細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『トランボ*ハリウッドに最も嫌われた男』の反骨シナリオ・ライターとしての勇気と気概。

2016年04月30日 | Weblog

4月19日(火)12-30 築地<松竹本社試写室>

M-053『トランボ*ハリウッドに最も嫌われた男』" Trumbo " (2015) Entertainment One / ShivHans Pictures / Groundswell Productions 

監督・ジェイ・ローチ 主演・ブライアン・クランストン <124分> 配給・東北新社、スターチャンネル

映画の好きな人なら、あの40年代後半の<ハリウッド・テン>の、いわゆる映画界の<赤狩り>の話は、多くの過去の作品のベースになっていたのでご存知だろう。

あまり実態を主題に描く作品は少なかったが、ウディ・アレンが出演したマーティン・リットの「ザ・フロント」や、シドニー・ポラック監督の「追憶」などは、いまでも印象に残っている。

とくに脚本家のドルトン・トランボも、その摘発された10人に含まれていたことも有名で、デ・ニーロが主演した「真実の瞬間」では、公聴会での論争が詳細に描かれた。

トランボに関しても、あの「ローマの休日」のシナリオを書いてアカデミー脚本賞を偽名で受賞したことは有名で、後にやっと本人名義で受賞したことは、ここで描かれている。

要するに冷戦時代のきっかけになった、アメリカでの共産主義者の摘発が、あの時代にFBIのフーバー長官の肝いりで厳しくなり、ハリウッドでの映画発言にもトバッチリが来たのだった。

ハンフリー・ボガートやエドワード・G・ロビンソンなども、ワシントンでの公聴会に呼び出しをくらい、テレビ中継でその議場での論戦は話題になったものだ。

この作品では、その歴史的な<茶番>に巻き込まれて、わざわざ偽名まで使って映画のシナリオを書き続けたドルトン・トランボの人間的な強い柔軟さを、かなり忠実に描いている。

当然、いまでもハリウッドの映画史として、作品クリエイター達には非常に興味の深いテーマなのだから、その関心の強さで今年のアカデミー作品賞などにもノミネートされた。

ファンとして面白いのは、あまり似ていないけど、ジョン・ウェインとの対立や、カーク・ダグラスの熱心な介入、ヘッダ・ホッパーのヘレン・ミレンの陰口などが笑わせる。

しかし、ドラマとしてはダイアン・レインが久しぶりに好演している愛妻との情感や、娘への気配りなどが、実に50年代の当時のハリウッドの空気を感じさせて嬉しくなる。

B級アクション映画専門のスタジオの所長になるジョン・グッドマンが製作した、トランボのシナリオの「黒い牡牛」がアカデミー賞を受賞したときの歓びようにはジーンとくる。

とくに印象的な演技は見せないが、トランボを好演したブライアン・クランストンが、アカデミー主演男優賞にノミネートされたのも、やはりハリウッドの興味と信頼の厚さだろう。

近日公開予定の「ロイヤル・ナイト」が、あの「ローマの休日」の元ネタになったことは、さすがにこの作品では触れないが、劇場で映画を見ているトランボ夫婦の笑顔が印象的だった。

 

■ライトフライが意外に伸びてフェンスへの長打となりツーベース。 ★★★☆☆+

●7月、TOHOシネマズ シャンテなどでロードショー 


●『好きにならずにいられない』43才独身デブ男でも、ステキな恋をするのだ。

2016年04月28日 | Weblog

4月18日(月)13-00 <京橋>テアトル試写室

M-052『好きにならずにいられない』" Virgin Mountain " (2014) BAC films / RVK studios / Nimbus Films アイスランド

監督・脚本・ダーグル・カウリ 主演・グンナル・ヨンソン、リムル・クリスチャンスドッティル <94分> 配給・マジックアワー

原題は<フーシ>という、この作品の主人公の名前だが、これがプロレスの選手のような巨漢なのに、とても気のやさしいシャイな43才になる中年独身男性。 

アイスランドという、北欧の大西洋上の島は、よくハリウッド映画のロケに使用されるように自然の景観がユニークで、最近では「オデッセイ」もロケした。

なにしろ北欧の映画が大好きな当方としては、ただ風景を見るだけでも見てみたい新作だが、この作品はフーシというエアポートの貨物係をしているフィギュアおたくの巨漢独身が主役。

