『ハチミツとクローバー』
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美大で建築を学ぶ竹本(櫻井翔)、陶芸科の山田(関めぐみ)、真山(加瀬亮)は教師の花本(堺雅人)を囲む会の仲間同士。
春、竹本は特待生として入学してきた花本の従兄弟の娘・はぐみ(蒼井優)に一目惚れするのだが、天才肌の彼女の関心は海外放浪の旅から戻って来た森田(伊勢谷友介)に注がれ・・・。
羽海野チカの同名コミックの映画化。
ぐりが美大生だったときの話ですが。
ぐりが所属していた工房の前に焼却炉がありまして。学校中のみんながそこへゴミを捨てにくるわけですけれども。まあ要は学内でも僻地だったんだよね。端っこも端っこ、ブロック塀の向こうは芋畑とゆー立地の工房で。
とにかく、毎日毎日ありとあらゆるモノがドサドサ運ばれてくる。美大とゆーのはまことにゴミの多いところで、日々見ていると本気でバカバカしいくらいいっぱいゴミが出る。清掃員の方々が捨てにくるぶんはまだ大した量じゃない。なぜならゴミ箱(大振りのポリバケツ)に入るサイズのものしかないから。学生が課題提出の後やら期末のアトリエ整理やらで処分するゴミは大きさも量もハンパじゃなかった。作品の残骸やいらなくなった素材、使わなくなった機材や道具の類い。売れるものは売る学生もいたけど、たいていの学生はそんな手間はかけずに焼却炉まで運んで来た。
ゴミが運ばれてくるたび、ぐりの工房の学生と教師はその山をほじくり返してまだ使えそうなものを拾い集めた。スプリングが完全にイカれたソファは工房の前に置かれて、みんなの休憩所になった(そこに座ってまたほかのゴミが運ばれてくるのを眺めていた)。旧式の巨大な電子レンジは寒い季節に飲み物を温めるのに使った。ラジカセや食器やコミック本や万年筆、ドライヤーや盥もそこで拾った。
工房ではよく宴会をやった。
ボルシチをつくったこともあったし、みんなで餃子を包んで焼いたこともある。夏は誰かの家に届いたお中元のそうめんをゆでて分けあって食べた。
大学のすぐ近所に配達をやってくれる酒屋があって、アルコールはそこで調達した。ぐりが在学中に学内の宴会で急性アルコール中毒を起こした学生がいて、建前では学内で酒を飲んではいけないことになっていたけど、酒屋の主人は正門の守衛室まで配達に来てくれた(それまでは工房まで配達してくれていた)。守衛室から内線で研究室に電話がかかって来て、発注した学生が台車を押して正門まで取りにいき、その場で支払いをする。正門の前には銀行のATMもあったから、酒屋は取りっぱぐれる心配がない。
そして飲めばみんな必ずべろべろに酔っぱらっていた。なんであんなにアホみたいに飲みまくっていたのか、今となってはよくわからない。そんなに飲まなきゃいけないほど、いったい何に悩んだり、迷ったりしていたのだろう。
全然思い出せない。
この原作のコミックの舞台はぐりの母校である。設定がどうかまでは知らないけど、絵柄を見る限りは一目瞭然、まさに間違いなくぐりの母校をもとにして描かれている。
男子学生ばっかり住んでる安アパートは実際に美大のすぐ傍に何軒もあって、分別のある女子学生はうっかり近寄らないようにしていたものだった。反対に女子学生ばかりの安アパートもあったけど、これはコミックには出てこない。エーゲ海とかノーゲ海とか呼ばれてた池もコミックに出て来たような気がするけど、どうだっかなあ。
コミックに登場するキャラクターのような学生がいたかどうかまではぐりはよくわからない。少なくとも、ぐりが学生だったころは、ハチクロ的に草食な雰囲気の学生はあまりいなかった気がする。もっとみんなイケイケドンドンだったかもしれない。少なくともそうありたいとは思っていたはずだと思う。
そのせいかなんなのか、コミックはコミックである種のファンタジー、完全なフィクションとして楽しんで読んだ記憶がある。途中までしか読まなかったけど、それなりにおもしろかった。
でも映画は意外に現実の美大の雰囲気を実によく再現していた。
