落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

受験の季節

2006年02月28日 | movie
『フィラデルフィア』
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こちらは1993年度のアカデミー主演男優賞・主題歌賞受賞作品。初見です。なんで今まで観なかったのかな?
主人公のトム・ハンクスは優秀な弁護士だったが、ある日突然所属していた名門法律事務所を解雇されてしまう。職場には黙っていたが彼は同性愛者で、エイズを発症していた。そのことを上層部に嗅ぎつけられたのだ。彼は不当解雇で事務所を告訴するが、不治の病は着々と身体を蝕んでいく。
90年代に流行った法廷モノのひとつですね。

公開当時ストーリーが平板だという批判はあったようだけど、ぐりはこれはこれでいいのではないかと思う。平板なストーリーだからこそ伝わるものもあるからだ。
まずエイズは体液感染する病であること。性的交渉や輸血、注射器の使いまわしなど特殊な状況でしかうつらない。だからHIV感染者と同じ職場で働いていても、いっしょに食事をしても、お風呂にはいってもうつることはない。当り前の常識だ。すなわちエイズ患者だからという理由で人を解雇することはできない。
そして性的志向で人を差別してはいけないということ。セクシュアル・マイノリティーを好きでも嫌いでもそれは個人の自由だ。だがそれを根拠として人を貶めたり蔑んだりしてはいけない。すなわち同性愛者だからという理由で人の信頼性を決めることはできない。
この物語はただ観客を感動させるだけでなくて、こうした「ごく当り前のこと」を非常に効率良く説明してくれる。ストーリーが平板だからこそ、そうした概念がストレートに伝わるのだ。
この映画が他の法廷ドラマと違って正義や真実を問う意図で描かれている訳ではないことは、物語の最後でもハッキリとわかるようになっている。アメリカの裁判でも日本と同じように再審制度があり、作中でも再審を示唆するシーンがあるのだが、この物語は一審が決着したところで終わっている。説明したいことがそこまでですべて描ききれているから、それ以上論じる必要がないのだ。

映画にはクローズアップのショットが頻繁にでてくる。登場人物はカメラのレンズ越しにじっとこちらの目を覗きこむ。そんな風に見つめられるたびに、「どう、わかる?」「あなたはどう思う?」と確認を求められているように感じる。「そうだよね?違うかな?」と念を押されているような気持ちになる。
撮影当時トム・ハンクスは30代半ばだが、役づくりのためにかなりダイエットをしたという。それでもなくてもベビー・フェイスでかわいらしいのに、病状が進行するにつれてげっそりとやせこけていくのが、むしろ不思議に美しくなっていくようにみえて感動的だった。死に近づけば近づくほど、逆に生きている力強さをクリアに表現しているようにぐりは感じた。このヒト結構背が高いんですねー。今調べたら180センチ。そんなにあるたーしらなんだ。恋人役のアントニオ・バンデラスがちっこくみえました(バン氏は173センチ)。
ホモ・フォビアでエイズに関してまったく無知な俗物弁護士役のデンゼル・ワシントンの抑えた演技がとてもよかったです。欲をいえば、このキャラクターの心理がもうちょっとわかりやすく表現されててほしかったかも。
ぐりの大好きな『グラスハープ/草の竪琴』にも出演していたメアリー・スティーンバージェンが被告弁護人役で出ていて、意外なキャスティングに驚きました。


杰克格林哈尓まつり

2006年02月28日 | movie
『ムーンライト・マイル』
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1973年、ダイアナという名の若い女性がファミレスでの発砲事件で死んだ。彼女には作家の母親(スーザン・サランドン)と不動産業の父親(ダスティン・ホフマン)、挙式を目前に控えた婚約者(ジェイク・ギレンホール)がいた。ある日突然大切な存在を失った人間の悲しみのかたちを、静かに穏やかに描いた物語。
作品紹介ではよくヒューマンドラマにカテゴライズされてるけど、ぐり個人としてはどっちかといえばヒーリング系ホームドラマといった方が穏当ではないかと思う。
これ公開当時は一瞬アカデミー賞候補かも?といわれたくらい評判がよかったそーですが、結局ノミネートとかはなかったみたいですね?すごくいい映画なんだけど。ぐりはこの映画大好きです。DVD買いですね。
サントラも欲しい。70年代の名曲がふんだんに使われている。タイトルも作中で流れるローリングストーンズの曲名だし。

