ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 徳田雄洋著 「震災と情報」 岩波新書

2012年09月29日 | 書評
震災で情報はどう伝えられたか、情報空白から身を守るために 第1回

序(1)
 東日本大震災と福島第1原発が引き起こした日本の危機は、それまでの考え方に厳しい再検討を迫るものであった。平常時のきれいごとではなく、だいだい突発事故でそのシステムのボロが出るものである。災害の対応のカギは情報である。適切な情報があれば迫ってくる危機に対して個人は必要な対応を行なうことが可能となる。分からないままに津波にのまれたり、放射線の流れの濃い地域に向かって避難したり、「情報空白」は致命傷になりかねない。今回の大地震では2種類の情報空白が発生したという。ひとつは地震と津波で被災した東北関東地方で、通信システムの破壊、停電、高付加と接続規制などにより、人々が連絡不能となり警報受信を行なうことが難しくなった第1種の情報空白である。もうひとつは政府報道が故意に安全だとしか言わなくなり、大手メデァが政府・東電の公式発表しか流さなくなったことによって生じる、不正確で隠蔽された歪んだ情報しか入手し得ないという第1の情報空白であった。住民は危険な放射線汚染地域に長く居続けることになった。このときに意外な情報手段が命を救った例がある。常磐線の電車の乗客が携帯電話のワンセグ放送で大津波情報に気ずき、巡査の誘導で危機を回避した。3月12日午後3時福島県はSPEEDI拡散予測システムの結果を入手していたが、不正確だという理由で住民への公表を行なわなかった。情報の無い住民は原発からより危険な北西方向へ逃げた人々がいた。オーストリアやドイツの気象研究所は3月12日からインターネットで放射線拡散予測結果を公表しており、関係者は十分把握していたはずだが、政府・東電関係者らはこれを握りつぶしたのか正しい情報が報道されなかった。被災地の住民や役所の人間がインターネットを見ることは出来なかったにせよ、首都圏では閲覧は可能であった。
(つづく)

文芸散歩 マルクス・アウレーリウス著 「自省録」 岩波文庫

2012年09月29日 | 書評
ローマの哲人皇帝 ストア哲学の教えに導かれる思索と実践の日々 第9回

第5章
*朝起きづらいときは次の思いを念頭におけ。「人間としての勤めを果たすために私は起きるのだ」
*誠実、謹厳、忍苦、寡欲、親切、自由、単純、まじめ、高邁な精神といった徳は能力の問題ではない。
*他人に善事を施して恩を返してもらうわけではない。自分が社会公共に利するような行動をとっている事を自覚する。
*信条どおり正しく行動できなくとも落胆するな。失敗したなら戻ってゆけばいい。理性(哲学)のもとへ戻って安らぐであろう。
*私は形相因と物質から成り立っている。これらは消滅して無になることはない。変化して再配分されるだけなのだから。その形相因も千変万化し、常なるものは殆どない。
*理性と論理の術はそれ自体においてそしてその働きにおいて、自足した能力(自律的に働く)である。真っ直ぐな道を行くことができる、信頼せよ。
*物事自体は我々の魂にいささかも触れることはない。その動きを変えることもない。魂のみが自分自身の向きを変え、判断に従って外側から起る物事を処理するのである。
*宇宙の普遍的物質を記憶せよ、その中のごく小さな一部分が君なのだ。
*自分のしたいことは理性的社会的動物の自然である。宇宙の叡智とは社会的な協力である。
*技術と知識のある魂とは、それは始まりと終わりを知る魂、すべての存在を浸透し一定の周期の下に全体を永遠に支配する理性を知る魂である。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「夜雨秋思」

2012年09月29日 | 漢詩・自由詩
通宵冷雨響蕭蕭     通宵冷雨 響蕭蕭

断雁征衣葉葉凋     断雁征衣 葉葉凋す

欄上蝸牛迎此夜     欄上の蝸牛 此の夜を迎え
 
樹陰蟋蟀応今朝     樹陰の蟋蟀 今朝に応ず


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(韻:二蕭 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)