落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

トルーマン・カポーティ著『冷血』

2005年03月29日 | book
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随分前に古本屋で買ったきり放置してたんだけどやっと読了。

1959年アメリカ中西部カンザス州の田園地帯ホルカムで、ある裕福な一家が何者かに惨殺された。被害者一家はいずれも周辺地域では広く知られた好人物で4人とも他人の恨みを買うような事情を持たず、常日頃小切手を使っていた被害者宅には盗まれるようなものもなく、めぼしい遺留品も目撃者も全く出て来なかった。ところがある些細な手がかりから1ヶ月半後に呆気なく犯人─ディックとペリー─は逮捕、ふたりは裁判で有罪判決を受け6年後絞首刑に処せられた。
事件前夜から犯人の生立ちとその死までを、筆者自らの手による綿密な取材と犯人たちとの書簡のやり取りに基づいて再構成したノンフィクション小説。

正直な話、半世紀近くも前の強盗殺人なんかぐりは全然興味はない。ただトルーマン・カポーティと云う作家は大好きだし、彼自身が長い時間とかなりのエネルギーを注いだ力作と聞けば読まない訳にはいかなかった。
46年前のアメリカの田舎町。良くも悪くも平和そのもの、今は崩壊してしまったモラルと云うものが通用した時代、信仰心と家族愛が何より尊ばれた社会の姿が克明に描かれています。
それは現代社会から見ればいささか清潔過ぎてどこか息苦しい。強盗殺人犯であるディックとペリーの方がずっと分りやすい人物のようにも思える。虐待され、貧困の極限の中で自分を抑圧することでアイデンティティを支えて来たペリー、恵まれた境遇に生まれ育ちながら全くその価値を顧みることのなかったディック。と云うことはそれだけ現代が病んでいるとと云うことなのだろうか?

そんな風に簡単に話を片づけてしまうのはおそらく筆者の本意ではないのだろう。
いつの時代にも多かれ少なかれ病理と云うものは存在している。それは時代が生み出したものでもあるだろうし、人間の本質に普遍的に生き続けているものかもしれない。
だからもしかすれば、筆者がペリーに強く共感したように、冷血な犯罪者と我々一般市民との間に横たわっている境界線と呼ぶべきものは、とてもとても曖昧なものなのかもしれない。最後の審判が下される時、どちら側に立っているかは運次第なのかもしれない。

この本の中にはディックとペリー以外の殺人者も何人か登場します。彼らに共通しているのは「どうしても殺さなくてはならない」と云う義務感に基づいて殺人を犯した、と云う動機。そうしなければ自分の世界が壊れてしまう、本当は殺したくなんかないけど、どうしてもそうしなければ自分の存在が保たれないから、だから殺した─と彼らは云う。
事実は決してそんな筈はない。でも彼らは確かにそう感じていたのだ。少なくとも彼の一瞬にはその感覚を信じて凶行に及んでいる。
我々の長い人生に、そんな瞬間が絶対に訪れないと云う保証はない。もし万一、そんな瞬間に出会った時、自分の世界の方を捨てることが、私には出来るだろうか?

客席がさみしい香港映画

2005年03月27日 | movie
『香港国際警察』
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コレはホントに面白かったです。すっごく香港映画らしい香港映画。
ストーリー展開も巧みだしアクションは素晴しいし、映像にも迫力あります。
ぐりはアクション映画って大して好きじゃないし成龍(ジャッキー・チェン)と云う人にも特に興味はないんだけど、この映画は観て損はないと思った。¥1800の価値は充分です。
50を超えたジャッキーが相変わらず「永遠の青年」みたいな役だったり、謝霆鋒(ニコラス・ツェー)の役の設定が非現実的だったり、また女性キャラの顔をムダにキズつけたり、いろいろ気になると云えば気になる部分も確かになくはないけど、コレはそんな細かいことはどーだって良い映画なんです。エンターテインメントなんです。
呉彦祖(ダニエル・ウー)はすごく良い芝居してました。今日発表の金像奨、穫れるといいね。ニコラスは年を追うごとにセクシーになってってますね。みょーに色っぽかった。演技はどーだか分かんないけど。
この映画もすっごい空いてました。やっぱダメ?香港映画?みんな観てよう。

