『アバウト・ラブ 関於愛』
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=htsmknm-22&o=9&p=8&l=as1&asins=B000CD1P18&fc1=000000&IS2=1<1=_blank&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>
正直な話、今日が休日出勤じゃなかったら、そして上映館が仕事場の近くじゃなかったら、たぶんこの作品映画館で観ることはなかったと思います。
というのはこのムービーアイという会社が前に手がけた『最後の恋、初めての恋』という日中合作映画がどうしても好きになれなかったから。日本映画のよくないところをわざわざ外国まで持ってってそのまま標本にしたみたいにしか見えなかった。だからこの『アバウト・ラブ 関於愛』にもまったく期待はしてませんでした。失礼な言い方だけど。
でも台北篇の易智言(イー・ツーイェン)監督の『藍色夏恋』はすごく好きだったし、上海篇の張一白(チャン・イーバイ)にも注目しているので、一応、まぁついでだし・・・という感じで観てみました。
結果としては予想通り。
東京篇、惨敗。カタイ。古い。陳腐。出来の悪い連続ドラマみたい。盛り上がりも意外性もなにもなく、ただ退屈なだけ。全然ダメ。
伊東美咲は思ったよりいい芝居してたと思うし、陳柏霖(チェン・ボーリン)も相変わらずチャーミングだ。
だがいかんせん脚本がさっぱりイケてない。東京という舞台にこだわりすぎていて、3本の短編オムニバスという時間の枠にも縛られすぎ。その割りには話が冗長でメリハリもなにもない。なんですかあのサブいモノローグは?あんなの全然いらないし。大体こんなストーリーではヤオ(陳柏霖)が外国人である必然性がまったくないではないか。必然性はないのに、彼が留学生であるという設定には無意味に囚われている。
あとコレ全編ハイビジョン撮影なのだが、東京篇に限ってそれが活かしきれていない。大島渚ならきっと「画に思想がない」といっただろう。
いちばんおもしろかったのは台北篇。
画面に台北の町は全然出てこない。出てくるのはヒロイン・アスー(范曉萱メイビス・ファン)の部屋と、海、その2箇所の間を疾走するバイクだけ。最後の1シーンだけが鉄ちゃん(加瀬亮)の部屋。
ストーリーもとてもシンプルだ。夜中に眠れなくて大きな本棚をつくったアスーだが、完成した本棚が重くて持ち上がらない。そこで日本から来た鉄ちゃんを呼び出す。鉄ちゃんはアスーにちょっと気があって、真夜中に電話なんかかかって来るとホイホイとやって来てしまう。ワインなんか買って、さりげなくめかしこんだりなんかして。
物語はこのふたりのファニーな一夜と、夜が明けて海に行き、帰るところまでの短いひとときを淡々と描いている。それでもきちんと起承転結がなめらかにかつダイナミックに流れていくし、そこにはしっかりと観客の心に訴えかけてくる力がある。脚本が秀逸なのだ。恋のときめきとせつなさ、涙のあたたかさと孤独の心許なさがとてもストレートに描かれている。そして的確でムリのない自然な演出。エンターテイメント性だってちゃんとある。
加瀬亮もいい味出してたけど、范曉萱がコケティッシュでかわいかった。むちむちしてて、なのにすらっとしてて、女の子女の子した雰囲気が嫌味じゃない。演技もいい。他の出演作も是非観てみたい。
上海篇は微妙でしたね。
致命的なのは塚本高史の演技に奥行きがない上に、撮る方にも彼に対する愛情がまったくないというところ。
ヒロイン・ユン(李小[王路]リー・シャオルー)は自宅の2階に下宿している日本人留学生の修平(塚本高史)に淡い恋心を抱くのだが、ユンの目線の先にいる修平の描き方になんの感情もこめられていないので、そのせつなさがさっぱり表現されていない。なかなか感情移入できない。
なのであのラストシーンにもなんのカタストロフも感じない。せっかく劇的なお話なのに、すごくもったいない。
