細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●ロス市警のド迫力の死闘が6月の試写ベストワン。

2013年06月30日 | Weblog

●6月に見た新作試写ベスト3

1/『エンド・オブ・ウォッチ』(監督/デヴィッド・エア)ジェイク・ギレンホール ★★★★
  圧倒的なリアリティで描く、ロスのダウンタウン犯罪多発地区。ふたりのパトロール警官の友情と危機に彩られた日々が濃い。

2/『楽園からの旅人』(監督/エルマンノ・オルミ)マイケル・ロンズデール ★★★☆☆☆
  高齢と過疎で閉鎖したイタリアの教会に、アフリカからの密入国者たちが住み込む。神の教えのように異邦人たちを救うべきか。

3/『ベルリン・ファイル』(監督/リュー・スレワン)ハ・ジョンウ ★★★☆☆
  脱北した活動家がベルリンで暗躍。機密漏洩を防ぐべく南北朝鮮の情報部員が激突する。ロケの効果を活かしたスパイ大作戦が炸裂。

★『野いちご』1957(監督/イングマール・ベルイマン)ヴィクトル・シェーストレム
  大学の名誉勲章を授与した老医師が、家族や自身の人生の旅路を回想する苦節の心象ロードムービー。いまでもその感動は消えない。

☆その他にも、「ワイルド・スピード6/ユーロ・ミッション」
「アイアン・フィスト」
「偽りの人生」
「素敵な相棒」などが、面白かった。デス。


●『野いちご』50年ぶりの香ばしい風味。

2013年06月29日 | Weblog

●6月27日(木)12−45 京橋<テアトル試写室>
M−077『野いちご』Smultronstallet  ( Wild Strawberries ) (1957) AB Svensk Filmindustri スエーデン
監督/イングマール・ベルイマン 主演/ヴィクトル・シェーストレム <92分> 配給/マジック・アワー ★★★★
1961年に本邦公開されたときに見たが、老境の人生観や家族を描いて、渋い作品だと感じていた。
その後、ベルイマンの作品はどれも好評で、すべて見たものの、やはり「野いちご」が一番好きだった。
テレビ放映は別にして、52年ぶりにデジタルリマスター版でスクリーン公開されるので、おっかなびっくりで試写を見た。
当然のように、まだ大学生のときに見た印象と、今回の印象は当然のように違う。
とくに、主人公の老人と、ほぼ同じ歳になって見るのだから、これは「クラス会」の再会のような残酷な感慨がある。
大きく印象の違いはないが、大学の名誉博士号を受賞するという人生の頂点にいて、その心境の寂しさが、とくに深く感じられた。
前夜に見た夢のなかで、針のない時計や、棺の馬車が車輪を街灯にぶつけてしまう部分が、実はかなりリアルな印象なのが怖い。
つまり、この老人は偉大な成功者ではなく、時間のなさや死というものが、かなり身近に感じていたのが、強いインパクトで迫るのだ。
人生の成功なんて、それまでの失敗や不始末に比べたら、とるに足らないものだ、という実感。
そして、ラストで、美しい湖畔で釣りをしている亡き父母の姿には、今頃になって痛く感動したのだ。
まさに小津安二郎の映画が最近になって身にしみるように、それは後期高齢者の実感がつよいなーーーと感じるのだ。
ベルイマン自身は、まだ40歳の頃に、この作品を作っていたというのも、いまになって恐れ入ってしまう。
今回は、この他にも「第七の封印」(56)と「処女の泉」(59)が同時期に公開される。

■渋い当たりだが、レフトポールにギリギリ入る。
●7月20日より、渋谷ユーロスペースで、3作品4週間ロードショー


●『ワイルド・スピード6/ユーロ・ミッション』はジェット機も巻き添えのクラッシュど迫力。

2013年06月28日 | Weblog

●6月27日(木)10−00 半蔵門<東宝東和試写室>
M−076『ワイルド・スピード/ユーロ・ミッション』Fast & Furious 6/ Euro Mission (2013) Universal Pictures / original films
監督/ジャスティン・リン 主演/ヴィン・ディーゼル <130分> 配給/東宝東和 ★★★☆☆
元はと言えば、ロスのダウンタウンの深夜の路上で、チキン・ホット・レースをやっていた連中。
ジェームズ・ディーンは「理由なき反抗」でやった一般道路でのカー・レースだが、これがエスカレート。
とうとう警察に追われることになったスピード野郎たちは、いまはブラジルからスペインを逃げ回っていた。
過去の5作品は見ているので、「もういいや」と試写はパスしていた。
ところがこの新作が、ユニヴァーサル映画史上最大のヒット作品になったという。
映画好きとしては、それならば・・・という次第で、最終の試写に駆けつけた。


