17日 | movie
『藍色夏恋』
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劇場公開時になんだか気恥ずかしくて観れなかった台湾の青春映画をやっとチェック。

とっても良い映画です。
誰にとっても愛おしく懐かしい思春期を、爽やかに瑞々しく、淡々と描いた佳作。
17歳の高校生たちのひと夏の物語、と云っても特にドラマチックなことは何も起こらない。登場人物もどこにでもいる普通の子ばかり、とりたてて不幸な人間も悪意のある人間も出て来ないし、はっと驚くほど個性的な人物もいない。
でもそれが良いのだ。ごくごく普通の少年少女の、平和でありきたりだけど、でも本人には決して二度とめぐって来ない日々。それを、大事に大事に、抑えたなかにしなやかにストレートな表現で丁寧に描いている。何も変わったことなんかなくても、青春はただそれだけでまばゆい。
キャストには演技経験が全くない人もいたようですが素人くささはあまり感じられず、むしろとてもナチュラルな演技に見えて好感が持てました。きちんとしたワークショップとリハーサルの賜物でしょう。
台詞が少なく間を大切にした演出がいかにも台湾映画らしく、映像や音楽など世界観は岩井俊二や大林宣彦の作品を彷佛とさせます。こういう映画ってもう日本じゃつくれないだろうなぁ。
強いて欲を云えば、ヒロイン克柔の親友・月珍への想いをもっとしっかりと描いてくれれば、物語によりコシが出たんじゃないかと思います。その点だけはちょっとあっさり済ませ過ぎじゃないかなと思えなくもない。

士豪役の陳柏霖(チェン・ボーリン)はとても可愛かったです。ああこういう子いたね~高校時代にさぁ・・・みたいな、健全そのものの少年役が似合ってました。こんな子も今の日本の俳優にはいないんだろうな。

『華城事件は終わっていない』ハ・スンギュン

2004年12月14日 | book
『華城事件は終わっていない』ハ・スンギュン
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映画『殺人の追憶』のモデルとなった華城連続殺人事件の担当刑事による手記。
映画はもともとこの事件を舞台化した戯曲をヒントにつくられており、かなりの部分でオリジナルな脚色がされていて実際の事件とはかなり違った点も多いそうです。(詳細は映画の公式HPを参照して下さい)。
ただ読んでみて感じたのは、脚色されているとは云え映画とこの手記の最も重大な部分、最も強く訴えようとしているところは全く同じだと云うこと。すなわち、罪もない一般市民を恐怖の坩堝に陥れ、残忍極まりない手口でその尊厳を踏みにじった挙げ句、情け容赦なく命まで奪った犯罪者への激しい憤怒、次々に出てしまった被害者に対する深い悔悟、心血を注いだ捜査にも関わらず真犯人に辿り着けない焦燥感・・・と云った捜査官の熱い感情の迸り。必ずこの手で犯人を捕まえてやる、逃がすものか、決して赦すものかと云う強い思いが、映画の画面からも手記の文面からもありありと伝わって来ます。

この手記は映画が本国で公開された後に書かれています。
映画の脚色では現役警察官にとって反感を感じるような描写も多少あったようですが、被害者遺族や関係者からの抗議は一切無かったそうです。
にも関わらず著者がこの本を執筆したのは、映画のヒットによって再度注目を集めたこの事件の、映画とは異なる正確な事実を改めてつまびらかにすることで、少しでも捜査に役立てたいと云う捜査官としての使命感によるものだったようです。
手記とは云え本文のほとんどが捜査報告書のような資料文で構成されていて、結構カタイ本になっています。モノクロでモザイクかかってるけど現場や被害者の所持品などの写真資料もアリ。読みやすくはないけど事件の概要はよく分かる内容です。

時効成立まであと2年。事件の解決を心から祈ります。

インファナル・アフェア

2004年12月13日 | movie
『インファナル・アフェア』
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・・・世間で云うほど面白い映画とは思えないのはなんでやろ?ぐりが何か重大なモノを見落としてるからだろーか?
それとも簡単にメインキャラクターがコロコロ死ぬせいか。劉徳華(アンディ・ラウ)が全くマフィアに見えない、そもそも彼がマフィアである必然性が一切物語の中に表されてないからか。
っつうかアレでんな、劉徳華が警察の潜入マフィア捜査の担当になっちゃった時点で観てる方の緊張感が半減しちゃうんだよね。だってそれじゃ梁朝偉(トニー・レオン)が潜入捜査官ってことはバレることはあっても、アンディが潜入マフィアってことは絶対バレっこないじゃん。
個人的にはⅡ(『インファナル・アフェア 無間序曲』)の方が完成度あると思う。物語ももっと複雑に練れてるし人物描写も魅力的だし。それにしてもホントにこれのどこがそんなに(記録的大ヒットになったりハリウッドでリメイクされたり)凄いんやろな?分からん。すいません。
あ、でもアンディのかっこよさは分かったよ(笑)。悪役は似合わんと思ったけどね。<まーさん