細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●4月の試写ベスト・3 &ワースト。

2006年04月30日 | Weblog
4月の試写ベスト・3
★「インサイド・マン」Inside Man (2006)Universal 米
監督・スパイク・リー 主演・デンゼル・ワシントン ★★★★☆
上質のクライム・ムービー。銀行強盗ものだと思ったら、とんでもない結末。秀逸のシナリオ。最高のキャスト。

★「ココシリ」Kekexili (2005) 中
監督・ルー・チューアン 主演・現地チベットの俳優 ★★★☆☆☆
苛酷な高地でのロケーションと、自然保護のテーマがよくマッチした、ドキュメンタリー・タッチの荒っぽい迫力がいい。

★「幸せのポートレート」The Family Stone (2005) fox2000 米
監督・トーマス・バズーチャ 主演・サラ・ジェシカ・パーカー ★★★☆☆☆
ありがちな結婚トラブルのホームドラマだが、シナリオの微妙な「間」とズレがおかしくも哀しい。拾い物の一編。

●今月は、ワーストというほどの愚作はなくて、収穫の多い月でした。

●今月の独断と偏見の『自宅名画座』(DVD,VHS,LDなど)
☆「無分別」(58)監督・スタンリー・ドネン 主演・ケイリー・グラント VHS ★★★★
☆「ケンネル殺人事件」(33)監督・マイケル・カーティス 主演・ウィリアム・パウエル DVD ★★★★
☆「スパニッシュ・プリズナー」(97)監督・デヴィッド・マメット 主演・スティーブ・マーティン DVD ★★★☆☆☆
☆「アリバイなき男」(52)監督・フィル・カールソン 主演・ジョン・ペイン DVD ★★★☆☆
☆「山」(56)監督・エドワード・ドミトリク 主演・スペンサー・トレーシー VHS ★★★☆
☆「孤独の関係」(60)監督・マーク・ロブスン 主演・ポール・ニューマン LD ★★★☆
☆「がちょうのおやじ」(64)監督・ラルフ・ネルスン 主演・ケイリー・グラント VHS ★★★☆
☆「ブリガドーン」(55)監督・ヴィンセント・ミネリ 主演・ジーン・ケリー LD ★★★☆
☆「突然の恐怖」(52)監督・デビッド・ミラー 主演・ジョーン・クロフォード DVD ★★★☆
☆「シャドー・メイカー」(89)監督・ローランド・ジョフェ 主演・ポール・ニューマン DVD ★★★
☆「月夜の出来事」(58) 監督・メルビル・シェイブルスン 主演・ケイリー・グラント LD ★★★

今月はなぜかケイリー・グラントが多かった。
他に印象に残った作品はジョン・ウェインの「拳銃無宿」
ジェームズ・スチュワートの「出獄」
ジェームズ・キャグニーの「明日に別れの接吻を」
バート・ランカスターの「真紅の盗賊」
ジャン・ギャバンの「冬の猿」などなどのクラシックばかりでした。

●クリント・イーストウッド記者会見

2006年04月28日 | Weblog
●4月28日(金)12-00 六本木<ホテル・グランドハイアット3F.>
クリント・イーストウッド「硫黄島からの手紙」クランク・アップ記者会見

いま一番尊敬し、一番会いたいクリント・イーストウッドに、身近に会えて幸福な75分だった。
濃紺のジャケットにオフ・ホワイトのスラックス。
ゆったりと歩く姿に、むかし見たヘンリー・フォンダの姿が一瞬ダブった。
スピルバーグの制作でイーストウッドが監督する新作「父親たちの星条旗」と「硫黄島からの手紙」は、史上初の同じテーマをアメリカ側と日本側から、二本の作品として同時に制作するプロジェクト。
昨日撮影が終わったばかりの監督が、こうしてプレスとの会見をするのも史上初だという。
そんな記念すべき場所に居られたことは、わたしの映画人生でも貴重な時間だった。
「戦争には勝ち負けではなく、両方の国の悲劇がある。それを両側の視線で見た映画を作りたかった。アメリカには戦後の後遺症があり、日本は硫黄島を死守する青年たちの生涯の集結があった。どちらにも悲しい歴史だった。この二本の映画で、太平洋戦争の両面を見て戦争の実態を改めて理解してもらえれば幸せです。」
言葉を選んで静かに語るイーストウッドの真摯な姿に、会場はシーンとなった。
渡辺 謙、二宮和也、伊原剛志、加瀬亮、中村獅童、みなさんがクリント・イーストウッド監督との撮影が意義深かったと感想を語った。それを終始、満面の笑みで聞き入る監督の笑顔が、作品の自信を感じさせる。
「戦争映画の撮影なのに、そこはもの凄く平和な現場でした」という。
10月からの公開が、本当に楽しみだ。

