映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「残り者」朝井まかて

2020年04月06日 | 本(その他)

プロフェッショナルの矜持

 

 

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時代は幕末、徳川家に江戸城の明け渡しが命じられる。
官軍の襲来を恐れ、女中たちが我先にと脱出を試みるなか、
大奥にとどまった「残り者」がいた。
彼女らはなにを目論んでいるのか。
それぞれ胸のうちを明かした五人が起こした思いがけない行動とは―。
激動の世を生きぬいた女たちの矜持が胸を打つ傑作時代小説。

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時は幕末。
江戸城が官軍に明け渡される前夜の出来事を描きます。
それも、大奥で務めていた5人の女たちの物語。


大奥と言えば将軍の正室と側室のドロドロの抗争劇・・・などを連想してしまいますが、
実のところ大奥にいたのはその下で働く多くの女たち。
例えば本作で登場するのは
呉服之間で着物を仕立てる「りつ」と「もみぢ」。
御前所で調理をする「お蛸」。
御三之間の女中役をする「ちか」。
御中臈として大奥を取り仕切る「ふき」。
他にも実に様々な仕事・役割を受け持つ者たちがいるのです。
しかも代々の将軍の奥方ごとに・・・。
ここでは天璋院(篤姫)に仕える者と、静寛院(和宮)に仕える者たちとなっています。


彼女らは、江戸城を明け渡すに当たり、早々に官軍が乗り込んでくる恐れがあるため
一刻も早くこの場から逃れるようにと言い渡されていたのですが、
なぜか居残ってしまっていたのです。
これまで多少顔を見たことがあるくらいで、互いに話をしたこともない間柄ながら、
図らずも、ともに一夜を明かすことになってしまい、
それぞれここに居残ってしまった胸の内などを打ち明け始めます。


結局ここにいるのは、女でありながら自立したそれぞれのプロフェッショナル。
当時の社会では女として特異な立場にある訳なのです。
なるほど・・・こうした視点はいままでになかった気がする。
女にも意地と誇りはある!! 
多くはここで仕事に就きながら、一生をここで過ごす覚悟のあった者たちなんですね。
江戸時代でありつつ、自立した女性を描く、実にユニークなストーリーなのでした。
最後に、その後の彼女たちの生き方も描かれていたのも嬉しい。
朝井まかてさんの著作2連続でしたが、こちらの方が断然好きです。


「残り者」朝井まかて 双葉文庫
満足度★★★★☆