映画と本の『たんぽぽ館』

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「無双の花」 葉室麟

2014年11月17日 | 本(その他)
決して“裏切らない”ことを胸に

無双の花 (文春文庫)
葉室 麟
文藝春秋


* * * * * * * * * *

島津勢の猛攻に耐え、駆けつけた秀吉に
「その剛勇鎮西一」と誉め称えられた立花宗茂は、
九州探題大友家の元家臣であったが、
秀吉によって筑後柳川十三万石の大名に取り立てられた。
関ケ原の戦いで西軍に加担した宗茂は浪人となったが、
十数年後領地に戻れた唯一人の武将となった。
その半生を描く話題作。


立花宗茂・・・イマイチマイナーな人物で、
この本、買ってしばらくそのままになっていたのですが、
このたび読んでみて、予想に反し、ぐぐっとのめり込みました。
というのも、ちょうど今、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」でやっているあたり。
まさしく、タイムリーヒットです。
九州の大名ですから、当然黒田官兵衛も出てきますし、
嬉しいのは、真田幸村も登場するのであります!!


さて、そもそも立花宗茂の人物像とは・・・
本巻の解説、植野かおり氏によると、こうです。

豊後大友市の家臣高橋紹運の長男として1567年に生まれる。
15歳で大友氏重臣、戸次道雪の娘千代の婿養子となり、
立花山城主となる。
秀吉の九州平定の戦功により柳川の大名に大抜擢されるが
関ヶ原で西軍に加担したため、改易、浪人の日々を送る。
が、20年後に旧領柳川の大名に奇蹟の復活をとげる



関ヶ原で西軍に加担したということで、
今にも加藤清正、黒田官兵衛の軍が攻め寄せてくるのではないか・・・、
そういうところから物語は始まります。
敗軍の将ということで、そのまま殺されてもおかしくはなかった。
が、とりあえずは命は助かったものの、領地を失い浪人生活。
この落ちぶれた男の物語を、どう紡ぐのか。
そこが葉室麟氏の腕の見せどころというわけです。


宗茂は立花家の男として「決して裏切らない」ことを誓いとしています。
石田三成に一度加担してしまったことは過ちではあったけれど、
その後、家康側に付くとして、領地を願い出ました。
そんなところで今度は大阪の陣となるわけですが、
以前の勇壮な宗茂の活躍を知るものから、
秀頼側の味方になるよう誘われたりもするのです。
特に真田幸村などは好人物として描かれていて、
宗茂も彼には一目置いています。
しかし、それはそれ。
一度家康側に付くとした以上、裏切ることはできないと、
初心を貫くわけです。


結果的には歴史が証明していますが、
その判断は正しかったという事になります・・・。
再び元の領地の大名に返り咲くなどというのは、
実際奇跡に近く、感動的。
こんな話はおそらく地元の方ならだれでも知っていることなのでしょうけれど、
何も知らなかった私には、驚きの物語でした。


また奥方・千代との関係もなかなか良いのですよ。
千代さんは気が強くて勇壮で、思ったことをズバズバ言う。
だから宗茂はちょっと苦手と思っていたのです。
でも、実は彼と同じ方向を向いていて、最も自分を理解してくれていると知る。
魂の繋がっている男女の姿は美しい。


NHKの大河ドラマにできそうな話でした・・・。

「無双の花」葉室麟 文春文庫
満足度★★★★☆