この離れた島は北海道よりも大きいが、外の世界とは、この空港だけが唯一の接点で、そこに毎日のように飛来する貨物や観光客の往来だけが、まさに<外世界>との接点となる。

巨体のくせに気の小さいフーシは、仲間からも痛烈なイジメを受けているが、さほど気にしないシロクマのようなやさしさがチャーミングで、マツコ・デラックスに紹介したいタイプ。

映画はノルウェイやスエーデンの映画ほどシニカルな人間性の洞察力はなくて、どちらかというと、オーストラリアの現地産映画のように、どこかノーテンキで心地いい。

そのちょっと鈍感でデブな中年男の日常は、先日見た「孤独のススメ」ほど厭世的ではないが、この大らかな鈍感な感性が、いかにも土地柄なのか好感がもてるのだ。

ストーリーは、そんなダサい男でも、小柄で気弱なガールフレンドが現れて、それなりにラブシーンに展開するのは、アキ・カウリスマキの映画のようで嬉しくなる。

かなりダサいヘビメタが大好きで、ラジオにリクウェストをして、家には凄まじい兵隊フィギュアをコレクションしていて、一人で遊んでいるというのは、43才のガキなのだ。

それでも思いがけないガールフレンドの登場で、アメリカン・カントリーダンスのデイトに誘ったりして、地味ながらもラブストーリーのような展開となっていく。

タイトルの<処女峰>という意味は、おそらく自閉的な中年男でも、いつか世界に羽ばたく夢を持っているというポイントでは、多くの現実からの脱出ドラマに共通して心強い。

でも、ネタバレになるのでラストは触れないが、あのプロレスラーのような巨体では、エコノミークラスのチケットでは搭乗できないだろうなーーーーと、余計な心配。

 

■巨漢の割にはボテボテのゴロがセンター前に抜けた。 ★★★☆

●6月、ヒューマントラストシネマ有楽町でロードショー

  

●『ヒメアノール』青春ドラマ後半の突然変異には圧倒される。

2016年04月27日 | Weblog

4月18日(月)10-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-051『ヒメアノール』" Himeanole " (2016) 日活、ハピネット、ジェイストーム、ジャンゴフィルムス

監督・脚本・吉田恵輔 主演・森田 剛、 濱田 岳 <99分> 配給・日活

これもまた連載人気コミックの映画化だが、あの名作「ヒミズ」や「行け!稲中卓球部」の古谷 実による原作だというので、これは大いに気になった。

しかもあの「麦子さんと」や「純喫茶磯辺」で、非常に今の日常的な生活感のなかに、映画らしい映像感覚のひらめきが見られて印象的だった吉田監督の新作なので見たい。

たしかに映画の前半は、ごくありがちの郊外都市でのパートタイマー・ビル清掃員、濱田とムロツヨシの他愛ない会話から、近くのカフェの女店員、佐津川愛美への接近となる。

片思い告白の代行を頼まれて、渋々と濱田は彼女に話しかけるが、そのカフェの奥に、旧知の森田 剛のいることに気がついた濱田は、彼に話しかけるが、森田は冷たい。

そんなありきたりの青春ドラマの前半は、とくに何の変哲もない展開なのだが、実は彼女は気味の悪い森田の存在と、ムロへの興味はまったくなくて、むしろ濱田に好意を示すのだ。

ところが、この奇妙な三角関係が中盤にさしかかった映画の半分の、たしか50分くらいに、突然、映画のタイトルが出て、しかも横文字の洋画スタイルなのに驚いた。 

それからは、まるでオムニバス映画の別エピソードのように、奇妙だった森田の異常な素行がハードボイルドな手持ちカメラのタッチで転調して、見ている我々を翻弄しだすのだ。

