映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「真夜中の探偵」 有栖川有栖

2014年11月09日 | 本(ミステリ)
心弾まない・・・

真夜中の探偵 (講談社文庫)
有栖川 有栖
講談社


* * * * * * * * * *

数年前に失踪した母親の行方がつかめぬまま、
17歳の空閑純は大阪で一人暮らしをはじめる。
探偵行為の科で逮捕された父親との面会が許されない純だったが、
ある人物と出会ったことがきっかけとなり
探偵になる決意を固める。
ある人物の別荘で、木箱に入った元探偵の溺死体が発見され、
純は「水の棺」の謎に挑む。


* * * * * * * * * *

「探偵ソラ」シリーズ2作目です。
大阪で一人暮らしを始めた17歳、空閑(そらしず)純。
今回はまだ行方不明の母を探す行動には出ず、
気持ちは焦りながらも手がかりを探しています。
今回中心になるのは、そんな時に彼女が遭遇した、
ある"探偵"の溺死の謎。
大きな棺のような木の箱のなかで溺死させられた男。
これが全く物理的なトリックを解くだけなので、
私などにはちょっと物足りない・・・。
まあ、どうにかしたんでしょうねえ・・・と、
自分で考えてみる気には全くならないので。


水がもれないように木の箱を作るのは結構大変なんですよね。
よくダッシュ村でTOKIOの皆さんが苦労していますが、
特殊な継ぎ合わせの知識が必要です。
まあ、それくらいは何か調べれば分かりますか。
でも、よほど犯人は器用で大工仕事好きだったんでしょうね!


もっとも、探偵行為が禁止されているこの世界で、
ソラが推理を組み立てていくこと自体にリスクがある
・・・という事情は汲みとらねばなりませんが。


また、冒頭と末尾に、
なんと行方不明のソラのお母さんの現在の状況が描かれている!!
そういうところで、次作につなぐ期待感を膨らませます。
で、結局いかにも「ツナギ」の巻になってしまった感のある本作なのは残念でした。
ストーリーの本流を期待します。


アメリカン・ニューシネマを意識したという本作、
そのためかトーンがいかにも暗いのです。
せっかく若い女の子が主人公なのだから、
もう少しピチピチした感じがほしい。
今どき、田舎の女の子だって
お化粧くらいちゃんとできますって。
有栖と火村准教授のように、
時にはとぼけた会話で私達を和ます・・・
そういうところがないと、なんだか読み進むのも気が乗りません。
暗いストーリーならそれでもよし。
でもやっぱりユーモアは必要なのじゃないかなあ・・・と思う次第です。

「真夜中の探偵」有栖川有栖 講談社文庫
満足度★★☆☆☆

小野寺の弟・小野寺の姉

2014年11月08日 | 映画(あ行)
“ありがとう”の香り



* * * * * * * * * *

両親を早くに亡くし、二人で暮らす、33歳弟・進(向井理)、40歳姉・より子(片桐はいり)。
この2人の物語です。
「間宮兄弟」を連想しますが、
イタい男二人よりは、さすがに姉と弟のほうが花がある・・・?
いやいや、いくらダサく決めようとしても、
向井理さんのカッコよさは隠しようがありませんが。
(この姉弟のご両親、きっとごっつい顔のお父さんと、
たおやかで優しい顔をしたお母さんなんだろうなあ・・・)



引っ込み思案で奥手な弟・進は過去の失恋の痛手から抜け出せない様子。
それを案じた姉・より子は、
なんとか彼に新しい恋をはじめさせようとします。
一方、より子自身も自分に自信がなく、
片思いの相手に思いを告げることすらも諦めている・・・。
互いに人生に不器用。
そういうところはよく似ています。
ある時、一通の手紙の誤配から、物語は動き始めます。



本作は西田征史さん脚本・演出で2013年に上演された舞台の映画化。
西田氏初監督の映画作品。
主演二人は本作と同じだそうで、う~ん、ぜひ見たかったなあ・・・。
北海道なんかに住んでいると、そういうものからは遠くて・・・(T_T)