たしかに、あのカー・レースから6作目。金もかければスケールもデカイ。呆れるようなクラッシュの連続なのだ。
スペインで逃亡中の彼らは、国際機密がテロ・ブループに奪われた事件の助っ人に、恩赦を代償にして、またハンドルを握る。
ま、台詞でも言っているように、これはジェームズ・ボンド以上の事件追跡なのだ。
運搬中の戦車と公道でドンパチをしたかと思うと、ラストは輸送ジェット機に体当たりを強行する。
メシも食う時間もないのに、「ようやるわい」と思って呆れて見ていたが、やはり今回も凄まじい迫力だ。
どの軽度が実写なのかは別として、このコミック動画のようなスピード処理は、たしかに過去最大のアクションだろう。
映画というのは、フィルムのマジックによって、イメージを映像化する技術の証明が、ひとつの見所だ。
これは、その奇想天外な映像処理で、エンターテイメントの精度を高めたことは、認めざるを得ない。
ラストで、人ごみの渋谷のスクランブル交差点で派手なクラッシュを見せるが、これも映像マジックの凄さだろう。
「くれぐれも車の運転はスピードを厳守してください」というタイトルも、毎度のことだが、笑える。
次回は、あのジェイソン・ステイサムも絡むのか。という予告つきの自信作には呆れてしまう。

■左中間のライナーがフェンスを転々のツーベース。
●7月6日より、TOHOシネマズ有楽座ほかでロードショー


●『楽園からの旅人』の意外に重いテーマ。

2013年06月27日 | Weblog

●6月26日(水)13−00 六本木<シネマートB1試写室>
M−075『楽園からの旅人』Il Villaggio di Cartone (2011) cinemaundici e Rai Cinema / 伊
監督/エルマンノ・オルミ 主演/マイケル・ロンズデール <87分>配給/アルシネテラン ★★★☆☆
あの「木靴の樹」の名匠の新作は、まるで舞台劇だ。
タイトルから勝手に心休まる老境が見れるかと期待したが、まったく意表をついた社会的なメッセージが込められていた。
「楽園」というのは、未開のアフリカ大陸のことで、「旅人」というのは密入国者たち。
イタリアの街にあるカソリック教会が、老朽化と神父の高齢と信者離れで閉鎖された。
その廃墟に、アフリカからの密入国者たちが入り込み、一時的だが避難生活をはじめた。
老神父は神の使者なのだから、彼らを救うべきなのか。というのがテーマ。
多くの迫害を受けて、身の危険に曝されながら、密入国者たちは脱出か自爆を迫られている。
ま、社会的には、ヨーロッパ、アメリカ、ロシアなどの大国が抱えた重大な社会問題だ。
そこを、オルミ監督はシンプルな舞台劇として描いて見せた。しかしテーマに対しては重いメッセージもある。
ローマ時代から、とくにイタリアの抱えた問題を、老神父のマイケルは枯れた演技を見せる。
孤高の老監督の、未だ衰えぬ創作意欲と、メッセージの語気には矍鑠とした強さは感じられる。
しかし、映画のスタイルとしては、どうも、お疲れさん、であった。

■サードのライン上にぬけるゴロで、バックハンドの野手の送球がズレた。
●8月17日より、岩波ホールでロードショー


●『アイアン・フィスト』はタランティーノ好みのキムチ風味カンフー雑煮。

2013年06月26日 | Weblog

●6月25日(火)13−00 六本木<アスミック・エース試写室>
M−074『アイアン・フィスト』The Man with the Iron Fist (2012) universal International / strike entertainment
監督/主演/ロバート・ディッグス The RZA 共演/ラッセル・クロウ <96分> 配給/シンコ・パルコ ★★★☆
クエンティン・タランティーノがバックアップした、メジャーなB級トラッシュ・ムービーだ。
時代は百年前の中国だが、「グランド・マスター」のような、正統なカンフー映画じゃないのは、当然。
まさに「鉄拳」を持つ、異様なファイターたちが街を牛耳ろうとする。
鍛冶屋のRZAは、ミュージシャン上がりの監督だが、風貌も個性的でいい。
彼を中心に、タランティーノの映画悪友が、冗談と熱意で作ったような、ゲーム感覚の超次元のカンフー・アクションだ。
だから「キル・ビル」よりもデタラメで面白い。
一応、ストーリーはあるのだが、それは西部劇のように、パターンで豹変するので勧善懲悪のお決まりだ。
ただ、ラッセル・クロウだけは、ワケありの舶来怪物。これがかなりデタラメでおかしい。
ま、このテのコミック・アクションを真面目に見て評論するのは、かなり次元ハズレで失礼である。
圧倒的なラップのリズムで、カラフルでド派手なカンフー・アクションを楽しめばいいだけで、それ以上のことはない。
まさに都会の場末の裏通りの、ネズミのいるような地下のいかがわしい映画館で見るのがピッタリの異色奇作。
映画ファンだけが楽しめる無軌道な新作だが、ハリウッドのメジャー会社が作るあたりがバッド・ジョークでうれしい。
常連のルーシー・リュウが相変わらずのアクションでいいが、「ジャッキー・ブラウン」のパムの豹変ぶりはショックだった。
こうゆう徹底的におバカな映画が来るから、われわれ映画マニアは油断ができないのだ。

■ファールで粘って、最後はボー球の振り逃げ。
●8月3日より、全国某所でロードショー


●『マジック・マイク』はマジシャンではない、夜のショウ・ダンサーだ。

2013年06月22日 | Weblog

●6月20日(木)13−00 六本木<アスミック・エース試写室>
M−073『マジック・マイク』Magic Mike (2012) Iron Horse / extensions 765 enterprises
監督/スティーブン・ソダーバーグ 主演/チャニング・テイタム <110分> 配給/カルチャー・パブリッシャーズ ★★★☆
フロリダのタンパは、メジャー・リーグのキャンプ地でもある温暖な街。
そこのクラブでは、夜な夜な屈強なムキムキ・マンたちのストリップ・ショウが若い女性たちに人気がある。
家具の起業家のチャニングは借金苦のために、友人の紹介でマシュー・マコノヒーが仕切るクラブに飛び入りで出演することになった。
イケメンのチャニングの夜の実話を映画化した、これも苦悩する青春の溌剌としたサクセス・ストーリー。
ちょいとジャスティン・ティンバーレイク風の、キレのいいテクノ・ビートにのって、半裸の若い男たちはエネルギッシュに踊る。
いかにも陽気でスポーティな若者たちの青春は、まるでマイナー・リーグの選手のように陽気で、夜の暗さはない。

という点では、今風のミュージカル映画という見方もできる。
オスカー監督のソダーバーグは、「トラフィック」から「エージェント・マロリー」まで、とにかく元気でいい。
とくに社会性も、セックスの異常性もなく、犯罪臭さもなく、これは非常にスポーティブな青春映画で、エミネムの「8mile」に近い好感があった。
オーナーのマシューも、「ロック・オブ・エイジス」のトム・クルーズのようにキレまくる好演だ。
若者たちは、ランクの上の歓楽の大都会マイアミへの進出を夢見ているが、チャニングは実直に、自分の青春を生きて行く。
都内でも屈指のリッチなおばさま方が客層のシアターで公開するというのも、よろしいではないか。