このドラマの変調に驚いて、シートに坐り治すと、まったく笑顔を見せない森田の顔が豹変して悪魔顔、佐津川に近寄る男を威嚇して暴力行為が徐々にエスカレートしていく。

タイトルの「ヒメアノール」というのは、カメレオンのような体型をした爬虫類なのだが、まさにドラマのタッチまで豹変させてしまった吉田監督の映像は殺気立って行くのが凄い。

まさに甘く苦い青春片思い映画の前半から、シリアルキラーの冷酷な心境をワイルドなタッチで描くホラー映画のように、見事に脱皮していく映画術にハマってしまったのだ。

彼女のアパートの隣人が、森田の突然の暴行を受けたり、そのショックで風貌の変わってしまったムロツヨシの表情などに、この豹変スリラーの底恐ろしい現代性の異様さを感じた。

という意味では、最近見た「クリーピー」よりもクリーピーで、「グラスホッパー」よりも空恐ろしい現代人間の、殺人犯罪アレルギー感覚に身震いしてしまったのだ。

 

■痛烈なゴロがセカンドを強襲して、球は転々のファールラインのツーベース。 ★★★☆☆+

●5月28日より、TOHOシネマズ新宿他でロードショー 


●『神様メール』の誰だって、自分の寿命は知りたくない。

2016年04月25日 | Weblog

4月14日(木)13-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-050『神様メール』" The Brand New Testament " ( 2015) Terra Incognita Films / Climax Films / Orange Studio 仏

製作・監督・ジャコ・ヴァン・グロワーヌ 主演・ピリ・グロワーヌ、カトリーヌ・ドヌーブ <115分> 配給・アスミック・エース

奇想天外な発想のコメディで、かなりおかしな設定だが、そこはベルギーの映画だから、フランスやハリウッドの作るコメディとは味わいが違ってブラックな苦笑の連続。

というのも、「天国への階段」や「幽霊と未亡人」などのファンタジーな傑作を知っているのがネックになって、やはり「天国から来たチャンピオン」のような機智と品位がないと困る。

ブリュッセルの3LDKアパートにひっそりと生活している神様は、実は自分の部屋に大きなファイリング・データ情報棚を持っていて、人間達の運命をパソコンでコントロールしていたのだ。

しかし反抗的な小娘が、その父親の変人神様のスキを盗んで彼の部屋に入り、膨大なデータ資料の一部から、パソコンでランダムに表示された人々の寿命を、間違えて本人にメールしてしまった。

それぞれに自分の死亡時期を知らされた人達は、もちろん、いたずらメールだと笑っていたが、死期の近いひとは心配になって、生活方法の安全を優先するが、死期は待ってくれない。

ことの異常な重大さを知った娘は、洗濯機の配管を伝わって外出して、その間違いメールの相手を探して、どうにか危険から守ろうとするのだが、神の決めたテスタメントは変更できないのだ。

ドラマは、この寿命メールをもらった人々の混乱ぶりを描いて行く、という、かなりシニカルなコメディで、それぞれに余生の夢を叶えようと奔走する人々のおかしさを傍観していく、という狙い。

問題は、あのルビッチの名作「天国は待ってくれる」のように、ひとりの人間の人生と、その終焉を描くのなら感情移入もできるのだが、ここでは7人もの別々な人々の<余生>を描くので、ややこしい。

ま、こうしたランダムな人間たちの、それぞれの反応のおかしさを描くのが、この作品の狙いだろうが、なぜか強引にもラストで全員を集めようとしたシナリオに無理があって、笑えないのだ。

懐かしい名女優カトリーヌ・ドヌーブが、実は大きなゴリラとの夫婦生活を望んでいた、という異常なエピソードなどは、ジョークとしてはおかしいが、実際の映像ではとても笑えない。

何と、いまやテロリストの拠点として問題の多いベルギーのブリュッセルで、「マッドマックス・怒りのデスロード」を抜くヒットをしたという興行記録の方が、この作品の印象よりも恐ろしい。