本作、ストーリーとしてはありがちな感じなのですが、
仕組まれたアイテム・エピソードが心憎く涙腺を刺激します。

進の失恋の理由。

進の“畳の裏貯金”の意味。

より子が自信喪失している理由。

より子が思わず泣き崩れてしまうきっかけになる“花”。

より子が泣いているところへ帰宅した進の行動。

中学時代の思い出話に必ず出てくる、とぼけた教師の登場。

こういったエピソードの配置が絶妙。
実にうまくツボをついていて、すっかりやられました。
調香師としての進のテーマが「ありがとうの香り」を探すことなのですが、
ラストでその答えが出るところもオシャレです。
ありがとうの香り。
それは日常の生活の中にいつでもそこにあるもの・・・。
あー、私もこんな弟というか、息子でもいいから欲しいなあ・・・



「小野寺の弟・小野寺の姉」
2014年/日本/114分
監督・原作・脚本:西田征史
出演:向井理、片桐はいり、山本美月、及川光博、ムロツヨシ
おかしみ&お涙度★★★★★
満足度★★★★★

ヒラリー・スワンク ライフ

2014年11月07日 | 映画(は行)
母は強し

* * * * * * * * * *

「ライフ」で映画を検索すると無数に出てきてしまうほど多くあるので、
苦肉の策、「ヒラリー・スワンク ライフ」と命題したようです。
原題は「MARY AND MARTHA」登場人物の名前そのものずばり。
それならば、知名度のある「ヒラリー・スワンク」の名を拝借したほうが
確かにインパクトはあります。
しかし本作、実はそんな小手先の策など必要ない、
感動の物語でした・・・! 
日本で公開がなかったというのは残念。


例によって私は、全く予備知識なく本作を見始めまして、
その予想外の展開に驚いてしまいました。
マリーは息子が学校でいじめにあっていると知り、
思い切った対策に出ます。
息子と二人、アフリカに旅立ち、新しく冒険に満ちた生活をしようと考えたのです。
そのかいあって、家にこもり暗い顔でゲームばかりしていた息子が
次第に生気を取り戻し、快活になっていく。
しかしそんな矢先、息子は蚊の媒介するマラリアに感染し・・・。


全く、言葉をなくしてしまううような展開・・・。
さてその後、マリーは、マーサという女性と出会います。
マーサの息子は快活な好青年で、モザンビークの孤児院で教師をするためやってきていたのです。
こちらの青年の様子もマリー側と交互に描写されていたのですが、
なんと、こちらも驚きの展開・・・。


衝撃。
…そして悲しみ。
涙・・・涙・・・


しかし、ここまでが本作のいわば前振り。
本当のストーリーはここから始まるのです。
アフリカなど各地ではマラリアで毎年50万人の命が奪われているといいます。
蚊帳があれば・・・
そしてもっと多くの医師や看護師がいて、
病院の施設があれば・・・。
二人は、この多くの子どもたちの命が失われていく現状を
何とかしたいと、支援を求め、国を動かそうとしますが・・・。


意思の強い母親役にヒラリー・スワンクがまた、ピッタリですよね。
お年をめしても勇敢で行動力のあるマーサ(ブレンダ・ブレシン)もステキでした。
双方の夫達は妻の思いについていけず、
いらだち、オロオロし、引きとめようとさえする。
子を思う母は強し。
まさに、そういう物語。
心揺さぶられる、感動作です。

ヒラリースワンク ライフ [DVD]
ヒラリー・スワンク,ブレンダ・ブレシン,サム・クラフリン,フランク・グリロ,ジェームズ・ウッズ
アメイジングD.C.


「ヒラリー・スワンク ライフ」
2013年/イギリス・アメリカ/93分
監督:フィリップ・ノイス
出演:ヒラリー・スワンク、ブレンダ・ブレシン、サム・クラフリン、フランク・グリロ、ジェームズ・ウッズ

悲しさ★★★★★
母の強さ★★★★☆
満足度★★★★☆

「小説を、映画を、鉄道が走る」 川本三郎

2014年11月05日 | 本(エッセイ)
日本近代の歴史をたどる旅

小説を、映画を、鉄道が走る (集英社文庫)
川本 三郎
集英社


* * * * * * * * * *

物語はいつも鉄道が運んできた―。
松本清張の『点と線』、
水上勉の『飢餓海峡』、
小津安二郎の『東京物語』など、
日本の小説史、映画史に燦然と輝く作品の中で、度々描かれてきた鉄道のある風景。
あの場面には一体どんなドラマが潜んでいたのか。
鉄道が発達した日本の情勢や時代背景をもとに、
著者が登場人物の心情を紐解いてゆく。
旅と物語が出会う至福のエッセイ集。
第37回交通図書賞受賞作。


