●4月19日(火)12-30 築地<松竹本社試写室>
M-053『トランボ*ハリウッドに最も嫌われた男』" Trumbo " (2015) Entertainment One / ShivHans Pictures / Groundswell Productions
監督・ジェイ・ローチ 主演・ブライアン・クランストン <124分> 配給・東北新社、スターチャンネル
映画の好きな人なら、あの40年代後半の<ハリウッド・テン>の、いわゆる映画界の<赤狩り>の話は、多くの過去の作品のベースになっていたのでご存知だろう。
あまり実態を主題に描く作品は少なかったが、ウディ・アレンが出演したマーティン・リットの「ザ・フロント」や、シドニー・ポラック監督の「追憶」などは、いまでも印象に残っている。
とくに脚本家のドルトン・トランボも、その摘発された10人に含まれていたことも有名で、デ・ニーロが主演した「真実の瞬間」では、公聴会での論争が詳細に描かれた。
トランボに関しても、あの「ローマの休日」のシナリオを書いてアカデミー脚本賞を偽名で受賞したことは有名で、後にやっと本人名義で受賞したことは、ここで描かれている。
要するに冷戦時代のきっかけになった、アメリカでの共産主義者の摘発が、あの時代にFBIのフーバー長官の肝いりで厳しくなり、ハリウッドでの映画発言にもトバッチリが来たのだった。
ハンフリー・ボガートやエドワード・G・ロビンソンなども、ワシントンでの公聴会に呼び出しをくらい、テレビ中継でその議場での論戦は話題になったものだ。
この作品では、その歴史的な<茶番>に巻き込まれて、わざわざ偽名まで使って映画のシナリオを書き続けたドルトン・トランボの人間的な強い柔軟さを、かなり忠実に描いている。
当然、いまでもハリウッドの映画史として、作品クリエイター達には非常に興味の深いテーマなのだから、その関心の強さで今年のアカデミー作品賞などにもノミネートされた。
ファンとして面白いのは、あまり似ていないけど、ジョン・ウェインとの対立や、カーク・ダグラスの熱心な介入、ヘッダ・ホッパーのヘレン・ミレンの陰口などが笑わせる。
しかし、ドラマとしてはダイアン・レインが久しぶりに好演している愛妻との情感や、娘への気配りなどが、実に50年代の当時のハリウッドの空気を感じさせて嬉しくなる。
B級アクション映画専門のスタジオの所長になるジョン・グッドマンが製作した、トランボのシナリオの「黒い牡牛」がアカデミー賞を受賞したときの歓びようにはジーンとくる。
とくに印象的な演技は見せないが、トランボを好演したブライアン・クランストンが、アカデミー主演男優賞にノミネートされたのも、やはりハリウッドの興味と信頼の厚さだろう。
近日公開予定の「ロイヤル・ナイト」が、あの「ローマの休日」の元ネタになったことは、さすがにこの作品では触れないが、劇場で映画を見ているトランボ夫婦の笑顔が印象的だった。
■ライトフライが意外に伸びてフェンスへの長打となりツーベース。 ★★★☆☆+
●7月、TOHOシネマズ シャンテなどでロードショー