細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●7月の試写ベスト&ワースト

2005年07月31日 | Weblog
今月は2週間アメリカに行って、メジャー・リーグの野球ばかり見ていた関係で、試写は6本しか見ていないので、ベスト・3の選出は無理。そこで、BETTER 3ということでゴメン。
カーメルで見つけたクリント・イーストウッド主演の観光PR映画は110分の力作ドキュメント・ビデオ。
下手な映画よりは遥かに面白い。しかしカーメルに行かないと、その面白さは判らない。
★BETTER 3
●「HEIGHTS」監督・クリス・テリオ 主演・グレン・クローズ ★★★☆☆☆
マンハッタンを舞台にした、母と娘のチグハグなヒューマン・ドラマとして、好きなタイプの小品。
●「南極日誌」監督・イム・ピルソン 主演・ソン・ガンホ ★★★☆☆☆
厳寒の地での感動の冒険ものかと思っていたら、人間の欲と絶望を描いたファンタジーで、なかなかの上質
●「FEVER PITCH」監督・ピーター・ファーレル 主演・ドリュー・バリモア ★★★☆☆
昨年のワールド・シリーズを舞台にした、野球コメディとして面白かったので、こちらでも公開して欲しい。
☆WORST ONE
「奥様は魔女」監督・ノーラ・エフロン 主演・ニコール・キッドマン ★★☆
せっかくのテレビ・シリーズよりも面白くならなかった訳が知りたいもの。呆れ果てた駄作。

●「南極日誌」は到達不能点を越えたか。

2005年07月27日 | Weblog
●7月27日(水)13-00 渋谷<シネカノン試写室>
M-099 「南極日誌」Antarctic Journal (2005)韓国
監督・イム・ピルソン 主演・ソン・ガンホ ★★★★
昨年10月の、盛岡みちのく国際ミステリー映画祭で一緒に飲んだチャ・スンジェさんが、この作品をプロデュースした話を聞いたので、楽しみに見た。しかしこれは、ただの冒険活劇ではなかった。
韓国の南極探検隊の6人のパーティーが、到達不能点の手前で80年前のイギリス探検隊の日誌を発見。
その直後からメンバーにアクシデントが続発して、苦しい行進が続くが、残り4人の辺りから隊長の頭脳神経がホワイトアウトになる。体力の限界もあるが、統率指導力に曖昧な症状が現れたのだ。
厳寒の南極で、男たちは混乱しだした。人間としての知的体力的限界を越えたとき、幻覚の悪魔が現れる。
スティーブン・キングの小説を思わせる恐怖が現実を幻覚の世界に引きずり込む。
あくまでポイントを絞ったイム監督のイメージは、映画としての到達可能点を守って、知的エンターテイメントとして納得できり地点に着地している。
「2001年、宇宙の旅」を思わせる展開だが、幻想的ヒロイズムの着地はいいと思う。

●ゴダールとスプレー・グラフィティー。

2005年07月25日 | Weblog
●7月25日(月)13-00 京橋<映画美学校・2試写室>
M-097 「ゴダール/アワー・ミュージック」Notre Musique (2004) 仏
監督 ジャン=リュック・ゴダール 主演・ナード・デュー ★★★☆
サラエヴォを舞台に、監督ゴダールが学生たちと話した会話を基にして、映像で描いた世界観のイメージ。
例によって、ゴダール的な映画なので、ハリウッド風のエンターテイメントとは対極にある作品。
「映画は光を通じて、人間の暗部を描くもの」というだけに、廃墟の都市の不思議な瀕死の風景が息苦しい。
面白くはないが、ゴダールの映像による文化と戦争批判は、今回はシンプルで情感がある。
自爆死は犯罪ではない、来世に対しての希望だ。というのは、どうも納得できない。
テロはテロだろう。作るのはいいが、不快感は迷惑である。