■変化球を素直に打ち返したセンター前へのクリーン・ヒット。
●8月、Bunkamuraル・シネマなどでロードショー


●『31年目の夫婦げんか』の犬も喰わない空論と微笑。

2013年06月20日 | Weblog

●6月19日(水)13−00 外苑前<GAGA試写室>
M−072『31年目の夫婦げんか』Hope Springs (2012) columbia pictures / MGM presents
監督/デヴィッド・フランケル 主演/メリル・ストリープ <100分> 配給/GAGA ★★☆☆
邦題は面白そうだったが、原題は、夫婦問題のクリニックのこと。
倦怠期というよりは、夫婦の存在そのものに意味を失いつつある円満夫婦。
これは31年の夫婦生活で、子供たちも自立している中流家庭にとっては、むしろ問題視するようなトラブルじゃない。
夫のトミー・リー・ジョーンズは実直なサラリーマンで、浮気もしない毎日がルーティンの繰り返し。要するに悠々自適。
その繰り返しの日々に業を煮やしたメリルが、活気ある夫婦生活を復活すべくカウンセリング旅行を計画する。
もちろん、それはいいことで、多くの夫婦映画はそのことに変化を求める。が、この映画には意外性がない。
いっそ「ヴァージニアウルフなんて怖くない」や「ハート・バーン」のように派手な口論をすればいいのに。
煮え切らないカウンセリングとの禅問答のような空論を繰り返し、ああ、もういいや。という退屈。
もし小津監督の「お茶漬けの味」のような繊細な情感があれば、もう少しどうにか見られただろうに。
結局は、下ネタで夫婦関係の修復を計ろうとする発想もハリウッド趣味で、おかしくもない。
オスカー女優も、ただの息抜きの企画だったろうに、これではドリス・デイのコメディにも及ばないのだ。

■フルカウントからファールで粘ったものの見逃し。
●7月26日より、TOHOシネマズ シャンテなどでロードショー


●『素敵な相棒』完璧な介護ロボットでもハートはワカラナイ。

2013年06月18日 | Weblog

●6月17日(月)13−00 九段下<角川映画試写室>
M−071『素敵な相棒』Robot & Frank (2012) exclusive media / park pictures film
監督/ジェイク・シュライアー 主演/フランク・ランジェラ <89分> 配給/角川映画 ★★★☆
近未来のはなし。郊外の一軒家にひとりで暮らすフランク老人に、マンハッタンにいるビジネスマンの息子は、介護ロボットをプレゼントする。
彼は元宝石泥棒で、服役したこともあるが身体は元気で、自分のことは自分でできる。
それでも高齢のために食生活は偏食だし、遠距離の息子は最新の介護専門ロボットを住まわせたのだ。
家事やショッピングはできる高性能ロボットだが、イエスとノーしか反応しないので、情感は伝わらない。
時間を持て余したフランクは、持ち前の才能で、近所のリッチマンのジュエリー泥棒を計画してロボットに手伝わせる。
ケイパーは成功するが、当然、当局は前科のあるフランクに尋問する。
そこで、フランクはロボットのメモリーを消そうとするが、パスワードは忘れてしまった。
実に巧妙に練られたシナリオと、ゆるやかなリズムの心地のいい、リタイアー・ムービー。
フランクも「泥棒成金」のケイリー・グラントのように、悠々自適でとぼけていて、実にいい。
結局、ロボットは何でも出来るが、老人の孤独感とハートの寂しさをフォローできない。
老人介護の難点を、ちらりと覗かせた、クレバーなかわいいコメディだが、問題が多すぎる。
ひとつのバディ・ムービーの仮説として見れば、老人のための「E、T」なのだろうか。
「ハリーとトント」の如く、このフランク・ランジェラも例によって実に巧い。