監督は「トト・ザ・ヒーロー」から5年ぶりのメガホンでテンポがもたつき、ほとんどがベルギーのコメディアン達が演じているのも、馴染みが少ないのが本来の可笑しさのブレーキになっているようだ。

コミック・マガジンのような発想を、映像にするというのは、勇気は認めるが、ごくろうさま。

 

■ボテボテのショート・ゴロを野手がファンブル。 ★★★

●5月27日より、TOHOシネマズ・シャンテなどでロードショー 


●『サウスポー』終盤で炸裂する左ストレートでノックアウトだ。

2016年04月23日 | Weblog

4月14日(木)10-00 渋谷<ショウゲート試写室>

M-049『サウスポー』" Believe in Hope " (2015) The Weinstein Company / Wanda Pictures / Escape Artists / Riche Pro.

製作・監督・アントワーン・フークア 主演・ジェイク・ギレンホール、レイチェル・マクアダムス <124分・シネマスコープ>配給・ポニー・キャニオン

なぜかハリウッド映画にはボクシング映画が多くて、男優スターはこのボクサー役でスターダムに登ったり、スターとしての存在感を誇示するが、なぜか人間ドラマとしての名作も多い。

ロバート・ライアンの「罠」から、ポール・ニューマンの「傷だらけの栄光」、デ・ニーロの「レイジング・ブル」、スタローンの「ロッキー」、ラッセル・クロウの「シンデレラ・マン」などなど。

まさにハリウッド映画史の名作には、必ずといっていいほど、ボクシング映画、というか、ボクサーの映画は多く、デンゼル・ワシントンの「ザ・ハリケーン」などは大好きだった。

そうそう、クリント・イーストウッドが監督としてもアカデミー作品賞受賞の「ミリオンダラー・ベイビー」は、女性ボクサーのテーマだったが、忘れられない名作。 

一度も生のボクシング試合は見に行かないくせに、映画での場合は懲りもせずに見てしまうのは、ここに男優の、そして男としての<裸の姿>が問われるから、面白いのだろう。

ジェイク・ギレンホールは、とくに屈強な体型をしていたとは思わないが、性格俳優として非常にクセのあるキャラクターではあったが、ここでもシブトイ男前を傷だらけで披露するのだ。

世界ライトヘビー級のチャンプだったジェイクは、マジソン・スクエア・ガーデンでの闘いを制したが、祝賀パーティの席上で、暴漢の発砲した流れ弾で奥さんのレイチェルが亡くなった。

主演女優が、いきなり死んでしまうというドラマも珍しいが、この作品はそれを契機にして人格を喪失してボロボロになったジェイクが、娘の支えで渾身のリバイバルするまでのドラマ。

だから、ボクサーとしてのスポーティング・ライフを描くという通常のリベンジ映画ではなく、人生に絶望しきった男が、またカムバックしていくまでの精神力の強靭さを見つめて行く。

アントワン・フークア監督は、デンゼル・ワシントンにオスカーをもたらした「トレーニング・デイ」や、クライム大作「クロッシング」などで、独特の粘りっけを持たせた演出の異彩。

この作品でも、ドン底の精神状態の負け犬を、オスカー俳優フォレスト・ウィテカーの粘りっこいサポートで、徐々に強い人間性を蘇るえらせて行く時間を、入念に描き上げて行く。

<サウスポー>とは、よく野球などの左腕投手とことを言うが、ここではラストゲームで、その秘蔵にしていた左のアッパーカットが炸裂するシーンが感動的だった。

名作推理映画「ゾディアック」や「ナイトクローラー」など、ダークな都会ものの個性派だったジェイクが、傷だらけのボディで奮闘するファイト・シーンは壮絶な見応えがある。

 