●M-098 「ボム・ザ・システム」Bomb the System (2003)米
監督・アダム・バラ・ラフ 主演・マーク・ウェバー ★★★☆☆
スプレーによるストリート・アートは犯罪である。
だからこそブロンクスやブルックリンのグラフィティー・カルチャーは、警察の目の届かないところで勝負する。
「盗んだスプレーで描かないグラフィティーは、アートじゃない。」と豪語するだけに、深夜のアート・ワークは命がけだ。
そのリアルな世界は、エミネムの「8mile」同様に魅力がある。ちょっと遅れて来た落書き映画。
自分のサインを街に残したい、という気概は、ゴダールにも似ていた。

●「マダガスカル」か、セントラル・パークか。

2005年07月22日 | Weblog
●7月22日(金)13-00 六本木・アスミックエース試写室
M-096 「マダガスカル」Madagascar (2005) ドリームワークス・米
監督・トム・マクグラス 主演・声/ベン・スティーラー ★★★☆☆
今日が最終の試写で、「ロボット」にすべきかどうか、かなり迷った。
でも「スター・ウォーズ」よりも好スタートしたアニメだから、こちらに決めた。
マンハッタン、セントラル・パーク動物園育ちの都会派ライオン、カバ、シマウマ、キリンの、仲良し4頭組が、悪ガキ・ペンギン達の脱走計画に巻き込まれて、なぜか船からマダガスカル島の野生の世界に戻されてしまう。
もともと生活の楽な動物園から、突然大自然のなかに投げ込まれた4頭は完全に面食らってしまった。
トム・ハンクスの「キャスト・アウェイ」のパクリもあって、おとなの映画ファンも笑えるように出来ている。
たしかにドリーム・ワークスのアニメは、テクニックよりもヒューマンな感情を大切にしているから、文句はない。
ただ、主演格のライオンのキャラに、さほど意外性がなく、無難な作品に落ち着いていたのが、残念だ。
もっとクレイジーな可笑しさを期待しすぎたようだ。

●「ビー・クール」はクールかな。

2005年07月21日 | Weblog
●7月21日(木)13-00 六本木・FOX試写室
M-095 「ビー・クール」Be Cool (2005) MGM 米
監督・F・ゲイリー・グレイ 主演・ジョン・トラボルタ ★★★☆☆
エルモア・レナード原作の「ゲット・ショーティ」同様にチリ・パーマー役をジョン・トラボルタが主演。
話はハリウッドのレコード業界を皮肉っていて面白い。
しかしレナードのストーリーは、かなりブラックでシニカルだから、「ジャッキー・ブラウン」のようにキャスティングと演出に「抜け」がないと只の茶番になってしまう。
ま、ダニー・デ・ヴィートはプロデューサーとして、今回のキャストにも気を使ったと思うが、不発に終わった。
レナード・ファンとしては好意的に見たつもりだが、ヴィンス・ボーンや、ザ・ロックの乗りが、どうもレナード・タッチの「はずし」が見られない。見ているとストーリーのフォローに精一杯で、愚鈍なオカシ味が出ていない。
せっかくの素材なのに残念だ。それでもエアロスミスなどのサウンドは楽しめた。
それでもエルモア・レナード・ファンには必見の作品。

●「バンドワゴン」は至福のミュージカルだ。

2005年07月20日 | Weblog
●7月19日(火)DVD鑑賞
OV-147-112 「バンドワゴン」The Bandwagon (1953) MGM
監督・ヴィンセント・ミネリ 主演・フレッド・アステア ★★★★★
MGMミュージカルのなかでも、一番DVDの発売を待っていた作品なので、至福の2時間だった。
いくつか試写の予定もあったけど、「バンドワゴン」より見たい新作はない。
つい先日、ニューヨークのブロードウェイと42番街の周辺を歩いたばかりだが、フレッド・アステアが42番街の変貌に嘆く気持ちは判らんでもない。やはりブロードウェイは変化している。でも熱気はスゴイ。
この映画を見て、セントラル・パークやブロードウェイに憧れたのは、53年という50年も前なのにラッキーだった。
だから、この映画はわたしの道標になった作品でもある。
美しい画面も素晴らしいが、アステアの踊る私立探偵のダンス・エピソードは今見てもスゴイ。
そして、Dancing in the Dark の完璧な踊り。本当にDVDが発売されて幸せだ。感謝、感謝。