* * * * * * * * * *

文芸・映画評論家、川本三郎氏は
大の鉄道好きとしても有名です。
以前にもこのブログでご紹介したことがあるはず。
それなので、この本を書店で目にした時も、迷いなく「買い!」でした。


著者がこれまでに読んだり観たりした
本や映画の中に出てくる「鉄道」を紹介しています。
あとがきにもありますが、著者はいわゆる「鉄ちゃん」と呼ばれる「鉄道マニア」ではなく、
とにかく鉄道の旅が無性に好きなのだといいます。
つまりは「乗り鉄」というやつ。
車窓の風景、駅の佇まい、それらが語りかけてくる歴史や人々の営み。
確かに、車のドライブでは味わえないものがたくさんありますよね。
それにしてもさすがにプロ。
ともかく読んでいる本や見ている映画の種類や数が半端ではない。
本作に取り上げられている作品の著者は、
松本清張、鮎川哲也、林芙美子、宮本輝、水上勉・・・
まあ、このへんは納得ですよね。
でも私でもすごく馴染みのある
奥田英朗、島田荘司、有栖川有栖に恩田陸まで取り上げられているのが嬉しい。
そしてまた、とどのつまりが吉田秋生「海街diary」。
これにはもう感涙です。
そうか、川本三郎氏も「海街diary」を読むのか
・・・と嬉しくなってしまいました。


古い映画に、今となっては非常にレアな昔の列車や
今はとうにない路線、駅が映っていたりするそうで、
そういう楽しみ方もあるのですね。
著者は本や映画に出てきた路線や駅は気になって
どうしても自分で見たくて旅することも多いようです。


本作は鉄道による観光めぐりというより、
むしろ日本の歴史を語っています。
明治に初めて鉄道が敷かれた時のことから
数々の戦争を経て昭和20年の終戦。
石炭産業の発展で多くの鉄道が施設され高度経済成長。
東京への一極集中化が進む。
地方は過疎化し、今度は次々に地方の路線が廃線となっていく。
今残っている路線でも、その駅前がすっかり寂れているところがほとんど。
戦争のこと、集団就職のこと・・・。
鉄道の歴史はまた人々の暮らしの歴史でもあるわけです。
こういうことが語られているので、
非常に読み応えがある素敵な本です。


「小説を、映画を、鉄道が走る」川本三郎 集英社文庫
満足度★★★★★

マダム・マロリーと魔法のスパイス

2014年11月04日 | 映画(ま行)
美味しいものに国境はない



* * * * * * * * * *

南フランスの山あいの小さな町。
老舗フレンチレストランを経営するマダム・マロリー(ヘレン・ミレン)。
ミシュランの星1つをずっと維持しています。
それだけでも大変な努力ですが、彼女にはそれなりのプライドもあります。
さて、その店のちょうど真向かいに、
怪しげなインド人一家が越してきて、インド料理の店を開くという。
騒々しいし、店もけばけばしい。
自分の店の品位まで下がるようで、マダム・マロリーはオカンムリ。
あろうことか、相手の店の初日メニューの食材を買い占めてしまうなど
嫌がらせまでしてしまう。
・・・と、これがマダム・マロリー側の視点。



ところが本作は、実はこのインド人一家の次男・ハッサンの視点で描かれています。
家族で開いていたムンバイのレストランが火災で消失。
その時に一家を支えていた母親を亡くしています。
一家はロンドンに移り住んだのですが、
あまりいい食材と巡りあえず、ヨーロッパに渡る。
各地を転々として、南仏のこの地を通りがかった時に、
運命に導かれるように、ポンコツ車がついに故障。
「フランスでは誰もインド料理なんか食べない」という皆の静止を振り切って、
父親がここで店を開くと言い張る。
なかなか劇的な展開であります。
双方には双方の事情というものがある。
しばらく、この2店は敵対状況が続くのですが・・・。


ハッサンは、天才的な料理のセンスを持っています。
だから無論インド料理はお手の物ですが、
フランス料理にも興味が出てきます。
マダム・マロリーが彼の天才的な料理の腕を知ることから、
双方の歩み寄りが始まるのです。



片や高級フレンチの店。
そしてもう片やリーズナブルなインド料理。
悪くないですよね。
人は時と場合でそれを使い分けるのだし、
美味しいものに国境なんかない。
…映像的にも、双方あまりにも美味しそうで、これを空腹で見ると辛いです!


ハッサンはマダムの店のまだ駆け出しの料理人・マルグリットと親しくなるのですが、
ハッサンが腕を上げ店の中心となっていくことで
その関係が微妙になっていく。
簡単に「おめでとう!」とはならないところが、なんだかリアル。
それこそが、マルグリットのプライドでもあります。



料理は食べる人との距離も大切なんだなあ・・・と思います。
地元で取れた新鮮な野菜で、親しい人達に囲まれて、
その人達を喜ばせたいと思いながら料理をする。
そしてお母さんから受け継いだ「魔法のスパイス」さえあれば、
美味しくないわけがない!!
ラッセ・ハルストレム監督らしく、“家族”の大切さを描く一作。



ハッサンの作るスパイシーなオムレツ、どんなふうなのか。
食べてみたいなあ・・・。


なんと本作は制作にスティーブン・スピルバーグも加わっています!


「マダム・マロリーと魔法のスパイス」
2014年/アメリカ/122分
監督:ラッセ・ハルストレム
出演:ヘレン・ミレン、オム・プリ、マニッシュ・ダヤル、シャルロット・ルボン、ミシェル・ブラン

食欲をそそる度★★★★★
満足度★★★★☆

雨よりせつなく

2014年11月03日 | 西島秀俊
確かに切ない

* * * * * * * * * *

西島作品、まだ、見ていないのがちゃんとありましたね~。
 西島秀俊さんの見せ所たっぷり。
はい。・・・まあ、映画の出来は別にして・・・ね。
おっと、先にそれをいうのか・・・。


おほん、主役となるのは27歳、広告代理店マーケティング部に勤務する綾美(田波涼子)。
 まあ、仕事はやりがいがあって面白い。
 結婚よりも仕事に生きようかなあ・・・などと思い始めてもいる。
 そんな時、同じ会社に勤める倉沢(西島秀俊)と親しくなり、
 付き合い始めるのだけれど・・・。
彼には学生時代に付き合っていた彼女がいたのだけれど、
 一緒のドライブで彼女を事故死させてしまったという重く悲しい事情を抱えていたのでした・・・。
綾美は人の痛みがわかりすぎるというか・・・
 決して無理やり倉沢の心に割り込んでいこうとはしない。
そこがいいところではあるのだけれど、やっぱりじれったい部分でもあるね・・・


二人が少しずつ打ち解けていくシーンは好きだなあ・・・。
この会社のオフィスは、ちょっと古いレトロなビルの中にあるんだね。
雰囲気あります!!
で、カップラーメンの自販機のところで、いつも二人は合う。
ちょうど綾美のところで、割り箸が切れてなくなっちゃうんだけど、
 倉沢が自分の割り箸の一本を差し出すんだね。
私は一本で食べろっていうのかい?
 って、一瞬思っちゃったです・・・。
 頭固いな。
一本を半分に折って、かなり短いけどちゃんとお箸として使ったわけね。
 二人とも。
そんなことがあって、なんとなく二人、意識し始めるわけ。
そりゃもう、西島秀俊さんとお箸を分けあってカップ麺を一緒に食べるなんてことしたらさ、
 ぽ~っとならないわけがないじゃない!!


けどねえ・・・
 倉沢は、ホントにそんなに学生時代の彼女を愛していたのかな?
その時はそうだったと思うけれど、10年もたった今となれば
 それはもう単なる罪悪感のようにも思える。
 そのまま付き合っていればとっくに終わった恋だったかもしれない・・・。
けれど、死によって永久に終わることのできない恋になってしまったんだなあ・・・。
こんな時には強引に割り込むのもありだと思うけどなあ・・・。
いや、これは綾美のせいというより、
 やっぱり、一歩を踏み出せない倉沢のせいなんじゃないか。
あの日倉沢は、これまで一本ずつ買っていた亡くなった彼女への花を
 束で買ったでしょう?
 私は彼が、これを最後にしようと思ったからだと思ったんだよね。
だけど綾美は、彼が彼女のことを今も深く愛していて、忘れられないのだと解釈した。
 どっちだったんだろうね?
最後にしようと思っていたんなら、いくらなんでも綾美にそう説明したんじゃないかな?
いや、そこがこの男の煮え切らないところでさ。
 そういうふうに誤解されたんなら、それでもいいや、って思っちゃたようでもある。
う~ん。・・・どっちでもいいけど、
 そこまでリアリティを追求するような作品でもなし。
 こういうのはやっぱり最後の最後、彼の方から綾美を呼び止めて欲しかったと思うわけ。
 いいじゃないの。安直なラストだって。
だよね~。
自分で踏み出しもせずに、ただ切ながってるのはダメだよ。
まあでも、題名が「雨よりせつなく」だからね・・・