原作を読んだのは何年も前なので細かくは覚えてないけど、シナリオそのものはおそらく設定以外はあまり原作に依らないで書かれているのではないかと思う。
考えてみれば全部で10巻にも及ぶ長い物語を2時間足らずの映像にまとめるのはどだい無理な話だから、このやり方は非常に正しい選択だったと思う。
といっても映画にもそれほどくっきりしたストーリーラインがある訳ではない。それぞれに片思いに悩み、傷つき、葛藤する5人の若者たちのつかず離れずの青春を、ごくごくほんのり、ぼんやりと描写しているだけ。
それでもぐりはじゅうぶん楽しめたし、思っていたよりもずっといい映画だなと感じた。無理に都合良く話をまとめようともしていないし、何かの結論を観客に押しつけたりもしていない。青春にそんなものは必要ないのだから。
キャスティングがすごくよくて、主人公・竹本を演じた櫻井くんがとくに素晴らしい。素直で真面目でいい人なんだけど、中途半端で優柔不断で不器用でイケてなくて、とゆーどーにもこーにも残念なキャラが実にうまくハマってる。天晴れです。
はぐちゃん役の蒼井優もいい。というかこの役は彼女にしかできなかったんじゃないかと思う。妖精のように儚げでありつつ、燃えさかるような才能に溢れた輝くばかりの天才少女なんてキャラクターを、ここまで嫌味なく表現できる女優さんてそうはいないんじゃないかなあ。
加瀬亮のネクラな変人ぶりは楽しかったんだけど、山田はどーにもキャラ設定が暗過ぎて演じた関めぐみさんがちょっと気の毒でした。原作の山田はあんなじゃなかったんだけど。伊勢谷友介の芝居がどー見ても窪塚洋介にしか見えないのはこはいかに。
この映画より前にアニメ化されたときはこっぱずかしくて到底直視できなかったハチクロだけど、映画はとてもよかったです。ひさびさ絵が描きたい気分になりました。ちょっとだけ。
作中に登場するはぐみの作品がなんかすげえなあと思ったけど、MAYAMAXXが担当してたのね。個人的にはそんな人にそんな発注できるんだってことが驚きだったです。
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美大で建築を学ぶ竹本(櫻井翔)、陶芸科の山田(関めぐみ)、真山(加瀬亮)は教師の花本(堺雅人)を囲む会の仲間同士。
春、竹本は特待生として入学してきた花本の従兄弟の娘・はぐみ(蒼井優)に一目惚れするのだが、天才肌の彼女の関心は海外放浪の旅から戻って来た森田(伊勢谷友介)に注がれ・・・。
羽海野チカの同名コミックの映画化。
ぐりが美大生だったときの話ですが。
ぐりが所属していた工房の前に焼却炉がありまして。学校中のみんながそこへゴミを捨てにくるわけですけれども。まあ要は学内でも僻地だったんだよね。端っこも端っこ、ブロック塀の向こうは芋畑とゆー立地の工房で。
とにかく、毎日毎日ありとあらゆるモノがドサドサ運ばれてくる。美大とゆーのはまことにゴミの多いところで、日々見ていると本気でバカバカしいくらいいっぱいゴミが出る。清掃員の方々が捨てにくるぶんはまだ大した量じゃない。なぜならゴミ箱(大振りのポリバケツ)に入るサイズのものしかないから。学生が課題提出の後やら期末のアトリエ整理やらで処分するゴミは大きさも量もハンパじゃなかった。作品の残骸やいらなくなった素材、使わなくなった機材や道具の類い。売れるものは売る学生もいたけど、たいていの学生はそんな手間はかけずに焼却炉まで運んで来た。
ゴミが運ばれてくるたび、ぐりの工房の学生と教師はその山をほじくり返してまだ使えそうなものを拾い集めた。スプリングが完全にイカれたソファは工房の前に置かれて、みんなの休憩所になった(そこに座ってまたほかのゴミが運ばれてくるのを眺めていた)。旧式の巨大な電子レンジは寒い季節に飲み物を温めるのに使った。ラジカセや食器やコミック本や万年筆、ドライヤーや盥もそこで拾った。
工房ではよく宴会をやった。
ボルシチをつくったこともあったし、みんなで餃子を包んで焼いたこともある。夏は誰かの家に届いたお中元のそうめんをゆでて分けあって食べた。
