ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

医師不足による病院閉鎖・縮小相次ぐ 

2008年11月28日 | 時事問題
asahi.com 2008年11月28日7時57分
大阪府松原市、市立松原病院を来春に閉院へ 再建を断念
 大阪府松原市は、来年3月末に市立松原病院(桑田博文院長、162床)を閉院する方針を決めた。医師不足や患者の減少により、07年度末の累積赤字は40億円近い。財政難で老朽施設の建て替えもできず、再建は難しいと判断した。
 同病院は大学病院の医師派遣の減少や激務による退職などで01年度に12診療科に38人いた常勤医が27人に減り、900人以上いた1日の外来患者も500人近くになった。24時間救急については、04年に内科、07年に小児科をやめ、病床も07年に221床から162床に減らすなどスリム化を図ったが、病床利用率は逆に70%を割り、「医師不足と患者減少の悪循環を断ち切れなかった」(長谷川修一事務局長)。

「医師不足・医療不在の地域医療を守れ」
 病院から医師が立ち去ってゆくことが全国自治体病院の医療崩壊現場である。医師の絶対数不足のうえに地域偏在と診療科偏在が地方病院に圧し掛かる。医療が万民にあまねく行き渡ることは、「経世救民」の思想ではなかったのか。「一県一医科大学制度」はその思想の具体化であった。ところが地方医大に都会出身者が入学して去ってゆくのでは、地方の医師確保は困難である。全国自治体病院で医師が不足していると答えた病院43%で、とくに地方では不足感が大きい。北海道は77%、東北は66%、北陸・信越は65%である。病院勤務医師の勤務時間は週70時間である。これを普通の業種の勤務時間にするには医師の数は今の3倍は必要となる。自治体を預かる総務省は自治体病院赤字対策として診療所への転換を進めているが、経営効率化のために病院を診療所化したら、厚生労働省の診療報酬は半分以下になった。人口が少なく地域医療は地方自治体病院が担っている。経済原理で病院経営を追求したら、地方病院は破産宣告するか、撤退すべきであろう。

読書ノート 三村芳和著 「酸素のはなしー生物を育んだ気体」 中公新書

2008年11月28日 | 書評
27億年前、光合成によって酸素ガスが出来ると、生物は一気に進化した 第8回


1.酸素のないところでの生物 (4)
 5億4000年前大気中の酸素濃度がようやく1%まで蓄積された。それによって生物が一挙に飛躍的に進化したといわれる。これを「カンブリア紀の大爆発」といい、現在の多細胞動物の殆どが出揃った。これ以降生物は5回ほど絶滅と復活を繰り返した。最大の絶滅が2億5000年前に起きた。マントルの大爆発(スーパブルーム)や隕石の衝突が原因と言われるが、酸素濃度の乱高下がおきた。当時30%の酸素濃度が急降下して90%以上の生物種が絶滅した。この低酸素状態が2000万年も続いた。通性嫌気性細菌は酸素の有無で呼吸形式を変換できるちゃっかり者もいたので完全絶滅は回避できたのかもしれないが、委しい事は分らない。


読書ノート 野崎昭弘著 「詭弁論理学」 中公新書

2008年11月28日 | 書評
人を悩ます詭弁の正体を見破って、知的な遊びを楽しもう 第10回 最終回

第3章 論理の遊び (2)

3)自己矛盾のパラドックス:「ここに書いてある事は本当(or うそ)です」という文章は文法的正しくとも論理的には意味をなさない文章である。つまり正誤以前の文章なのである。そこで真理値r(0 or 1)の論理方程式の解が不能(存在しない)、不定(解が決まらない)から無意味な文章を作る事が可能である。

4)「人食いワニのパラドックス」:ワニに子供を取られた母親が「子供を食べないでください」と頼むと、ワニは「いまから、自分がどうするかあてられたら子供を返してやろう。あてられなかったらすぐに食ってやるぞ」と答えた。母親は「あなたは私の子供を食うでしょう」といった。さてワニはどうしたでしょうかという設問である。ワニが子供を食えば母親の予言が合ったことになりワニは子供を返さなければならない。子供を返したら母親の予言が外れた事になり子供を食わなければならない。ということでわにはパクパクとさせるだけで食う事もできず止めることも出来ず、まるでベルがなっているように永久運動を繰り返したのである。

5)死刑囚のパラドックス:王様はある死刑囚に「明日から来週の金曜日までに処刑する。ただし死刑囚が今日は殺されると分る日には処刑はしない」といった。さてこの死刑囚は死刑になるのだろうか。答えは「来週の金曜日であれば死刑とわかっているから死刑には出来ない。すると木曜日が死刑日になる。するとやはり木曜日は死刑できないという順に行くと結局死刑できる日はない」ということである。

例題はこのくらいにしておこう。ここには頭の悪い人はいないことになっている。すべて論理的人間だけである。間違った推理立てをする人はいない前提である。どちらにしても強弁も詭弁も人を幸せにするものではない。そこで罪のないお遊びになろうか。これが本書の結論である。

文藝散歩 「大鏡」 武田友宏編 角川ソフィア文庫

2008年11月28日 | 書評
平安摂関政治の黄金期藤原道長の栄華の歴史 第17回 最終回

「大鏡」 下 (5)


兼家の豪胆さ 一条天皇即位式を強行
時代は遡って、兼家・道兼の陰謀により花山天皇は出家させられ、一条天皇が即位されことになった。即位式の大極殿の飾り付けをしていた時、天皇のすわる高御座に何か動物の死骸が見つかった。責任者が慌てて兼家に指図を求めに来たが、兼家は居眠りの振りをして聞かなかった。そんな事件はなかったことにして無事即位式は整ったということである。兼家の豪胆さは道長公にも受け継がれている。

一品の宮中宮禎子の立后と国母実現
ここで世継翁が変なことを言い出す。後朱雀天皇の后一品の宮禎子(道長の女妍子の娘)が国母になる(後三条天皇の即位)という予感がすると云うのである。大鏡は現在時を1025年に設定しているので、何故こんな破綻を仕出かしたのだろうか。これで「大鏡」が1068年4月以降の作品である事を曝露したような物だ。結局「大鏡」の作者は妍子・禎子の勢力圏内にいた者が書いたと云うことがわかる。このことを「二の舞いの翁物語」で追認をするというご丁寧な筋書きである。


摸写 鳥獣戯画(部分)-5

2008年11月28日 | 自作絵画
国宝「鳥獣戯画絵巻」
 こどもからお年寄りまで誰もが楽しめる作品としてよく知られた絵巻があります。それがこの国宝「鳥獣戯画」(「鳥獣人物戯画絵巻」)です。遊び、飛び跳ねまわる動物たちの愉快な表情を自由闊達な筆線で描き出す本巻は、日本絵画史の一大傑作として高く評価され、また、世界から注目される日本のマンガ・アニメ文化、キャラクター文化の源流として、現代でも幅広い関心を集めています。