客席がさみしい香港映画

2005年03月27日 | movie
『恋の風景』
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待ちに待った日本公開・・・だったんだけど、めっちゃ空いてました(泣)。初日の初回。香港映画、もーダメなの?日本じゃ?ううう。良い映画なのにぃぃ。
ぐりはコレ既にDVDで観てるので詳しい感想はこちらで。
当り前だけどDVDとスクリーンとでは印象がかなり違いました。画質が全然違うね。当然。DVDで観るよりもコントラストがくっきりしてて色は赤みが強かったです。DVDの方が全体にソフトに見えました。
あとね、見えたくないものがスクリーンではけっこー見えてました。あえて具体的には書かないけど。
なんだかストーリーのテンポが違って見えたのは字幕が日本語だからでしょーか。今まで中国語で観てたんでかなりスッキリしましたです。だから逆にスクリーンで見てなるほどと思った箇所もあった。
やっぱ小烈(劉燁リウ・イエ)って愛すべきキャラです。ムボービっつーかどんくさいっつーか不器用っつーかひとこと多いっつーか・・・まさに田舎の純情な男の子って感じがとてもよく出ている。スクリーンで見てもウマイ。
時間があればあと1回くらいは劇場に行きたいです。

風が吹くとき

2005年03月21日 | movie
『失われた龍の系譜』
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映画の中でも狄龍(ティ・ロン)がナレーションで語っているように、これは20世紀を生きた名も無き中国人たちの物語のうちのひとつに過ぎない。
しかしそのなんと苛酷なことか。北伐政権時代、日中戦争、国共内戦、そして文化大革命。成龍(ジャッキー・チェン)の両親はふたりともが最初の伴侶を争乱と貧困の中で亡くし、子どもと生き別れざるを得なかった。それなのに子どもたちは幼い自分を置いて大陸を脱出した親をいささかたりとも恨んではいない。いつかは恨んだことがあるかもしれないとしても、最終的にはそんな感情は全く残っていない。
そのことが、彼らが生き抜いて来た時代の厳しさ、壮絶さをさらに如実に物語っている気がしました。今平和に暮せているから、生きて再会出来ただけでもいい。生んで育ててくれてありがとう。どんなに離れていても永遠に愛している。強い強い、激しく強い親子の絆。その強さの意味を、おそらく今の日本人は決して理解出来ないだろうと思う。それほど彼らの家族愛は果てしなく深い。
そして、やっぱり日本はあまりにもアジアの歴史に対して無知・無関心なんではないかと、改めて思いました。たぶん普通の日本人はこのドキュメンタリーに描かれた20世紀の中国での出来事をほとんど分かってないんじゃないかなぁ。
関係ないじゃんと云う人もいるかもしれない。でも全然関係なくないんです。ホントのところ。
この映画はアジアでは日本でしか公開されません。観ときましょう。日本人こそ。ね。

空を飛ぶ夢

2005年03月21日 | movie
『バンジージャンプする』
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※えーまたしても申し訳ないのだがネタバレを含みますのでまだご覧になってない方はお読みにならないことをオススメしますです。
いやぁ驚きました。予想と全っ然違う作品で。
なんかね、もっとハッピー?とゆーか脳天気?なお話だと思ってたのよ。男子高校生(イム・ヒョンビョン)を恋人の生まれかわりと思いこんだ変人教師(イ・ビョンホン)をめぐるラブコメ?みたいなさぁ。
だって冒頭の大学生びょんさん、めちゃめちゃダサい。もっさり!むっちり!かっぺ!って感じでさぁ。4年前の作品だからか、今の“キラースマイル”?なびょんさんじゃないワケ。まるっきり。そのダサいびょんさんがいちいちおかしい。ホントは可愛いキャラを狙った演出なんだろうけど・・・ファンでもなんでもない人間から見るとかーなりキビシーっす。
「アレ?なんか違う?」となって来たのは後半、高校生の態度が微妙に変化して来てから。最初は普通の健全そのものな少年がいつの間にかインウ(びょんさん)を意識し始め、教師が全てを失って学校を去って初めて、自分がその亡き恋人テヒ(イ・ウンジュ)の生まれかわりであることをじわじわと自覚していく。そーゆー展開とは思わなかったさ。やられた。
そしてあのショーゲキのラスト。ビックリしたー。呆気にとられちまいましたよ。
要するにこれはラブ・ファンタジーですね。ちょっと変わった死生観と運命観をラブストーリーに仕立ててみたらこーなった・・・みたいな?
高校生役のイム・ヒョンビョンの演技が意外に良くてそれも驚き。特にクライマックスは「生まれかわりっつーより取り憑かれてるんじゃ?」みたいな勢いの豹変ぶりで、圧倒されました。て云うかびょんさんも圧倒されてるみたいに見えたよ。この子が美少年でも二枚目でもないとこがまたこの作品のミソなんではないかと、実はぐりは思ってます。
ところでインウはいつテヒが死んだことを知ったんだろう?ただフラれたと思ってたら生まれかわりだなんて思いこんだりしないよねー。謎。