■ファールで粘ったフルカウントから、豪快にバックスクリーン直撃弾。 ★★★★

●6月3日より、全国ロードショー 


●『シマウマ』が逆ギレしたら手がつけられない流血地獄。

2016年04月20日 | Weblog

4月12日(火)13-00 西銀座<東映本社7F試写室>

M-048『シマウマ』" SHIMAUMA " (2016) 東京東映撮影所、東映ビデオ、

監督・橋本 一 主演・竜星 涼、須賀健太 <112分> 配給・ファントム・フィルム

当然、これは動物記録映画ではないし、あの白黒の縞模様の、おとなしい<シマウマ>も出て来ない。

このところの邦画は、やたら連載コミック本からの映画化が多いが、とくに壮絶流血アクションものは、その過剰な表現に人気があるのか、稀に「新宿スワン」のような傑作もある。

だから、ほとんど普段コミック本を読んだこともない時代遅れな当方としても、その映像表現に新鮮味のあるものならば食わず嫌いは避けている・・・これも視聴覚老化防止作戦。

とくに東映のアウトロー出血ものは、任侠映画で健さんの洗礼を受けているので、嫌いじゃないし、・・問題は、どうして人間は<キレるのか・・・>の瞬間を見てみたいからなのだろう・・か。

小幡文生原作で、<絶対に読んではいけない漫画>という評判の「ヤングキング」連載中の「シマウマ」の実写映画化は、あの「探偵はBARにいる」で味のある腕を見せた橋本監督。

しかも・・・しかも脚本が、一昨年の日本映画賞を席巻した傑作「凶悪」の高橋 泉、となると、これはどうしても外せない新作なのだ。

とはいえ、コミックもののテーマには裏社会ものが多いので、通常のテレビニュース程度の情報力では、とてもこの「シマウマ」の悪徳裏社会非常識レベルにはついていけない。

タランティーノ監督の「レザボア・ドッグス」を初めて見たときも、全員悪人での殺し合いブラッド・ドラマだったが、やっと後日になって僣入捜査官が誰なのかが判った、というお人好し。

だから、この<美人局>で荒稼ぎしていた竜星青年が、<回収屋>の組織に足を踏み入れてしまうという構図が、あれれ・・という間に抜き差しのいかない底なし地獄についていくのがタイヘンだ。

その回収屋という、財政的、組織的、実に複雑な人間関係の、金銭や感情面で動きの取れなくなった個人クライアントの代行として、犯罪の裏側で流血作業を代行してしまう連中が、まず凄い。

よく、私立探偵は、あの「ウディ・アレンの重罪と軽罪」でも、依頼された殺人を、原因不明の事件にしたり、事故死とか、迷宮事件にしてしまうプロとして暗躍したが、これは血だらけ業務。

いきなりその回収屋の須賀が顔中血だらけで凄むので、このただならぬ<流血オペラ>には、外科医の手術現場に入る覚悟がいるが、その院長格が<シマウマ>なのだった。

ま、コミック本で見る血だらけの絵柄と違って、このような映画ではいかにもリアルな大出血サービスが続くので、後半になると、その地獄絵にも閉口してしまうのは、ユーモア不足のせいかなあ。

血祭り解体ショーがお好きな御仁は、どうぞ。

 

■初球、頭部への出血デッドボールで、しばらく中断。 ★★★

●5月21日より、ヒューマントラストシネマ渋谷などでロードショー 


●『バットマンVSスーパーマン・ジャスティスの誕生』ライバル対決から友情の共闘。

2016年04月19日 | Weblog

4月9日(土)11-30 二子玉川<109シネマズ・IMAXスクリーン>

M-047『バットマンVSスーパーマン*ジャスチィスの誕生』"Batman V Superman / Dawn of Justice " (2016) warner brothers / atlas entertainment   

監督・ザック・スナイダー 主演・ベン・アフレック、ヘンリー・カビル <152分・3D/アイマックス> 配給・ワーナー・ブラザース

春休みの公開スケジュールのせいか、いつものWB社内試写はなく、いきなりの夜間劇場試写のみで急遽公開となったので見れなくて、近くのアイマックスで、やっと見た。

何しろ、どうしたのか昼型<スーパーマン>と、あの夜専門の<バットマン>が対決するという、このような派手なエンターテイメントは、ぜひデカいスクリーンでゆったり見た方がいい。