家族や恋人を亡くした喪失感を残された人間が互いに癒していく物語というと、ぐりはいつも『ノルウェイの森』を思いだすんだけど、この映画はとくに如実にそれを感じました。時代も70年代だし、主人公(ジェイク)のキャラクターが“ワタナベくん”にどことなく似てるし、途中で登場してくる女性郵便局員(エレン・ポンピオ)もちょっと“みどり”っぽいし・・・と思ったら、これ監督の実体験を元にした話だったんだよね。設定は変えてあるけど。『ノルウェイ〜』も著者村上春樹の自伝的な物語だから、感情的な部分の表現が非常に生々しい。そういう「生々しさ」はホントによく似ている。
『ノルウェイ〜』好きな人はこの映画も好きだと思います。
故人の故郷で恋人が再生していく物語という意味では『恋の風景』にも似ている。故人と恋人の性別が逆だけど、季節が冬から春へ移り変わっていくに連れて進行する台詞が少ない静かな映画、というトーンには共通するところがある。

とにかくもう脚本がものすごくよく出来ている。唯一どーなの?と思ったのはエンディングだけど、それ以外はまったく素晴しい。その一言に尽きる。耳にはやわらかいが鋭い説得力に満ちた台詞はまさに一言一句が秀逸としかいいようがないし、会話のひとつひとつがリアルでソリッドで、エピソードの流れに一切のムダがない。
一人娘を失った痛手から家族が回復する過程を表現するために事件の裁判がうまく利用されているが、裁判そのもののシーンはたった一度しかない。担当検事(ホリー・ハンター)が登場するパートが、遺族たちの感情の流れだけで運ばれていく物語を観客側の感情につないでいくリンクとしてとても効率良く機能していて、そういうギミックはハリウッドっぽいなと思いました。それ以外のパートはとにかく淡々としてるから。もうヘタすると退屈になっちゃいそうなくらい。ちゃんとコミカルなパートもあるけどね。
繊細なディテールがいちいち泣かせる。お悔やみの電話のベルが鳴り止まない家、愁嘆場にすらならない葬儀。ダイアナが勉強していたイタリア語の単語シール、彼女が少女時代を過ごした部屋に飾られたぬいぐるみや装身具。母親と婚約者は名前が同じ(ふたりとも“ジョー”)で、窓ガラスが壊れたままの事件現場は父親のオフィスの真向かいだ。店主がベトナムに派遣されたままもどってこないバーのジュークボックス。物置きの壁に貼られた写真。主人公のハンディキャップ。

悲しみのかたちにはひとそれぞれ違った「色やスタイル」がある。
母親は周囲の人間が勝手につくりあげる「被害者の遺族」という幻想にひたすらいらだつ。彼女はまだ娘を失った現実に追いついていないのに、周りが勝手にそこへ自分を押し出そうとすることが許せない。
父親は結婚後に予定していた婚約者との共同経営に必死に執着する。彼は娘とうまくいっていなかったのだ。もっと彼女をわかりたかった、チャンスはいくらでもあった、という後悔が彼を逃避させる。
婚約者は恋人の死を悲しんでいいのかどうかもわからない。ふたりで決めていたこと、決められなかったこと、まだ考えていなかったこと、すべての解決をひとり抱えこみ、立ちすくんでいる。
結局残された人間は生きていかなくてはならないし、人生を前にしていつまでも自分を騙しているわけにはいかない。まして死んだ人はもう騙すことも欺くこともできない。
この映画は、彼ら3人─あるいは4人─が結果を受け入れてほんとうの自分を取り戻すまでの再生の物語としてはとてもキチンと描かれている。いささか盛りあがりには欠けるし、部分的にはあまりにハリウッド的にセンチメンタルすぎるという評価もあるだろう。わかりやすさや感動という点ではちょっと物足りない人もいるだろう。でもぐりはそれはそれで悪くないと思う。エンディングだけはどうしても気に入らないけどね(爆)。