■渋い当たりが、前進守備のセカンド頭上にポトリ。
●8月10日より、角川シネマ有楽町などでロードショー


●『偽りの人生』空漠としたスワンプで方向を見失った男の路。

2013年06月14日 | Weblog

●6月13日(木)13−00 六本木<アスミック・エース試写室>
M−060『偽りの人生』Todos Tenemos un Plan (2012) 20th century fox international / tornasol film.
監督/アナ・ペターバーグ 主演/ヴィゴ・モーテンセン <119分> 配給/ブロードメディア・スタジオ ★★★☆
アルゼンチンのブエノスアイレス。中年医師のヴィゴは空漠とした結婚生活に霹靂としていた。
そこに突然、音信不通だった一卵性双生児の兄が訪ねて来て、実は末期がんなので殺してくれ、という。
ヴィゴは、亡くなった兄になりすまして、これからの人生を再生しようと、郷里のティグレに赴く。そして兄の人生を生きることにした。
同じような話しで思い出すのは、「ダニー・ケイの天国と地獄」だが、こちらはマジなフィルム・ノワールのテイストだ。
だから、いかに風貌は似ていても、同じ人間に成り済ますというのは、無理な設定だが、ま、そこが映画のレトリックの妙。信じるとしよう。
騙されたつもりで、兄の生活を再演していくが、次第に、その生活の裏側の暗黒だった部分が見えて来る。
ティグレというのは、荒涼としたデルタ地帯で、その無限に見えるスワンプの風景が、いかにも心の澱みを見せて空漠として美しい。
ま、ノワール的な仮想の設定を、新人の女性監督アナは、丁寧な心理描写で繊細に描いて行く。
それはそれで「別離」のアスガー・ファルハディ監督のタッチを思わせて、映像的な人物描写は味があってよろしい。
しかし、所詮はホラ話なので、その基本的な無理な設定が後半になって空虚に見えて来てしまうのだ。
それはドラマティックなテンションが、非常に押さえられているからで、これはアナ監督の個性なのだろう。
イミテイトしようとした「二重人生」も、かくして無情にも似たような袋小路に入って行くという構図も、累計的だ。
いっそ、本格的なノワール美学に徹した方が、もっと戯画として面白くなったろうに。マジメすぎたようだ。

■変化球狙いで当たりはいいが、レフトの正面への平凡なライナー。
●7月12日より、TOHOシネマズ、シャンテなどでロードショウ


●『ベルリン・ファイル』壮絶な南北朝鮮スパイ大作戦。

2013年06月11日 | Weblog

●6月10日(月)13−00 西銀座<東映本社7F試写室>
M−069『ベルリン・ファイル』The Berlin File (2013) C.J. entertainment / C J E&M corporations 韓
監督/リュ・スンワン 主演/ハ・ジョンウ <120分> 配給/CJ エンターテイメント・ジャパン ★★★☆☆
ベルリンは、かつては西欧諸国の勢力が混在する国際スパイの戦場だったが、いまは状況が違う。
これはキム・ジョンイル亡き後の、北朝鮮の隠し軍事資金の流れと中東諸国への武器密売を追う韓国のエージェントの活躍映画か。
と思って見ていたら、どうやら脱北した活動家、つまり無国籍<ゴースト>の動向を追ったスパイ・アクション。
それも、ただの脱北者と韓国捜査官の友情ものかと思いつつ、実はその<ゴースト>を追う北側の凄腕の保安監察員が絡むという三重構造。
ダブル・スパイの知的ゲームを描いたアンリ・ヴェルヌイユ監督の「エスピオナージ」に似た複雑な追跡劇の様相になる。
しかも北の秘密捜査官<ゴースト>には、現地ベルリン大使館の通訳女性の恋人がいて、ああ、何と妊娠中。
もとはといえば彼女の上司である北朝鮮ベルリン大使の不審な動向を探る、キム新体制の特令保安監視員の介入だったのが、事態が急変した。
はじめは複雑な中東アラブ連合への武器密売ものかと思っていたが、意外な要人暗殺からは、一気に南北朝鮮の絡む三つ巴のアクションとなる。
それにしても、ベルリン市内のホテルの壮絶な脱出銃撃戦から、郊外の荒野での肉弾戦へと、まさにアクションの延長戦だ。
「続/夕陽のガンマン」を思わせるラストの三重対決も壮絶だが、さすがにキムチ・アクションの見せ場は凄まじい。
 あまり、複雑な国際情勢を気にしないで見ている分には、後半のスピード感はハリウッドを圧倒する。
あの傑作「チェイサー」のハ・ジョンウが相変わらずの不機嫌な表情でいい。

■強烈なゴロがサードのグラブを弾いてブルペンに転々のツーベース。
●7月13日より、丸の内ピカデリーなどでロードショー