やはりバットマンをベン・アフレックが演じているというのが、あのマイケル・キートンよりも嬉しいし、ちょっと悩みを抱えた表情が「ゴーン・ガール」より暗くてコミック風。

ま、もともと「ハリウッド・ランド」で、テレビ時代のスーパーマンを演じていた陽気なベンが、その宿敵ともいえるバットマンを演じているというハリウッド・ジョークがいいのだ。

<マーベル・コミック>の素材を、この30年で、ワーナー・ブランドに塗り替えたのも強引だが、その人気ブランドを対決させるという商魂が、いかにもハリウッド。

その強豪ふたりを、どう絡ませるのかが、やはり、どうしても見たくなる・・・というファンの心情で、空飛ぶふたりのアクションは3Dのアイマックスで見なくては・・・という次第。

スーパーマンはマンハッタンの新聞社員だったが、バットマンはゴッサム・シティの守護神で、さて、舞台は?・・・と思ったら、何とマンハッタンとゴッサムは、隣町なのだった。

いろいろと、ふたりの背景が描かれる中で、スーパーマンは、故郷の田舎で父親のケビン・コスナーと再会するし、あのダイアン・レインも老いた表情で熱演しているのだ。

とにかく歴史的な人気作品なのだから、過去にいろいろと確執はあって、このふたりも当初は対立のスタンスを見せるが、ラストでは巨大なエイリアンとタグで派手な空中戦となる。

ここまでやるか・・・というコミック2本分の盛大なCGアクションの近代映像テクニックをフンダンに見せて、あああスーパーマンはラストで殉職してしまう。

しかし、涙のラストシーンで、地中に埋まれて行く大きな棺桶のフタの上に積まれた土が、かすかに動いた瞬間にクレジットが流れ出す・・・というハッピーなエンディングにホッと一息。

ベン・アフレックの押し殺した表情を、マジに演出したザック・スナイダーもいいが、やはり製作主任クリストファー・ノーランのセンスの良さが作品のレベルを支えていた。

 

■豪快なセンター・オーバーの当たりが良すぎてフェンスから返球、セカンド止まり。 ★★★☆☆+

●全国公開中。 


●『エンド・オブ・キングダム』で、またもアメリカ大統領の危機を救うSP。

2016年04月17日 | Weblog

4月8日(金)13-00 渋谷<ショウゲート試写室>

M-046『エンド・オブ・キングダム』" London Has Fallen " ( 2016) Gramercy Pictures / Millennium Films / G- Base Productions. 

監督・ババク・ナジャフィ 製作主演・ジェラルド・バトラー、アーロン・エッカート <99分・シネマスコープ> 配給・ショウゲート

アメリカ大統領とホワイトハウスのテロ攻撃の危機を救った元シークレット・サービスのジェラルド・バトラーが、またも大統領の危機を救うという姉妹編。

前作の「エンド・オブ・ホワイトハウス」の大ヒットで得た収益で、またも同じような企画でジェラルドが制作主演した本作は、何とロンドンのバッキンガム宮殿が舞台だ。

ま、明らかに<二匹目のドジョウ>を堂々とテレもせずに狙っているところが、彼のタフな役者根性、というよりもプロデューサー根性で、とにかく全編で大奮闘の活躍を見せる。

普通のアクション映画ならば、ここまで出しゃばらないし、クリント・イーストウッドの「ザ・シークレット・サービス」などは実に控えめなボディガードだったが、ここでは遠慮なし。

イギリスの首相が急逝したために、各国の首脳がロンドンのセントポール寺院に集まったところに、案の上、大掛かりな爆弾テロ事件が発生して、各国の首脳も対象となって殺害された。

しかしホワイトハウスの主任ガードマンのジェラルドは、またしても大統領のアーロンをランドローバーに乗せて、寺院の崩落から脱出するが、テロリストの砲火はどこまでも迫って来る。