ダスティン・ホフマンにスーザン・サランドンとゆーとすんごい豪華キャストだけど、ぐりはエレン・ポンピオとゆー女優さんが気に入りました。雰囲気があってとってもステキ。撮影当時既に30代だったみたいだけど、とてもそうはみえなかったです。おさげが似合ってて超カワイイ。
ジェイクはやっぱ結婚するよーな青年にはまだまだ・・・まあ撮影当時ハタチそこそこだからそれはしょーがない。しかし芝居はいいです。上手いです。役にもばっちりハマってたし。2人のオスカー俳優とも完全に対等にわたりあってました。そこはスゴイと思いましたです。

ビヨーク解体ショー

2006年02月27日 | movie
『拘束のドローイング9』

コレは映画じゃないですね。パフォーミングアートかな。もしくはビヨークのプロモーションビデオの長いやつ。
正直こんなもん誰がみるんじゃい、とか思ってたらあにはからんや結構盛況でした。 『無極』の初日よりは全然客入ってたよ・・・とかいっちゃいけませんねー。スイマセン。
ぐりも実は観るかどうしようか迷ったんだけど、ヴェネツィア国際映画祭に出品された時からずっと観たかったし、せっかくだからスクリーンで観ようと思い。
ウン、おもしろかったです。ふつうに楽しめました。2時間あまりとゆー長さもさほど気にならず。
といってもストーリーらしいストーリーがほとんどなくて(うっすらある)、台詞もモノローグもろくにないので(ちょびっとあるけど英語パートは字幕なし)、観る方もそれなりに体力いります。しかも後半とんでもないシーンがあってぐりは全身イヤな汗びっちょりかいちまっただよ・・・まあ予想はしてたけどね、けど長いししつこいしツラかったあ〜〜〜〜アタシは暴力シーンが苦手なんだよ〜〜〜〜ユメにみそー〜〜〜〜。んで何日かは「切」とか「断」とかゆー字をみるたんびにあのシーン思いだしちゃうんだろーな〜〜〜〜。
それとCGパートがもうひとつ。衣装とか特殊メイクほどには情熱が感じられませんでした。惜しいっ。
いちばんよかったのはやっぱし音楽かな?ビヨークの音楽って耳だけじゃなくて五感に訴えてくるんだよね。でっかいスクリーンで大音量で聴いてると、全身がその音に震動してるのが如実に感じられておもしろかったです。

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砂漠の王様

2006年02月27日 | movie
『ジャーヘッド』
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2週間前に公開されたばっかりなのに一度もランキングに入って来ず、しかももう既に大半の上映館で興行が終了している。まだやってるのはごく一部だけか、やっててもレイトショーのみ。
なぜに?レビューとかみるとそれほど評判は悪くないのに。もしかして春休みくらいにDVDとか出す気だったりして。ありえるなー。
けど昨日ぐりが観た映画館は半分以上は席埋まってましたよ。あんま宣伝しないわりにはまあまあの入りなのではないかなー、と思うのですが。
内容もおもしろかったし。ぐりはこの映画スキです。他人にもふつうにオススメできます。

ただ、観てみて「なるほどこれは宣伝しにくいな」とは思いました。
この映画は湾岸戦争に派兵された海兵隊員の手記が原作なんだけど、ストーリーが全然ドラマチックじゃない。むしろあえてドラマ性を真っ向から否定している。原作者はとにかく、戦場にドラマなんかない、戦争にヒーローなんかいない、殺しあいなんか結局みんな無意味だ、という現実を声の限りにわめきたかったのだろう。
それはスゴイわかる。ほんとによくわかる。
けど商業映画としては宣伝しにくいよね(笑)。だって世間一般の戦争なんか行ったことない人間は、戦争映画といえば反射的に涙や感動や暴力のスペクタクルを期待しちゃうもんなんだからさ。だから『男たちの大和/YAMATO』が大ヒットしちゃったりするんだろう。ぐりは『大和』観て泣いた人にこそ『ジャーヘッド』オススメしたいです。あたしゃ『大和』みてませんけど(爆)。

