ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

文芸散歩 マルクス・アウレーリウス著 「自省録」 岩波文庫

2012年09月24日 | 書評
ローマの哲人皇帝 ストア哲学の教えに導かれる思索と実践の日々 第4回

序(4)
 以上のストア哲学に関する基礎知識を持った上で、本書「自省録」の思想的内容を吟味してゆこう。マルクスは早くからストア哲学に傾倒した。奴隷エピクテトスの書物によったらしい。そして一度この考えを身につけるや一生変えることなく忠実に守り通した。哲学者というよりは道徳実践者というべきであろう。ストア哲学はギリシャの哲学であったがローマに入ると男性的気質にあったらしく大いに栄えた。初期の自由な精神の活動から、後期には道徳的感情的渇望を癒すものへと変化した。ストア哲学は3部分に分かれている。いわゆる物理学(宇宙自然)、倫理学(道徳)、論理学(哲学形而上学)である。ストア哲学の基調は「自然にかなった生活」であるが、自然とは宇宙を支配する理性である。倫理学が最高の位置を占め、物理学、論理学は道徳的な生き方を導き出す道具であった。倫理学が生活を律する指導方針であって、一神教の神を除いた生活指針といってもいい。ストア哲学の倫理は上に述べた特徴(ドグマ、信条)に従えば、宇宙はひとつで即ち神(汎神論)も物質もひとつである。宇宙の創生は物質的であるが、その形成を指導する神的な力はゼウスと呼ばれる。マルクスはけっして形而上学的思考(抽象的議論)は得意としなかった。人間は肉体、霊魂、叡智(指導理性)からなり、叡智が人の心を支配するダイモーンである。人間には叡智があるから人間たる由縁であるとされる。ここから人間の義務観念が引き出される。すなわち神に対する敬虔、人に対する社会性、自己に対する自律自足である。理性を持つものは同胞であるから、我々は1人残らず宇宙市民であり協力すべくできている。ここでストア哲学はその実践倫理に特有な思想として、我々の自由になることとならぬことの区別を強調する。自由になる事は徳、悪徳であり、自由にならないのは肉体・物質である。人間の幸福と精神の平安は徳によってもたらされる。「人生即主観」ということになる。宇宙の自然に服従し喜んで運命を受け入れることで「不動心」に到達することが人生の目標となる。禅の悟りみたいなものだろうか。死も喜んで受け入れよという。生まれること自体が虚無からきたものであれば死ぬことも虚無かもしれないし、他所に移ることかもしれないと、死後の世界については明確な像は持たない。まとめてみると「自省録」の思想内容は別に独創性があるわけではない。また「自省録」には論理的構成らしい構成もない。全体を12章に分かつが、章にわけて論じる主題もないし、何の脈絡もない。日々の感想メモに過ぎない。心が休まり、心に留まる名言を拾って記したい。
(つづく)

読書ノート 大島堅一著 「原発のコスト」 岩波新書

2012年09月24日 | 書評
原発コストの嘘を暴く 第7回

2)被害補償はどうなるか (2)
 2011年8月10日「原子力損害賠償支援機構法」が公布された。支援機構法の問題として、第1にその目的が損害賠償と原子炉の運転にある点である。原発からの脱却にあるのではなく原発の推進姿勢は変わらないのだ。第2の問題は原子力損害賠償は国の責任で行なうべきであると云う点だ。経済的には成り立たない原発事業という国策に協力した電力事業者というスタンスで、莫大な損害賠償は国の責任でという産業界の主張が通っている。政府が国債を支援機構に公布し、支援機構はこれを換金して東電に資金援助を行なう。これは貸付という形ではなく返済の義務もあいまいなまま、一般負担金を東電および電力会社が支援機構に納めるという形をとる。支援機構法は東電に対して「特別事業計画」を国に提出するという義務を負う。資金援助を受ける電力会社に負って経営合理化が国債交付の条件となっており、運営によっては事実上の国営化とも言えるし、保有資産の買取(送電網・株・不動産など)による賠償資金の調達は電力会社のあり方を根本的に変える可能性を持っている。東電は12月末電力料金の値上げを経産省と協議したが、枝野大臣は国有化も選択肢であると述べた。東電の債務超過回避策として支援機構が発足し、返済する義務を持たない援助という形になるため、この援助を東電は損益計算書の特別利益に計上し、賠償資金の支払いを特別損失として計上する。したがって帳簿上は負債とはならない。この支援機構法の「特別事業計画」への国民の関与が全くなく、結局国民負担(国債発行)で東電の経営責任が免除された。また東電は「原子力損害賠償紛争審査会」の指針を待って本格的な損害賠償を行なうこととなり、東電の損害賠償仮払いは遅延したまま放置されている。東電は損害賠償交渉の窓口業務も国に預けた形で消極的姿勢に徹している。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「秋雨懐郷」

2012年09月24日 | 漢詩・自由詩
江上陰雲煙瞑時     江上陰雲 煙瞑き時

哀蛩切切雨聲悲     哀蛩切切 雨聲悲し

郷書不届愁生晩     郷書届かず 愁の生ずる晩く
 
橘柚未黄秋到遅     橘柚未だ黄ならず 秋の到る遅し


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(韻:四支 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 「ポール・モーリア演奏集1 クラシック」

2012年09月24日 | 音楽
「ポール・モーリア演奏集1 クラシック」
ADD 1999 ポリグラム

①短くも美しく燃え ②アヴェ・マリア ③マドンナの宝石 ④へ調のメロディ ⑤パッヘンベルのカノン ⑥G線上のアリア ⑦恋のアランフェス ⑧アルハンブラの想い出 ⑨ホフマンの舟歌 ⑩アルビノーニのアダージョ ⑪さよならをもう一度 ⑫別れの曲