映画と本の『たんぽぽ館』

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「異国のおじさんを伴う」 森絵都

2014年11月25日 | 本(その他)
予測不能、森絵都ストーリーの「道の向こう」

異国のおじさんを伴う (文春文庫 も 20-7)
森 絵都
文藝春秋


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思わぬ幸せも、不意の落とし穴もこの道の先に待っている。
どこから読んでも、何度でも、豊かに広がる10の物語。
誰もが迎える、人生の特別な一瞬を、鮮やかにとらえる森絵都ワールド。


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森絵都さんの短編は大好きです。
題材も、展開の仕方も、そしてオチの部分も、
他にはないひらめきが感じられ、どれも鮮烈です。
本巻も、また、然り。


冒頭「藤巻さんの道」
『道の向こう』という写真集が登場します。
ベルンハルト・M・シュミッツというドイツ人カメラマンによるこの写真集は、
すべてが「道」の写真ばかりなのですが、実に様々。
山の道、みどりの中の道。
花畑の道。荒野の道。
「僕」は、人がどの道を好きかを聞くのを楽しみにしています。
それを聞くとその人の人生観がわかるような気がするので。
それで、ある日、とても優秀な職場の同僚、藤巻さんに訪ねてみた。
「どの道が一番好き?」
彼女が選んだのは、意外にも荒野の中の、寂しくすさんだ道。
なぜこんな道を彼女は選んだのか。
彼女の中のいったい何がこの道を選ばせるのか。
全く予想もつかない答えがありました。
う~む、思わず唸ってしまいます。
実は、私、この写真集を持っていまして、本当に大好きなんですよ!!
人を何処かへ導くための道。
どこかで見たことがあるような、いつか歩いてみたいような・・・。
本作を読んで、久しぶりに引っ張りだしてみましたが、やはり、いい。
私の一番のお気に入りは? 
さて、いくつかはあるけれどどれが一番かは、もう少し考えてみよう。
とにかく本作、そんなわけで
なんだかとても親しみが持ててお気に入りです。

道のむこう
ベルンハルト・M. シュミッド,Bernhard M. Schmid,アイディ
ピエブックス



「ぴろり」
一人旅の「私」に、何故かある車の運転手が話しかける。
「もしよかったら、一緒にドライブでもいかがですか」
・・・ナンパの話?と思いきや、
これまた実に意外な展開。
というかネタバレしたくないので詳しくは書きませんが、
森絵都さんもこういう話を書くんだ・・・と思う次第。


「桂川里香子、危機一髪」
実にラストが爽快!!


表題作「異国のおじさんを伴う」
題名だけでは、意味がよくわかりませんね。
異国のおじさんというのは実は"ひげ人形"で・・・、
というとますますわからなくなる。
オーストリアの民芸品に"ひげ人形"というのがあるのです。
「私」は"ひげ人形愛好会"から招待を受け、オーストリアのリンツを訪れる。
そこで待っていたのは・・・
ラッキーなのか、アンラッキーなのか。
しかし、彼女は「何か」を取り戻すのですね。
印象に残るストーリーです。
その巨大なひげ人形を観てみたい・・・。


「異国のおじさんを伴う」 森絵都 文春文庫
満足度★★★★★