とかなんとかいうと重い映画みたいに聞こえるかもしれませんが、ぜーんぜんそんなことありません。むしろ逆。
とくに前半は爆笑の連続です。若い男の子ばっかりで集団生活なんだから、寄るとさわるとバカばっかやる。下ネタ・セクハラ、オールOK。全員やることなすこと下品すぎ。台詞でもfuckとかmasturbationとか連発しまくり。おかしいです。笑える。
もーだからホンットに、画面にはドラマとかヒーローとか感動とかそういうのはキレイさっぱりなくって、出てくるのは国に帰って女とヤルことしか考えてないアホな男どもと、あとはひたすら汗とか砂とかうんことかセックス(正確にはマスターベーション)。サイコー。いやサイテーなのか。
でも物語が後半になってくると、そういう笑いが消えて本当の“戦争の現実”が主人公の目の前に現れる。もちろん、戦争はサマーキャンプなんかじゃない。あたりまえのことだ。

ぐりはコレもっとたくさんの人が観ていい映画だと思います。原作も今度読んでみます。
主演はジェイク・ギレンホール(またかよ)。さすがにこの前観た『遠い空の向?アうに』よりは多少大人っぽくはなってるけど、やっぱり海兵隊にゃー見えない。顔が幼すぎるのだ。背が高くて役づくりで筋肉ムキムキ?ノなってるので(オシリまでぶりんぶりんになっている)、首から上と下がすんごいチグハグなんだけど・・・このギャップがいいのか。
『遠い空〜』といえばおとうさん役だったクリス・クーパーが上官役で出てきてビックリしました。ジェイミー・フォックスは相変わらずクールっすねえ〜かっこよかったあ。予告編みたときはサミュエル・L・ジャクソンかと思ったけど(爆)。だって喋りがソックリなんだもん・・・。
それと、2年くらい前にある仕事で湾岸戦争の記録映像を資料にしてた時期がしばらく? って、ところどころ「あ、このカットはあの資料使ってるな」とかわかっちゃう部分があって懐かしかったです。

原作レビュー:『ジャーヘッド アメリカ海兵隊員の告白』アンソニー・スオフォード著

受験の季節

2006年02月26日 | movie
『遠い空の向こうに』
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99年の作品。これも確か公開当時に観ようと思いつつ結局観ずじまいだった映画。原作があるのだね。今度読んでみよう。
すごくよく出来てます。1957年にソ連が打上げた人工衛星に憧れたアメリカの少年たちの青春ドラマ。子どもたちには炭坑夫かその妻になる以外に将来のない町で、夜空に遥かに光る衛星を夢みるとはまさに「絵空事」としかとらえない大人がほとんどだろう。そうした背景の描写と、どれだけ挫折しても決して諦めない少年たちのガッツが、淡々としたなかに丁寧に丁寧に描きぬかれている。少年たちと学校や家庭といった周囲との葛藤も、類型にはまらないよう誠意をもって表現されている。
でもまあ映画としてはちょっと地味だね(爆)。真面目にきちんとやりすぎてかたくなっている感じはしますよ、やっぱり。いい映画だけどね。感動もあるしね。けど地味。
音楽が『スタンド・バイ・ミー』に思いっきりカブッてて、しょっちゅう『スタンド〜』のワンシーンを思いださせられてしまった。そのたびに入りこんでみていた集中力が途切れるぐり。うぬぬぬぬー。時代背景の演出としては効果的なんだろうけどねえ。

アメリカでも好評を博したこの映画で有名になった主演のジェイク・ギレンホールは撮影当時17〜18歳くらいか。ぜんぜんそんなトシにはみえません。背は高いのにカオがまったくの子ども。中学生か、ヘタすると小学生みたい。声もまだ幼くて、‘俳優’というより子役っぽいです。演技はうまいけど。
少年たちを励ます教師役のローラ・ダーンは『ジュラシック・パーク』シリーズに出てる人ですね。オタク少年役のクリス・オーウェンがいい味だしてました。すっごいヘンな顔なんだけどね。
顔といえばこの映画、親子兄弟役がまるっっきり似てなくておかしかったです。ハリウッド映画ってわりとそういうとこいつも気つかってるじゃん。髪の色とか目の色とかは一応なんとなくあってるんだけど、にしても主人公のにーちゃんの顔はオモシロすぎですから。