映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「アラミスと呼ばれた女」宇江佐真理

2017年01月31日 | 本(その他)
開陽丸にいた、男装の通詞

アラミスと呼ばれた女 (講談社文庫)
宇江佐 真理
講談社


* * * * * * * * * *

安政三年、肥前長崎。
出島で働く父から英語や仏語を習う十歳のお柳。
「うち、お父ちゃんのように通詞になりたかとよ」。
女人禁制の職に憧れる幼いお柳の運命は、
釜次郎、のちの榎本武揚との出会いによって大きく変わっていく。
攘夷運動、大政奉還から戊辰戦争へ。
激動の時代に消えた一人の「男装」の通詞。


* * * * * * * * * *

宇江佐真理さん、久しぶりです。
この本はかなり前から買ってあったのですが、
すっかり「髪結い」シリーズにハマって、読み損ねたままになっていました。
しかし本作、もっと早くに読むべきでしたね。
幕末から大政奉還、戊辰戦争・・・激動の時代を
女性ながら通訳として榎本武揚のために尽くした・・・という、
まるでNHKの大河ドラマになりそうな物語だったのです。
しかも、概ねはフィクションではありながら、実際にいたらしいのです。
アラミスと呼ばれるフランス語に長けた女性が。
う~ん、興味が掻き立てられます。


アラミスというのは、「三銃士」の物語の中で、
その三銃士の一人の名前ですね。
麗しく、女性的ということのようです。
男装をしていたお柳が「女性的」なので、
フランス人たちは彼女をそう呼んだらしいです。
しかし、女性なので、表向きにはそういう者がいたという記録はなく、
かろうじて、この時のフランス人のスケッチに留められているのみ。
そこから想像をたくましくしてこのような物語が書けるというのは、さすがです。


そもそも本作、長崎から物語は始まりますが、
お柳は、後に榎本武揚に従い、開陽丸に乗って蝦夷地まで来るのですよ。
開陽丸は、復元したものが江差にありまして、
私も、中の展示を見たことがあります。
榎本武揚ですから、もちろん函館の五稜郭にも行きます。
函館在住だった宇江佐真理さんならではの題材であるわけです。
だから、私も非常に親しみがわきました。
しかし開陽丸にフランス軍人が乗っていたなんて、私、知りませんでした。
(だから、開陽丸の展示をちゃんと見れば、わかっていたはずなんですけどね
・・・情けない)
彼らは、国の軍隊を抜けてまで、幕府軍についたのです。
それもすごいなあ・・・。

予想以上に、胸を打つ、歴史と絡んだ女性の一代記。
いやほんと、しつこいですがこれ、大河ドラマで見たいです。

「アラミスと呼ばれた女」宇江佐真理 講談社文庫
満足度★★★★★


最新の画像もっと見る

コメントを投稿