映画と本の『たんぽぽ館』

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「犯罪ホロスコープⅠ/六人の女王の問題」法月綸太郎

2008年04月01日 | 本(ミステリ)

「犯罪ホロスコープⅠ/六人の女王の問題」法月綸太郎 光文社カッパノベルス

牡羊座から乙女座まで、6つの星座に題材をとった6つのストーリー。
まさに、法月綸太郎らしい美しく端正な本格推理。
著者が「あとがき」で自ら次のように言っています。

「どの話も殺人事件が起こって警察が捜査に乗り出し、
それが行き詰ったところで名探偵が解決するという、ベタな本格ばかりです。
今の時代、こういう小説がどれくらいもとめられているのか、
正直言って心許ないのですが、
とにかくできるだけ飽きられないよう、一話ごとに最新の工夫を凝らしました。
見かけほど薄い内容の本ではないと思っております・・・」

おなじみの法月警視とその息子綸太郎が活躍します。
上記パターンが同じなのはこれはもう、推理小説の王道パターンですし、
確かに、この6話は、それぞれに異なる趣向が凝らされており、どれも楽しめます。
ベタな本格、結構。
むしろ最近の拡散しすぎた方向性から見ると、
故郷に帰ったような、ほっとした感じがしてしまいます。

中でも私が気に入ったのは、「双子座/ゼウスの息子たち」
ここには双子どうしで結婚した二組の夫婦が登場。
達也と和也なんて言う名前が使われたりして、
これが、かの大ヒットコミックの主人公の名前だったりするのが、興味深い。
しかし、これは実に巧妙な著者の罠なのであります。
だまされます。
わかってしまえばなんということはないのに、思い込みというのは怖ろしいものです。
こういうところで、虚を付かれるのが本格の面白さ。

私の天秤座から始まるでありましょう、この続きが待ち遠しいところです。

満足度★★★★★