映画と本の『たんぽぽ館』

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止められるか、俺たちを

2019年08月27日 | 映画(た行)

アングラ文化の中で生きる若者たち

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2012年に逝去した若松孝二監督を、
若松プロ出身白石和彌監督が描いた作品。



・・・と言っても私自身、若松孝二監督をよく知りません。
1960~70年代、若松孝二監督の作るピンク映画が
若者たちを熱狂させ、時代の先端をゆくものとして脚光を浴びたのですね。
監督は元ヤクザの経験もあり、ド素人の立場から映画と関わるようになって、
性と暴力をテーマとして反権威・反権力を歌う。
当時の学生運動などの尖った時代背景の中で、
アングラ文化として成長していったもの。



そのころ私自身はまだ学生未満の年齢でしたので、
若松監督との接点がなかったのも無理はありません。
調べてみたら、若松監督作品で私が見ているのは「キャタピラー」のみ。
確かに痛烈な作品ではありました。


さて、余計なことを長々と書いてしまいました。
作品紹介。


本作は実際には若松監督本人を正面から描いた作品ではありません。
若松プロ、若松監督門下の若者たちの青春群像劇。
中でも、いきなりプロダクションに入って助監督を務める女性、
吉積めぐみ(門脇麦)を描いています。
当時女性で助監督などというのは珍しかったと思うのですが、
意外とセクハラめいたシーンはありません。
仕事をすすめる上で男も女もない。
チームで仕事をすすめる中で役に立てば良い、という感覚がいっそ潔いです。



せっかく様々な技術を得ながらもやめていく先輩たち。
自分は本当に映画が作りたいのか。
そんな力が自分にあるのか。
逡巡する彼女の姿こそは、現在のどんな仕事につく人にも共通するものですね。
しかしそのうち若松プロは政治活動に熱心な若者たちが多く出入りするようになって、
何かが違うと感じるめぐみ。
そしてまた、そこまでは問題なかったのに、
ついに女であるからこその障害が浮上。

彼女は自分の生き方に真摯過ぎたのかもしれません。
若松プロに実際に2年助監督を務め、亡くなった女性がいたそうです。
そこから生まれた物語は、時代を超えて若者の生々しい心を描き出します。

井浦新さん演じる若松監督。
そもそも若松監督を知らない私にはわかりようもありませんが、
若松監督作品にいくつか出演している井浦新さんなので、
知る人が見ればきっと「そっくり!!」と見える演技だったのでしょうね。
常なる井浦さんとはかなり雰囲気も違いましたし。

止められるか、俺たちを [DVD]
門脇麦,井浦新,満島真之介,渋川清彦,音尾琢真
Happinet

<WOWOW視聴にて>
「止められるか、俺たちを」
2018年/日本/119分
監督:白石和彌
出演:門脇麦、井浦新、山本こうじ、満島真之介、渋川清彦

時代性★★★★☆
満足度★★★.5



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