●「幸せのポートレート」のファミリー・クライシス。

2006年04月25日 | Weblog
●4月25日(火)13-00 六本木<FOX試写室>
M-056 「幸せのポートレート」The Family Stone (2005) Fox 米
監督・トーマス・ベズーチャ 主演・クレア・デインズ ★★★★
よくあるアメリカン・ファミリーのクリスマスのトラブルを描いた佳作。
シナリオを書いて初演出をしたベズーチャの「間」の感覚がなかなか上等でおかしくも哀しい。
ストーン家はオープンな家庭だが、長男がクリスマスにガール・フレンドを連れて来たことから、微妙に空気が乱れて行く。
いわゆるアンサンブル・ドラマで、特に主演がいない。
それが作品の特徴だが、登場人物が多すぎて、少々散漫な印象になったのは惜しい。
当然、アカデミー賞を狙える素材なのに、すべてがフラットに見えた。
しかし、最近もっとも秀逸なホームドラマだ。

●「夢駆ける馬ドリーマー」の懐かしい草の匂い。

2006年04月24日 | Weblog
●4月24日(月)13-00 六本木<アスミック・エース試写室>
M-055 「夢駆ける馬ドリーマー」Dreamer (2005)Dreamworks 米
監督・ジョン・ゲイティンズ 主演・ダコタ・ファニング ★★★☆☆
馬と少女の古典的で健全なドラマ。
「緑園の天使」から「モンタナの風に吹かれて」など、いかにものどかな草の香りのするクラシックな作品だ。
実話をベースにしているが、同じように負傷馬を再起させる「シービスケット」ほど映画として感覚的な鋭さはないが、どうやら、こちらは崩壊寸前の家族が、重傷を負ったサラブレッドを看護することで、家族関係をも修復していくのが本筋になっている。つまりホームドラマなのだ。
どこかディズニーのスタイルを感じさせるドリームワークス作品。
悪くいう理由はまったくない健全な作品だ。


●「ココシリ」は激寒のトレーニング・デイだ。

2006年04月20日 | Weblog
●4月19日(水)13-00 明石町<ソニー・ピクチャーズ試写室>
M-054 「ココシリ」Kekexili:Mountain Patrol (2004) 中国
監督・ルー・チューアン 主演・デュオ・ブジエ ★★★☆☆
ココシリとは中国とチベットの国境地域の高地。
しかも富士山頂よりも千メートルも高い4,700mの厳寒強風地帯。
そこに棲息するチベットカモシカが、90年代の初めに山賊によって乱獲されたために、ボランティアの山岳パトロール隊が結成された。
しかし無償のために、食料や移動する車のガソリン代にも困りなかなか討伐は苦戦し、難航する。
その日々を、北京の記者が取材するために、パトロールに同行し、その手記がドキュメンタリー・タッチで描かれる。
あの「愛は霧のなかに」は、マウンテン・ゴリラの保護がテーマだったが、「ココシリ」は大自然の威嚇も敵になる。
その道中はまさに「トレーニング・デイ」の麻薬捜査に似ている。
リーダー格のタフな正義感が、映画を骨太な西部劇のように印象付けるが、ラストは凄惨だ。
美しい自然も、自然保護には試練となる。
実話という部分に、強力なメッセージ性が残ったが・・・・・・。