大学のすぐ近所に配達をやってくれる酒屋があって、アルコールはそこで調達した。ぐりが在学中に学内の宴会で急性アルコール中毒を起こした学生がいて、建前では学内で酒を飲んではいけないことになっていたけど、酒屋の主人は正門の守衛室まで配達に来てくれた(それまでは工房まで配達してくれていた)。守衛室から内線で研究室に電話がかかって来て、発注した学生が台車を押して正門まで取りにいき、その場で支払いをする。正門の前には銀行のATMもあったから、酒屋は取りっぱぐれる心配がない。
そして飲めばみんな必ずべろべろに酔っぱらっていた。なんであんなにアホみたいに飲みまくっていたのか、今となってはよくわからない。そんなに飲まなきゃいけないほど、いったい何に悩んだり、迷ったりしていたのだろう。
全然思い出せない。
この原作のコミックの舞台はぐりの母校である。設定がどうかまでは知らないけど、絵柄を見る限りは一目瞭然、まさに間違いなくぐりの母校をもとにして描かれている。
男子学生ばっかり住んでる安アパートは実際に美大のすぐ傍に何軒もあって、分別のある女子学生はうっかり近寄らないようにしていたものだった。反対に女子学生ばかりの安アパートもあったけど、これはコミックには出てこない。エーゲ海とかノーゲ海とか呼ばれてた池もコミックに出て来たような気がするけど、どうだっかなあ。
コミックに登場するキャラクターのような学生がいたかどうかまではぐりはよくわからない。少なくとも、ぐりが学生だったころは、ハチクロ的に草食な雰囲気の学生はあまりいなかった気がする。もっとみんなイケイケドンドンだったかもしれない。少なくともそうありたいとは思っていたはずだと思う。
そのせいかなんなのか、コミックはコミックである種のファンタジー、完全なフィクションとして楽しんで読んだ記憶がある。途中までしか読まなかったけど、それなりにおもしろかった。
でも映画は意外に現実の美大の雰囲気を実によく再現していた。
原作を読んだのは何年も前なので細かくは覚えてないけど、シナリオそのものはおそらく設定以外はあまり原作に依らないで書かれているのではないかと思う。
考えてみれば全部で10巻にも及ぶ長い物語を2時間足らずの映像にまとめるのはどだい無理な話だから、このやり方は非常に正しい選択だったと思う。
といっても映画にもそれほどくっきりしたストーリーラインがある訳ではない。それぞれに片思いに悩み、傷つき、葛藤する5人の若者たちのつかず離れずの青春を、ごくごくほんのり、ぼんやりと描写しているだけ。
それでもぐりはじゅうぶん楽しめたし、思っていたよりもずっといい映画だなと感じた。無理に都合良く話をまとめようともしていないし、何かの結論を観客に押しつけたりもしていない。青春にそんなものは必要ないのだから。
キャスティングがすごくよくて、主人公・竹本を演じた櫻井くんがとくに素晴らしい。素直で真面目でいい人なんだけど、中途半端で優柔不断で不器用でイケてなくて、とゆーどーにもこーにも残念なキャラが実にうまくハマってる。天晴れです。
はぐちゃん役の蒼井優もいい。というかこの役は彼女にしかできなかったんじゃないかと思う。妖精のように儚げでありつつ、燃えさかるような才能に溢れた輝くばかりの天才少女なんてキャラクターを、ここまで嫌味なく表現できる女優さんてそうはいないんじゃないかなあ。
加瀬亮のネクラな変人ぶりは楽しかったんだけど、山田はどーにもキャラ設定が暗過ぎて演じた関めぐみさんがちょっと気の毒でした。原作の山田はあんなじゃなかったんだけど。伊勢谷友介の芝居がどー見ても窪塚洋介にしか見えないのはこはいかに。
この映画より前にアニメ化されたときはこっぱずかしくて到底直視できなかったハチクロだけど、映画はとてもよかったです。ひさびさ絵が描きたい気分になりました。ちょっとだけ。
作中に登場するはぐみの作品がなんかすげえなあと思ったけど、MAYAMAXXが担当してたのね。個人的にはそんな人にそんな発注できるんだってことが驚きだったです。