映画と本の『たんぽぽ館』

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「象を洗う」 佐藤正午 光文社文庫

2008年04月27日 | 本(エッセイ)

「象を洗う」佐藤正午 光文社文庫

小説家佐藤正午の日常をめぐるエッセイ。
彼の小説は、ふとしたちょっと変わった出来事と男女の微妙な気持ちの変化が絡み合い、独特の雰囲気をかもし出しています。
どれも軽いタッチで、どろどろした恋愛にはなりえない。
・・・と、こんな感じで、イメージしていた彼、エッセイを読むとやっぱり、でした。

ただ、意外だったのは、もっと若い方かと思っていたのですが、プロフィールを見ると、なんと私と同じ年。
(今までも、彼の本を読んで気づいていたはずなんだけど、あえて忘れたフリをしていた私かも・・・)
もともと長崎は佐世保の方ですが、なぜか北大に5年半いたのだという。
ということは・・・。
私は北大ではありませんが、近辺の学校ではありまして、同時期にご近所にいたんですねえ・・・。
だからどうというわけでもありませんが。
でも、彼はほとんど部屋にこもって読書をしていたそうで、
エッセイにも学生時代の風景などな~んにも出てこないのはちょっと残念です。
あー、でも、北海道は読書三昧には向いているかもしれませんね。
夏の暑さはほどほどだし。
冬は、家の中にいる分には暖かくて快適ですよー。

さて、この本の題名、「象を洗う」とは・・・?
日常エッセイにしては日常離れした、この題名に実はつられて買いました。
それは心憎く、最後の方にやっとありまして、
雑誌掲載がボツになってしまった一篇とのこと。
それをあえて、本の題名にしてしまうあたり、作者の意地が感じられます。
つまり、これは作者と割と親しい編集者などの間でのみ通じる造語で、
「本をかくこと」のたとえなんですね。
毎日毎日「象を洗う」・・・。
すごく地味で大変・・・ということのようです。
でも、面白そうだけどな。
ほら、背中の辺りは広すぎて退屈でいやになりそうだけど、
耳の後ろとか、どこかの皮のひだの奥の方とか、なんだか見てみたいし、洗い甲斐もありそうだったりして・・・。

佐世保の水不足の連載エッセイも、なんだか面白かった。
・・・給水制限ありなら、象も洗えませんね!
エッセイの「つづく」というのも、いい手です。

満足度★★★★