●「インサイド・マン」は二重底の隠し味エンターテイメント

2006年04月18日 | Weblog
●4月18日(火)13-00 東銀座<U.I.P.試写室>
M-053 「インサイド・マン」Inside Man (2006)universal 米
監督・スパイク・リー 主演・デンゼル・ワシントン ★★★★
マンハッタンの銀行に4人組の強盗が襲撃して、数十人の人質と立てこもる。
事件を担当したデンゼル・ワシントンは、首領格犯人と交渉にはいるが、どうも要求がおかしいのだ。
バスとジャンボ・ジェットを要求する割に、時間を延ばして事件は耐久交渉になる。
シナリオが実に面白い。
犯人グループは、人質に同じ作業衣装を着せて覆面をつけたものだから、誰が犯人グループなのかワカラナイ。
ま。これ以上はミステリーの核心になるので書けないが、相当な知能犯は、完全犯罪を確信している。
そこにジョディ・フォスターが交渉人として、入り込み別交渉をする。
だから後半、「狼たちの午後」や「ソードフィッシュ」とも違う二重構造のエンターテイメントとなるのだ。
よく出来たハリウッド・ニュー・ケイパー・フィルムは豪華なダブル・テイストだった。
最近、もっとも面白い作品だ。

●「トランスポーター・2」はまたも倍速アクション。

2006年04月17日 | Weblog
●4月17日(月)13-00 六本木<アスミック・エース試写室>
M-052 「トランスポーター・2」Transporter 2 (2005) 仏
監督・ルイ・レテリエ 主演・ジェイスン・ステイサム ★★☆☆☆
ヒット・シリーズ第二作。その分、スピードもニ倍速。
まるで、ビデオを早送りしたようなアクションは、「アリエネー・バイオレンス」の連続だ。
まるでテレビ・ゲームのように実体感のない映像が続くので、あれあれという間に映画は終わってしまった。
リュック・ベッソンの映画は、ハリウッドナイズの枠を越えて、とにかく疾走する。
これでもいいのなら、それはそれでいい。そのかわり映画の味は半減してしまう。味が薄い。
それでも、また3倍速の「パート・3」は、短編映画のようにスピード・アップするのだろうが、早いだけが能じゃない。
ジェイソン・ステイサムはジェームズ・ボンドのつもりでがんばっている。
かっこいいが、これではまったく強靭ロボットだなー。

●「バルトの楽園」は平和な異文化収容所音楽祭

2006年04月14日 | Weblog
●4月14日(金)13-00 銀座<東映試写室>
M-051 「バルトの楽園」(2006) 東映・日
監督・出目昌伸 主演・松平 健 ★★★☆
1917年。徳島県鳴門市の捕虜収容所で、ドイツ軍の捕虜たちが母国の誇るベートーベンの「第九」を演奏したという、本邦初演へのエピソードを、無難なドラマに仕上げている。
感動的なストーリーなのに、あまりにも善意の人々が、実に友好的に異国間コミニュケーションに徹しているので、とくにドラマとしての盛り上がりが感じられない。あまりにも平板な作りで、「第九」が演奏される発想も唐突だった。
これほどトラブルも、危険な問題もない捕虜収容所映画も珍しい。

●「ゴール・GOAL!」の素直なスポ根精神。

2006年04月12日 | Weblog
●4月12日(水)13-00 京橋<メディア・ボックス試写室>
M-050 「ゴール! / GOAL !」(2005)英・米
監督・ダニー・キャノン 主演・クノ・ベッカー ★★★☆☆☆
ドキュメンタリー映画と勘違いして試写をパスしていたが、友人の薦めで見たら、何と、「キル・ビル」のローレンス・ベンダーがプロデュースした本格ハリウッド・エンターテイメントじゃないか。
しかも、FIFAとレアル・マドリードを本格協賛したシリーズものの第一作。
プレミア・リーグのニューキャッスル・ユナイテッドを舞台に、メキシコからアメリカに不法入国した青年の必死のサッカーへの夢を描いた展開は、あまりにも善意のスポ根に貫かれているので、あまり悪口は言いたくない。
これが、シリーズとしてチャンピオン・リーグから、今年のFIFAワールドカップまでを、ドラマとして描くというのだから、楽しみなことだ。商魂の凄さだと言えば、それっきりだが、こういうマネージメントも映画として可能なのだから、若者の夢の為なら応援したい。素直なダニー・キャノンは手堅い演出だ。見て良かった。
次作も期待しよう。