徹底的なバクダン・アクションの連続活劇なので、事件の合間に副大統領のモーガン・フリーマンの困惑の表情も見せるが、映画は休みない銃弾の雨を避けて、ふたりは逃げまくるのだ。

随所に大掛かりな爆破による崩壊シーンが連発するが、まさに花火大会のクライマックスのように、大袈裟な火花が炸裂して、なぜか二人の主人公はその地獄を逃げ切って行く。

たしかに、ここ最近のアクション映画の大都会の爆破崩壊シーンの凄まじい迫力は、あの「カリフォルニア・ダウン」や007から、イーサン・ハントの映像まで驚異的に進歩した。

見ていると、もうロンドンは第二次世界大戦のベルリンのような状況になるのだが、このような壊滅的なCG映像の処理は、もう見慣れているので、ここまで派手になると笑ってしまうほど。

あの大戦下のロンドン大空襲を凌駕するようなバクダン映像で、とにかく都市は壊滅するが、英国王室への破壊シーンは遠慮したようで、そこまでは描いていないが、かくして街は壊滅。

イスラム国などのテロ事件が頻発するご時世だが、ここではパキスタンや、ブルガリアなどでの撮影で製作されていて、映像処理をハリウッドで製作したという。

それでも、各国首脳がほとんど被災するなか、アメリカ大統領だけはハリソン・フォードの「エアフォース・ワン」のように見事に脱出に成功するのは、当然の展開でおめでたい。

それにしても、最近のクライブ・オーエンと、ジェラルド・バトラーの区別がつかなくなってきたのは、これも認知症かな?

 

■広角の大きなファールを打った末に、ファースト・ライナー。 ★★★

●5月28日より、新宿バルト9他でロードショー 


●『アウトバーン』の二大老名優のブチ切れクラッシュ演技がサイコーだ!!。

2016年04月15日 | Weblog

4月8日(金)10-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-045『アウトバーン』" Collide " (2015) I M Global Film Fund /  LLC All Rights Reserved UK. + Germany. 

製作・ジョエル・シルバー 監督・エラン・クリービー 主演・ニコラス・ホルト、アンソニー・ホプキンス <99分・シネマスコープ> 配給・アスミック・エース

さすがに、ひところのワーナー・ブラザーズのアクション映画の精度を上げたジョエル・シルバーのプロデュースなので、随所に映像の精度とサービスが光る徹底的娯楽アクション傑作。

原題が「コライド」というだけに、カー・クラッシュのシーンは、あの「トランス・ポーター」シリーズといい勝負なのだが、それ以上に老練な悪役の絡みが素晴らしいのだ。

たしかに<アウトバーン>というのも、ドイツの速度無制限という高速道路なのだが、やはり見どころは悪役の二大オスカー俳優の壮絶な騙し合いと、壮絶な個性なのだ。

ドイツのケルンから、大型輸送トラックで麻薬を輸送するハメになったニコラスは、どこか風貌が、あのバート・レイノルズに似ているので、オーナーのベン・キングズレーは気に入った。

だから劇中で、あの<トランザム7000>のバート・レイノルズをダシにしてからかうのだが、まずは、あのバートの飄々としたキャラクターを知らなくては面白くない。

ところが秘密輸送しているトラックに積まれた大量のドラッグは、暗黒組織の大物のアンソニー・ホプキンスの隠し資金源だったものだから、ダブル・チェイスとなってしまう。

いかにアウトバーンでの高速走行はいいとしても、並走しているヨーロッパの高級車を次々にクラッシュに巻き込んで暴走する大型トラックの蛮行は、トランスポーターを蹴散らす迫力。

というのも、多くのキャメラの高速搬送の撮影が、ヘリコプターよりも、おそらくは多くのドローンによるものを、実に巧みなカッティングで素早く編集しているので、これは凄い映像力。

それに加えて、あの二大曲者老名優が、やりたい放題に凄んで見せるので、主演のニコラスの恋模様なんてどうでもいい状況で、強烈なカーチェスとアクシデント・クラッシュが続出する。