●「奥さまは魔女」のマジックは効かない。

2005年07月19日 | Weblog
●7月19日(火)13-00  <築地 ソニー・ピクチャーズ試写室>
M-094 「奥さまは魔女」Bewitched (2005)米
監督・ノーラ・エフロン 主演・ニコール・キッドマン ★★
全くマジックの効かない魔法というのは、見ていても困ってしまう。
せっかく60年代の人気テレビ・シリーズをまた映画化するのが、「めぐり逢えたら」で「めぐり逢い」を、「ユー・ガット・メール」で、ルビッチの「街角・桃色の店」を上々にリメイクしたノーラ・エフロンだから、期待もしてしまう。
しかし、これは全然面白くない。マジシャンなのにファンタジー根性がまるでない。
60年代のテレビ世代を再現するのはいいが、「恋は邪魔者」ほどの入れ込みもないし、だいいちニコール・キッドマンに、あのエリザベス・モンゴメリーの大胆な茶目っ気がない。せっかく掃除用の箒を持っているのだから「オズの魔法使い」のように、大胆にマジックを披露して欲しかった。
コロンビア映画には、キム・ノヴァク主演の「媚薬」という、魔女映画の傑作があったのに、どうしちゃったのだろう。
ロレンツ=ハートの名曲「Bewitched」も聞かれないなんて、かなり手抜きでしたね、エフロンさん。

●アメリカで見た映画。

2005年07月15日 | Weblog
●7月7日(木)UA-022便機内映画
M-091 「FEVER PITCH」(2005)米
監督・ピーター・ファーレル 主演・ドリュー・バリモア ★★★☆☆
撮影中から見たかった野球映画。昨年のボストン・レッドソックスの奇跡のワールド・シリーズ優勝をバックに、レッドソックスのクレイジーなファンに恋をしてしまったドリューの一年の恋を描いている。
いつものファーレル兄弟の悪のりは控えめだが、メジャー・リーグのファンにはたまらなく嬉しいシーンが多い。
とくに、レッドソックスが逆転する劇的シーンで、恋を告白するために、ドリューが外野席からフェウェイ・パークのフィールドに入り、ベンチまで走り抜けるショットは感動ものだった。
「ブロンド・ライフ」同様に、野球ファンには嬉しい一本。ぜひ日本でも公開して欲しい。

●7月11日(月)13-30 PARIS at 60th and Fifth
M-092 「HEIGHTS」sony cllasic film (米)
監督・クリス・テリオ 主演・グレン・クローズ ★★★☆☆☆
ブロードウェイの実力派スターのグレン・クローズと、娘でカメラマンのエリザベス・バンクスを中心に、娘の結婚問題で悩む母親と、恋人のゲイ不審で悩む娘の葛藤の日々と人間模様を、マンハッタンの美しいロケで描いた佳作。
あの「私に近い6人の他人」のようなグループ・ドラマがウデイ・アレンの映画のように洗練されたタッチで展開。
「クローサー」よりも好感の持てる作品。これも日本公開して欲しいスマートな都会メロドラマだ。

●7月15日(金)VHS VIDEO
M-093 「DON'T PAVE MAIN STREET」a carmel heritage film (1994)米
監督・ジュリアン・ラトウィグ 主演・クリント・イーストウッド ★★★☆
カリフォルニア州のカーメルは、夢の理想郷である。
今回の旅でクリント・イーストウッドの所有する、カーメルのミッション・ランチを訪れた際に入手したビデオで、基本的にはカーメルの魅力紹介ドキュメンタリー作品だが、かつて市長だったクリントがほぼ113分の全編のナレーションに出演。
いろいろな住民たちにインタヴューしているなかで、あのドリス・デイも出演している。
これはクリントのファンには見逃せない一本。
カーメルまで行かないと手に入らないが、カーメルに行かないと魅力が実感できないだろう。
ひとつの町の本質を探るドキュメントとしても貴重な長編作品である。