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「太陽のパスタ、豆のスープ」宮下奈都

2017年10月11日 | 本(その他)
生きる指針を見つめ直す

太陽のパスタ、豆のスープ (集英社文庫)
宮下 奈都
集英社


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結婚式直前に突然婚約を解消されてしまった明日羽。
失意のどん底にいる彼女に、叔母のロッカさんが提案したのは
"ドリフターズ(やりたいこと)・リスト"の作成だった。
自分はこれまで悔いなく過ごしてきたか。
相手の意見やその場の空気に流されていなかっただろうか。
自分の心を見つめ直すことで明日羽は少しずつ成長してゆく。
自らの気持ちに正直に生きたいと願う全ての人々におくる感動の物語。


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太陽のパスタ、豆のスープ、なんだか題名を見ただけで元気が出そうです。
ある女子の成長物語。


まず、初っ端から主人公・明日羽(あすわ)が婚約者に結婚を解消されてしまいます。
式の日取りも決まっていて、勤め先にも話をしてあったのに・・・。
ひたすら落ち込む彼女が、
これまでただ流されるままに行きてきたことに気づき、
自身の足でしっかり歩み始めるまでを描きます。


そこで登場するのが"ドリフターズ・リスト"、直訳すれば漂流者のリスト。
指針もなくただ流される自分の
進むべき方向を指し示すためのリストということです。
よく、死ぬ前のやりたいことリストというのはありますが、
まあ、そこまで死が差し迫っているのでなければ、
今やりたいことを書き出してみるというのもいいでしょう。
小さなことでも抽象的なことでも、ほとんど夢想のようなことでも、
まずは書き出してみる。
次第に、すぐにできること、本当はどうでもいいことが見極められるようになっていく。
そして本当に今自分がやりたいこと、やるべきこと
・・・だんだんそれが見えてきますね。


本作、結局どうして婚約者が明日羽を見限ってしまったのか、
理由は書かれていませんが、
彼にしても生き生きと自分の考えを持って行動しようとしない明日羽に
チョッピリ失望したのかもしれない。
ただおとなしく家事と育児だけしてくれればいい・・・
なんて男性も中にはいるかもしれませんけどね・・・。


しかし作中にもありますが、
それは本当は「できないことリスト」になってしまう危険も・・・。


いやいや、例えば仕事の忙しい最中、
私はよく「やるべきことリスト」を作ってみたものです。
できることから片付ける。
仕事が山のようにあるように思えても、
整理すれば意外とそれほどでもなかったりします。
自分の心の中のもやもやを書き出してみるというのは、
効果的のような気がします。


・・・で、本作のように人生これからの若いお嬢さんでなくても、
仕事をリタイアして実は今後の指針に途方にくれている私も、
リストでも書き出してみようかしらね~
・・・なんて。


<図書館蔵書にて>(単行本)
「太陽のパスタ、豆のスープ」宮下奈都 集英社
満足度★★★☆☆


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