ブログ 「ごまめの歯軋り」

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文芸散歩 柳田国男著 「日本の昔話」 (角川ソフィア文庫 1960年5月)

2018年01月06日 | 書評
「むかしむかし、あるところに・・」で始まる全国で語り継がれた昔話106篇 第12回 最終回

101) 物おしみ
昔、二人の物惜しみ(吝嗇 ケチ)がいました。あるとき一人のケチが隣のケチに金槌を借りに行きました。隣のケチは木の釘を打つのか鉄の釘を打つのかと問うので、鉄の釘を打ちますと答えるとあいにく金槌はないと断りました。あきれたケチだ、仕方ないから自分の金槌を使うかと言ったそうです。

102) 盗み心
ある男が雪の降った日、友達の家に遊びに行きました。外が明かるかったので家に入ると急に暗く感じました。足で何かを踏んだので取り上げてみると鉈でした。日頃からこんな鉈がほしかったので、思わず懐に入れました。暗いと思ったのは本人だけで、薄明りで家人はこのことを見ていました。そこへまた人が入って来て暗いとうので、その男は鉈を懐に入れると明るくなると言ってその男に鉈を渡しました。

103) 婿の世間話
婿殿が舅の家に行くことになりました。友達に何か面白い世間話の一つでもするものだと言われましいた。舅殿の家に行き挨拶も済んで、酒の膳が出ました。婿殿は舅殿に、義父さんは一抱えもある鴫を見たことがありますかというと、舅はないと答えて話は終わりました。

104) 下の国の屋根
大うそつき(ほら吹き)の話です。どこまでも井戸を掘り続けていったら、下の国の屋根に出たという。(チャイナシンドロームのような話です)

105) 博打うちの天登り
博打が賽を転がして遊んでいるところに、天狗が来て賽と天狗の団扇を交換しました。団扇を煽ぐと鼻が長くなり、裏返して煽ぐと鼻が元通りに小さくなります。このう団扇をもって長者の家の前に行き娘が出てくるところを団扇で煽ぎました。鼻が七尺にもなって娘は外に出られません。長者は娘の鼻を元通りにしてくれたら婿にするとふれますと、この男は団扇で裏返しに煽いで鼻を短くしました。こうして婿になった男は座敷で昼寝をするとき団扇で煽ぎ続けたので、鼻が天まで伸び、天の川に橋普請があり丁度棒がニューと出てきたので杙の代わりに縄で固定されました。鼻の先が痛いので目が覚めた男は慌てて団扇を裏返しで煽ぎましたが、先が固定されていますので鼻が縮むと体が天の川に引き寄せられました。

106) 空の旅
運の良い男が、鉄砲を撃ちますと一発の玉が何十羽の雁を貫いて雁が落ちてきました。それを腰に束ねて路を歩いているうちに雁が生き返り、一斉に飛び上がって狩人を大和国の五重塔のてっぺんまで運びました。おお声で助けを求めると、寺や村の人がやってきて、大きな風呂敷を広げ綿を一杯敷き詰めてこの上に飛び降りるように言いました。風呂敷の四隅を持った坊さんがガチンコをして目から火が出て綿に燃え移り、風呂敷も五重塔も狩人も焼け死にました。

(完)