ただし「中国人と日本人の恋」と「(舞台となる)街」のふたつのテーマがいちばんうまくクリアされてたのはこの上海篇だと思います。多少展開にギクシャクしたところもあるし、いささか型にはまったストーリー展開ではあるにせよ。
ところで作中ユンがちゃんとした英語を喋ってたのに驚き。中国人のふつーの女子高生が英語・・・。ほー。
しかし李小[王路]は周迅(ジョウ・シュン)そっくりやな。うりふたつです。
このオムニバスは少しずつ互いに関係性があるのだが、そこへなぜか登場するのがスペインという第三者的な国。
東京篇の美智子(伊東美咲)の元彼が留学していたのはスペイン、上海篇の修平の恋人が滞在しているのもスペイン。ユンもスペインの地理や言葉を勉強している。
これがなぜスペインでなくてはならないのかがよくわからない。台湾でも中国でも日本でもない別の国を出す必要があるとして、それをスペインに統一する必要はまるでないような気がする。本当はあるのかもしれないけど、ぐりにはわからなかった。
映像は台北篇がいちばん綺麗でした。上海篇はお金かけてるなーという印象。
全体を通していえるのは、出演者含め演出家・脚本家含め日本は中華系(特に台湾)のクリエイターにかなり負け気味な傾向がはっきり作品に出てしまっているということ。もう火を見るよりも明らかです。情けないことに。
映画界の偉い人は、なんでこうなったのかよく考えてもらいたいと思います。マジで。
それと愛に関するオムニバス映画といえば『愛の神、エロス』が日本でも今年公開されたけど、この『アバウト〜』は3本とも「愛」と呼べるなにほどのものも描くに至ってないとゆーのがキビシイ。辛うじて画面から「愛」らしきものが伝わってくるのは、台北篇くらいだろうか。他の2本は愛どころか「恋」さえ始まらずに物語が終わってしまう。
それはそれでいいのかもしれないけど、じゃあそれならタイトルに「愛について」などとつけるのはどうかと思う。
最近はアジア各国での合作が盛んだけど、やっぱり日本主導の合作はどーもイマイチでんな。それも映画界の偉い人はきちっと認識してほしいです。
今日の収穫としては上映前に11月公開の『魅惑の影絵アニメーション ロッテ・ライニガーの世界』の予告を観たこと。
こういうの実はすごく好きなんです。11月ね。観るぞ。絶対。
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正直な話、今日が休日出勤じゃなかったら、そして上映館が仕事場の近くじゃなかったら、たぶんこの作品映画館で観ることはなかったと思います。
というのはこのムービーアイという会社が前に手がけた『最後の恋、初めての恋』という日中合作映画がどうしても好きになれなかったから。日本映画のよくないところをわざわざ外国まで持ってってそのまま標本にしたみたいにしか見えなかった。だからこの『アバウト・ラブ 関於愛』にもまったく期待はしてませんでした。失礼な言い方だけど。
でも台北篇の易智言(イー・ツーイェン)監督の『藍色夏恋』はすごく好きだったし、上海篇の張一白(チャン・イーバイ)にも注目しているので、一応、まぁついでだし・・・という感じで観てみました。
結果としては予想通り。
東京篇、惨敗。カタイ。古い。陳腐。出来の悪い連続ドラマみたい。盛り上がりも意外性もなにもなく、ただ退屈なだけ。全然ダメ。
伊東美咲は思ったよりいい芝居してたと思うし、陳柏霖(チェン・ボーリン)も相変わらずチャーミングだ。
だがいかんせん脚本がさっぱりイケてない。東京という舞台にこだわりすぎていて、3本の短編オムニバスという時間の枠にも縛られすぎ。その割りには話が冗長でメリハリもなにもない。なんですかあのサブいモノローグは?あんなの全然いらないし。大体こんなストーリーではヤオ(陳柏霖)が外国人である必然性がまったくないではないか。必然性はないのに、彼が留学生であるという設定には無意味に囚われている。
あとコレ全編ハイビジョン撮影なのだが、東京篇に限ってそれが活かしきれていない。大島渚ならきっと「画に思想がない」といっただろう。
いちばんおもしろかったのは台北篇。
