『オール・アバウト・マイ・マザー』
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女手ひとつで育てた息子エステバン(エロイ・アソリン)を交通事故で喪ったマヌエラ(セシリア・ロス)は、わが子の死を父親に伝えるため、かつて暮らしていたバルセロナに戻り、友人のアグラード(アントニア・サン・フアン)と再会。彼女の紹介でシスター・ロサ(ペネロペ・クルス)と知りあう。身重のロサの世話をしながら、舞台女優ウマ(マリサ・パレデス)の付き人として働きはじめたマヌエラだが・・・。
スペインの国民的映画監督ペドロ・アルモドバルの出世作。
1999年て20年前ですね。これ劇場で観たのもうそんなに前かあ。
学生時代に『キカ』を観てからたいていの日本公開作は観てるけど、記憶にある限りアルモドバル作品でつまんなかったってことが一度もない。どの作品にも毎回頭を思いきり殴られたような強烈な印象を受けるし、観たあとは何日も深く考えさせられる。気づけばものの受けとめ方や考え方にも影響を受けていることがある。
かといって過度にシリアスでもないしストレートに社会派なわけでもない。視覚的にもおもしろいし、作品によってそれぞれセンセーショナルだったり猟奇的だったりタイムリーだったりアーティスティックだったりブラックだったり、要するに映画として絶妙にバランスのとれた作品を撮る、非常に成熟した作家だと思う。
この作品での時事ネタはHIVですね。まだ抗レトロウィルス療法が確立されたばかりのころで、多くの感染者がなすすべもなく命を落としていた時代だった。字幕が全部「エイズ」なのがいちいち気になる私は細かいですかね(エイズはHIV感染によって発症する後天性免疫不全症候群のこと。つまり感染しているかどうかを検査するシーンでは「HIV」と表現するのが正しい)。
いまは適切な治療を受けさえすれば感染後35年は生きられるが、90年代まではエイズは不治の病だった。しかしこの病が、物語の中では人々の運命を前に前にと押し流していく役割を果たしてもいる。奇妙な物語である。
最後のテロップでも語られる通り、この映画は究極の女性賛歌である。
ヒロイン・マヌエラを含めた登場人物のほぼすべてが、心の底から求めるものを次々に失っていく。マヌエラのひとり息子は母親の告白を聞くことなく17歳の誕生日に世を去るし、アグラードは友人ロラ(トニ・カント)に全財産を盗まれ、ロサは妊娠によって紛争地での社会貢献活動という目標を失い、ウマはパートナーのニナ(カンデラ・ペニャ)をドラッグ中毒から救い出すことができない。
彼女たちは悲しみや悔しさをかみしめながらも前を向き、現実を受けいれ、目の前にいる友人の手をとり抱きあい、微笑もうとする。
彼女たちを単純に「強い」という言葉でまとめるのは浅はかだと思う。彼女たちにも、弱いときも、間違っているときもたくさんある。ただ彼女たちは人生を愛しているのだ。生きていること、わが身に起きたことを幸も不幸も含めて、ただすべてを認めたいと願っている。
その美しさはやっぱりすごいなあと思う。こんな風に生きられたらなと思う。
最初に観たときもバルセロナに行ってみたいと思ったけど(プロダクションデザインがめちゃめちゃキュートだった)、そういえばまだスペイン自体行ったことがない。
今度こそ旅行してみようかな。
『エイズ治療薬を発見した男 満屋裕明』 堀田佳男著