雨よりせつなく [DVD]
吉元由美,飯田健三郎,森下佳子
バンダイビジュアル


「雨よりせつなく」
2004年/日本/89分
監督:当摩寿史
原作:吉元由美「いつもなら泣かないのに」
出演:田波涼子、西島秀俊、黒坂真美、深浦加奈子
西島秀俊の魅力度★★★★☆
エピソード性★★★☆☆
満足度★★☆☆☆

レイルウェイ 運命の旅路

2014年11月01日 | 映画(ら行)
トラウマを乗り越えるための旅



* * * * * * * * * *

実話を元にした作品。
日本人としてはちょっとキツイのですが・・・。
エリック・ローマクス(コリン・ファース)は、
英国兵として出兵していた二次大戦時、
日本軍の捕虜となり、タイとビルマを結ぶ鉄道の建設現場で
過酷な労働や拷問に苦しめられます。
戦争から50年を経て、平穏な生活を送る彼は、
しかし未だにその頃の暗い記憶に苦しめられているのです。
そんな時、日本軍の通訳であった永瀬(真田広之)が、
戦争体験を伝えるために今もタイに暮らしていることを知り、
自らの過去と対峙するため、エリックはタイへ向かう。
そしていよいよ、エリックと永瀬が再会するのですが・・・



連合軍捕虜が日本軍に強要され、鉄路を築く話は
映画「戦場にかける橋」で有名ですが、
実際のところはあんな生ぬるいものではなかったといいます。
あの時、日本軍が中国や東南アジアで何をしたのか・・・。
あまり考えたくはないですが、一度は知っておくべきでしょう。
ただこれは戦況が入れ替われば、
簡単に加害者と被害者が入れ替わることでもあります。
戦争という名の狂気。
…それをこそ、私達は憎むべきなのでしょう。



先日見た「リスボンに誘われて」という映画の中でも、
「加害者側も被害者側も過去を語りたがらない」
という言葉が出てきました。
戦争体験などのあまりにもつらい過去は、
家族や愛する人にさえも告げられないものなのですね。
それは加害者側も同じ。
嵐のようなその時が去った後には、
個人の良心がおのれを苛み続けるもののようです。
自分は悪くない。
上官の命令に従っただけ・・・
そのように自分に言い聞かせながら。
けれど、自分が行った行為の意味を、自分だけはちゃんと知っている。
忘れようにも忘れることができない・・・。
こちらは自分の手を汚したことなので、
なおさら人には告げられないですね。
だからこれもまた、苦しい。



永瀬が繁栄の日本を離れてこんなところに暮らしているのにも、
そんな背景があり・・・。
真田広之さんに「武士」を感じてしまいました。
いや、さすが。


双方がトラウマを乗り越えるには、
互いのトラウマをもっともよく理解してくれる相手が必要だった、
ということかもしれません。
そしてまた、エリックを苦しめ続けた「あの部屋」の記憶。
あれも実際にその場へ行って、中に足を踏み入れることでしか
解決できなかっただろうと思えるのですね。
人の心の不思議さも感じさせる作品でした。



ところで、若き日のエリックは、ジェレミー・アーバイン。
写真がないじゃないですか。
う~ん、残念。
ステキなのに~。

レイルウェイ 運命の旅路 [DVD]
コリン・ファース,ニコール・キッドマン,真田広之,ステラン・スカルスガルド,ジェレミー・アーヴァイン
KADOKAWA / 角川書店


レイルウェイ 運命の旅路
2013年/オーストラリア・イギリス/116分
監督:ジョナサン・テプリツキー
出演:コリン・ファース、ニコール・キッドマン、ステラン・スカルスガルド、ジェレミー・アーバイン

歴史発掘度★★★★☆
満足度★★★★☆