ま、これこそがエンターテイメントの映像娯楽としての醍醐味で、爆音とラップのサウンドで、あっという間に99分を走破してしまう編集は、さすがシルバー・ブランドだ。

別に大仰なテーマもなく、ただひたすらに高速道路を激走するだけの映画だから、スピルバーグの「激突!」みたいなものだが、二大名優のイガミあいの面白さは一種のバディ感覚。

屁理屈をこねないで、アウトバーンを激走するという、ただそれだけのアクション映画だが、「マッドマックス・怒りのデスロード」ほどのお祭り騒ぎはないが、名優対決がサイコーだった。

 

■左中間のライナーがフェンスを転々する間に、疾走のスリーベース。 ★★★☆☆+

●6月10日より、TOHOシネマズ六本木などでロードショー 


●『ダーク・プレイス』は女優シャーリーズの幼女体験ミステリー。

2016年04月13日 | Weblog

4月5日(火)13-00 <六本木>アスミック・エース試写室

M-044『ダーク・プレイス』" Dark Places " (2015) Exclusive Media / Mandalay Pictures / Hugo Productions

監督・ジル・パケ=ブランネール 製作・主演・シャーリーズ・セロン <113分> 配給・ファントムフィルム

非常にユニークな視点を持っていた昨年公開ミステリー「ゴーン・ガール」の原作者ギリアン・フリンの新作を、オスカー女優のシャーリーズ・セロンが製作+主演。

というのも南アフリカで少女時代に生活したシャーリーズは、実はこれとよく似た殺人事件で、自分の母親を失っていて、このテーマは彼女自身の体験実話に近いのだ。

カンザスの貧しい家である夜に殺人事件が起こり、母親と二人の姉が殺され、当時8才の末娘と兄が生き残り、殺人容疑で兄は逮捕されて、既に離婚していた父は行方不明。

それから28年後のシャーリーズは、当時の回想録の出版や、地元の役所の支援金などでひっそりと生活していたが、<殺人クラブ>という団体からスピーチを頼まれる。

アメリカは今でも不思議な秘密団体があり、あのナチス支援の<クラックス・クー・クラン>などは実在しているらしいが、この<殺人クラブ>という、未解決研究団体もあるらしい。

ま、ブラッド・ピット主演の傑作<ファイト・クラブ>や、トム・クルーズ主演の<アイズ・ワイド・シャット>や、古くはフリッツ・ラングの「恐怖省」などの類いだろうか。

たしかに時効となって警察が捜査を断念した難事件というのは多くあり、こうして一応は決着解決したような殺人事件でも、素人探偵志望の連中が当時の事件を再度発掘するのは判らんでもない。

そのスピーチをきっかけにして、当時は少女だった彼女の記憶にも、かなり曖昧な部分もあって、それからシャーリーズは投獄中の兄に数十年ぶりに面会に行く事になって、真実は揺らぐ・・・。

という、かなり面白いミステリーで、あの不思議な「ゴーン・ガール」のテイストが、また思い起こされて来るという切り口は、経験者のシャーリーズがプロデュースしたがる気持ちは、理解できる。

そのことがきっかけで、彼女はまた独自に28年前の記憶と、事件の真相を探るために、別居離婚のあとに会っていなかった父親にも会って話を聞く事になり、意外な真相が掘り起こされて行く、という仕掛け。

ま、上質ミステリーのストーリーなので、この後の展開はネタバレになるので書かないが、さすが「マッドマックス・怒りのデスロード」で根性を見せたシャーリーズは、事件の真相究明に動き出す。

ただし、この種のフラッシュバック映画というのは、ドラマの構成の技巧が映画の鍵になるので、どうもこのような数回の回想は、見ている方にとってはアタマの整理がフォローしづらくなる。

その点では個人的にも好きなテーマなのだが、作品のミステリーものとしての解決への興味と驚きには、かなりイライラさせられて不満も多かった。惜しい作品だ。

 

■かなりいいライト・ライナーだったが、フェンスからのバウンドでシングルヒット。 ★★★☆+

●6月、TOHOシネマみゆき座などでロードショー