『チェンジリング』
1928年、ロサンゼルスで9歳のウォルター・コリンズ(ガトリン・グリフィス)が行方不明になった。5ヶ月後、女手ひとつで愛息を育てていたクリスティン(アンジェリーナ・ジョリー)のもとにウォルターがイリノイ州で保護されたという吉報が舞いこむが、汽車で帰って来た少年(デヴォン・コンティ)はウォルター本人とは似ても似つかない別人。捜索を続けて欲しいと哀願する母親を事件は解決したとつっぱね続けたロサンゼルス市警は、市民活動家のブリーグレブ牧師(ジョン・マルコヴィッチ)と結託した彼女を精神病院に強制入院させてしまう。
禁酒法時代を舞台に、腐敗しきったロサンゼルス市警の汚点の歴史を実在の事件をモチーフに描いた物語。
各方面で大絶賛の話題作ですが、結局賞レースではあまり良い成績は穫れなかったみたいですね。残念ながら。いい映画なんですけどね。
ちょっと長かったかなー?とくに後半、クリスティンとLAPDとの戦いに勝負が見えて以降の構成はいささか冗長というか段取り調に感じました。やりたいこともいいたいこともわかるだけに、最後まで手を抜かないでほしかった。というのも、この後半のストーリーがほんとうはすごく大切なので。ヒロインの真実の戦い─敵も味方もない、自分自身との戦い─はここから始まったわけだから。
なのでいい映画には違いないんだけど、内容の割りには観念的で非印象的、というのが正直なところでしょーか。もったいないですねー。とっても丁寧につくられたまじめな作品だけに惜しいです。
物語の大きな軸は、我が子を取り戻すためにすべてを懸けた母の愛と、そうした純粋な愛という正義の前に不正義は必ず敗北する(べき)という勧善懲悪なんだけど、観ていてぐりがいちばん強く感じたのは、まだ女性の権利が認められていなかった時代にいかにヒロインが真摯に社会に立ち向かったかという勇敢さと、それを抹殺しようとする権力の矛盾との見事なコントラストだった。
フェミニズム運動は18世紀ごろからヨーロッパで活発になり、1920〜30年代のアメリカでも男女の法的平等を求める運動が隆盛をきわめていた。女性たちの要求に対する男性社会の反発も大きく、この映画ではいかに女性が、クリスティンのようなシングルマザーが権力下で差別され、虐げられていたかが見るだに胸がむかむかするほどのリアリズムで描かれている。おそらくクリスティンに夫がいたら、つまりウォルターの親が女性ひとりでなかったら、事件はここまでこじれはしなかったはずである。
だが男女差別は未だに存在しているし、クリスティンが味わった辛酸は今も現実のものとして存在している。たとえば作中に登場する精神病院での人権を無視したような“治療”は、現在でも世界各地の閉鎖病棟で実際に行われているものとあまり変わりがない。警察の腐敗や職務怠慢や捜査過誤による不祥事もいつまで経っても後を絶たない。人の自由と権利と平等のための戦いはまだまだ続いているのだ。
20〜30年代のファッションを忠実に再現した衣裳はよかったし、アンジェリーナ・ジョリーって良い女優だなあとしみじみ思ったです。
映画の後半の題材であるゴードン・ノースコット事件についての描写があからさまにおざなりだったのはいただけなかったけど、あれはしょーがないのかねー?猟奇映画じゃないからそんなに細かく再現する必要はなかったけど、なんかここのパートで映画全体が一気に軽くなってしまったよーな気がしますですー。実際には事件に加担していたノースコットの実母が映画には登場しなかったのもひっかかる。こーゆーところにハリウッド映画の限界を感じてしまうんだなあ。
1928年、ロサンゼルスで9歳のウォルター・コリンズ(ガトリン・グリフィス)が行方不明になった。5ヶ月後、女手ひとつで愛息を育てていたクリスティン(アンジェリーナ・ジョリー)のもとにウォルターがイリノイ州で保護されたという吉報が舞いこむが、汽車で帰って来た少年(デヴォン・コンティ)はウォルター本人とは似ても似つかない別人。捜索を続けて欲しいと哀願する母親を事件は解決したとつっぱね続けたロサンゼルス市警は、市民活動家のブリーグレブ牧師(ジョン・マルコヴィッチ)と結託した彼女を精神病院に強制入院させてしまう。
禁酒法時代を舞台に、腐敗しきったロサンゼルス市警の汚点の歴史を実在の事件をモチーフに描いた物語。
各方面で大絶賛の話題作ですが、結局賞レースではあまり良い成績は穫れなかったみたいですね。残念ながら。いい映画なんですけどね。
ちょっと長かったかなー?とくに後半、クリスティンとLAPDとの戦いに勝負が見えて以降の構成はいささか冗長というか段取り調に感じました。やりたいこともいいたいこともわかるだけに、最後まで手を抜かないでほしかった。というのも、この後半のストーリーがほんとうはすごく大切なので。ヒロインの真実の戦い─敵も味方もない、自分自身との戦い─はここから始まったわけだから。
なのでいい映画には違いないんだけど、内容の割りには観念的で非印象的、というのが正直なところでしょーか。もったいないですねー。とっても丁寧につくられたまじめな作品だけに惜しいです。
物語の大きな軸は、我が子を取り戻すためにすべてを懸けた母の愛と、そうした純粋な愛という正義の前に不正義は必ず敗北する(べき)という勧善懲悪なんだけど、観ていてぐりがいちばん強く感じたのは、まだ女性の権利が認められていなかった時代にいかにヒロインが真摯に社会に立ち向かったかという勇敢さと、それを抹殺しようとする権力の矛盾との見事なコントラストだった。
フェミニズム運動は18世紀ごろからヨーロッパで活発になり、1920〜30年代のアメリカでも男女の法的平等を求める運動が隆盛をきわめていた。女性たちの要求に対する男性社会の反発も大きく、この映画ではいかに女性が、クリスティンのようなシングルマザーが権力下で差別され、虐げられていたかが見るだに胸がむかむかするほどのリアリズムで描かれている。おそらくクリスティンに夫がいたら、つまりウォルターの親が女性ひとりでなかったら、事件はここまでこじれはしなかったはずである。
だが男女差別は未だに存在しているし、クリスティンが味わった辛酸は今も現実のものとして存在している。たとえば作中に登場する精神病院での人権を無視したような“治療”は、現在でも世界各地の閉鎖病棟で実際に行われているものとあまり変わりがない。警察の腐敗や職務怠慢や捜査過誤による不祥事もいつまで経っても後を絶たない。人の自由と権利と平等のための戦いはまだまだ続いているのだ。
20〜30年代のファッションを忠実に再現した衣裳はよかったし、アンジェリーナ・ジョリーって良い女優だなあとしみじみ思ったです。
映画の後半の題材であるゴードン・ノースコット事件についての描写があからさまにおざなりだったのはいただけなかったけど、あれはしょーがないのかねー?猟奇映画じゃないからそんなに細かく再現する必要はなかったけど、なんかここのパートで映画全体が一気に軽くなってしまったよーな気がしますですー。実際には事件に加担していたノースコットの実母が映画には登場しなかったのもひっかかる。こーゆーところにハリウッド映画の限界を感じてしまうんだなあ。