『海角七号 君想う、国境の南』
台北でミュージシャンを目指すも、夢敗れて故郷・恒春に戻ってきた阿嘉(范逸臣ファン・イーチェン)。
ビーチで行われる日本人歌手・中孝介のコンサートの前座にと地元住民でバンドを組むことになるが、日本側のコーディネーター役を押しつけられた売れないモデル・友子(田中千絵)とは衝突するばかりで、練習も曲づくりもいっこうに捗らない。
日本統治時代の結ばれなかった悲恋を軸に、時間と国を超えた愛を描いて台湾で大ヒットした作品。
あのー・・・こういうこと書くのはすっごい気がひけるんですけどもー。
これ、そんなにいい映画でしたっけね??すいません、ぐりはさっぱり共感できませんで・・・。
なんかねー・・・やりたいことはわからんでもないんだけど、盛り過ぎなんじゃないかなあと・・・だから大事なところが説明不足なのに、どーでもいいことは説明過多っつーか・・・大体、内容のわりに長過ぎると思うんだよね・・・。
説明不足だなと感じたのはまず、60年前の友子(梁文音レイチェル・リャン)と日本人教師(中孝介/二役)の関係。
ふたりのパートは映像では別れのシーンとその後の船旅のシーンのみで、あとは全部手紙のナレーションのみ。これがキツイ。決してよく書けてるとは言い難い(外国語映画なんだからしょうがないとしても)手紙を、俳優でもない中孝介が読むんだから、表現力にそもそも相当無理がある。キツイ。
だからここにふたりの関係を想像させる具体的な映像が欲しかった。ほんの何気ない日常のひとこまでもいいから、映像があればもっと入り込めたと思う。友子を画面に出さないという意図はいいとして、教師だけでもそういう映像はつくれたはず。
ふたつめ。現代の友子の内面描写が足りな過ぎ。
妙に感情過多でぶんむくれキャラの友子だが、あまりにもそういうシーンばかり続くので観ていてかなりキツイ。
なんでそんなにぷんすかしているのかは本人や仕事相手の台詞で説明があるのだが、台詞で説明されるだけじゃちょっと共感できないよ。ただただ神経質で短気な日本人女性を滑稽にカリカチュアライズしてるだけみたいに見える。そーゆーのって観ててあんまし気分のいいものじゃない。
みっつめ。阿嘉と友子がいつ恋に落ちたのか全然わからない。
これはホントにわからなかった。すいませんニブくって・・・。だからあの結婚式の夜のシーンはマジで仰天しました。え?え?なんでっ??みたいなー。
だからラストのコンサートのシーンも感動??するとこなの??ここは???みたいな感じで・・・ついてけませんでした・・・ギリギリ失笑はしませんでしたけど・・・無念なり。
台湾の少数民族文化や極端な地域格差を表現したかった気持ちはよくわかるし、それはそれでかまわないと思うんだけど、水蛙(應蔚民イン・ウェイミン)の恋とか、阿嘉と継父(馬如龍マー・ルーロン)の確執とか、大大(麥子マイズ)のヘンに思わせぶりな母親(林曉培シノ・リン)とか、ぶっちゃけいらなかったんじゃないかと思う。とくにラスト近くの母親と友子の会話にはかなり興醒めしましたです。思いっきりとってつけた感満点で。
この映画が台湾やアジア各国で支持される理由はなんとなくわかる。でもだからといって日本でも同じような評価が得られるかどうかは、ぐりには疑問です(去年のアジア海洋映画祭イン幕張ではグランプリなんだっけ)。
つーか、あの、日本人教師の手紙はどーしょもねーなー(溜息)とか思っちゃってる時点でダメですね。あたしゃ。なんか淋しいなあ・・・そんな風に思うの、ぐりだけ??
日本語の台詞が不自然に感じる人はけっこーいるみたいだけど、ぐりはそれよりライティングがもっと不自然だった気がする。なんちゅーか情緒もへったくれもなくってさあ・・・そーゆーとこにクオリティって出ちゃうよね・・・。
関連レビュー:
『悲情城市の人びと』 田村志津枝著