画面に台北の町は全然出てこない。出てくるのはヒロイン・アスー(范曉萱メイビス・ファン)の部屋と、海、その2箇所の間を疾走するバイクだけ。最後の1シーンだけが鉄ちゃん(加瀬亮)の部屋。
ストーリーもとてもシンプルだ。夜中に眠れなくて大きな本棚をつくったアスーだが、完成した本棚が重くて持ち上がらない。そこで日本から来た鉄ちゃんを呼び出す。鉄ちゃんはアスーにちょっと気があって、真夜中に電話なんかかかって来るとホイホイとやって来てしまう。ワインなんか買って、さりげなくめかしこんだりなんかして。
物語はこのふたりのファニーな一夜と、夜が明けて海に行き、帰るところまでの短いひとときを淡々と描いている。それでもきちんと起承転結がなめらかにかつダイナミックに流れていくし、そこにはしっかりと観客の心に訴えかけてくる力がある。脚本が秀逸なのだ。恋のときめきとせつなさ、涙のあたたかさと孤独の心許なさがとてもストレートに描かれている。そして的確でムリのない自然な演出。エンターテイメント性だってちゃんとある。
加瀬亮もいい味出してたけど、范曉萱がコケティッシュでかわいかった。むちむちしてて、なのにすらっとしてて、女の子女の子した雰囲気が嫌味じゃない。演技もいい。他の出演作も是非観てみたい。
上海篇は微妙でしたね。
致命的なのは塚本高史の演技に奥行きがない上に、撮る方にも彼に対する愛情がまったくないというところ。
ヒロイン・ユン(李小[王路]リー・シャオルー)は自宅の2階に下宿している日本人留学生の修平(塚本高史)に淡い恋心を抱くのだが、ユンの目線の先にいる修平の描き方になんの感情もこめられていないので、そのせつなさがさっぱり表現されていない。なかなか感情移入できない。
なのであのラストシーンにもなんのカタストロフも感じない。せっかく劇的なお話なのに、すごくもったいない。
ただし「中国人と日本人の恋」と「(舞台となる)街」のふたつのテーマがいちばんうまくクリアされてたのはこの上海篇だと思います。多少展開にギクシャクしたところもあるし、いささか型にはまったストーリー展開ではあるにせよ。
ところで作中ユンがちゃんとした英語を喋ってたのに驚き。中国人のふつーの女子高生が英語・・・。ほー。
しかし李小[王路]は周迅(ジョウ・シュン)そっくりやな。うりふたつです。
このオムニバスは少しずつ互いに関係性があるのだが、そこへなぜか登場するのがスペインという第三者的な国。
東京篇の美智子(伊東美咲)の元彼が留学していたのはスペイン、上海篇の修平の恋人が滞在しているのもスペイン。ユンもスペインの地理や言葉を勉強している。
これがなぜスペインでなくてはならないのかがよくわからない。台湾でも中国でも日本でもない別の国を出す必要があるとして、それをスペインに統一する必要はまるでないような気がする。本当はあるのかもしれないけど、ぐりにはわからなかった。
映像は台北篇がいちばん綺麗でした。上海篇はお金かけてるなーという印象。
全体を通していえるのは、出演者含め演出家・脚本家含め日本は中華系(特に台湾)のクリエイターにかなり負け気味な傾向がはっきり作品に出てしまっているということ。もう火を見るよりも明らかです。情けないことに。
映画界の偉い人は、なんでこうなったのかよく考えてもらいたいと思います。マジで。
それと愛に関するオムニバス映画といえば『愛の神、エロス』が日本でも今年公開されたけど、この『アバウト〜』は3本とも「愛」と呼べるなにほどのものも描くに至ってないとゆーのがキビシイ。辛うじて画面から「愛」らしきものが伝わってくるのは、台北篇くらいだろうか。他の2本は愛どころか「恋」さえ始まらずに物語が終わってしまう。
それはそれでいいのかもしれないけど、じゃあそれならタイトルに「愛について」などとつけるのはどうかと思う。
最近はアジア各国での合作が盛んだけど、やっぱり日本主導の合作はどーもイマイチでんな。それも映画界の偉い人はきちっと認識してほしいです。
今日の収穫としては上映前に11月公開の『魅惑の影絵アニメーション ロッテ・ライニガーの世界』の予告を観たこと。
こういうの実はすごく好きなんです。11月ね。観るぞ。絶対。