あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

儚き君と 蛇杖院かけだし診療録 

2023-04-17 12:30:12 | 

 5/9発売予定のゲラを読ましていただきました。蛇杖院かけだし診療録シリーズの4作目です。

 江戸の診療所「蛇杖院」の医者見習いの瑞之助は医師の岩慶とともに、瑞之助の3歳年上の患者・おそよを多摩の石田村から蛇杖院に連れてきました。彼女の病は現在の筋萎縮性側索硬化症(ALS)なのでしょう、江戸時代では病名も治療方法もわからず、死ぬのを待つ状態です。彼女は元は呉服商の大店の一人娘でしたが、押し入り強盗に入られた店で一人助かった過去を持ちます。石田村へ移ってからは「人の役に立たなければ生きている価値がない」と思って、多くの人の手助けをしてきましたが、病になってからは助けられるばかりで大いにストレスを溜めていました。「蛇杖院」に出入りの奉行所の侍から押し入り強盗の下手人が江戸にいるという情報のもと、おそよは大舞台を打ちます。

 生きているだけで尊いとはわかっていても、悔いてばかりでは前に進めない。すべてに悔い尽くして、真っ正直に心に向かうと晴れてくる。おそよが亡くなってからの、彼女に付きっ切りで世話をしてきた瑞之助の日々は涙なしでは読めません。

『儚き君と 蛇杖院かけだし診療録』(馳月基矢著、祥伝社文庫、本体価格860円、税込価格946円)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする